日本のBtoBビジネスでは営業部門が足で稼ぐスタイルがメインでした。
しかし、コロナ禍で対面営業ができなくなり、状況は一変。ウィズコロナの未来を見据えて、多くの企業がBtoBマーケティングを模索しています。
本ブログでは多くの記事でBtoBマーケティングを取り上げていますが、今回はそれらの入門編として、BtoBマーケティングを知らない人にも基礎知識と「今何が起きているのか」をわかりやすく解説します。
※文末に、「この記事を読み終わったら、次に読むべき記事リスト」を掲載しているので、理解を深めたい方は順番に読んでいただくと、BtoBマーケティングを効率よく学べます。
BtoBビジネスとは?BtoCとの違い、BtoBマーケティングを劇的に変えた2つのインパクトを理解しよう
BtoBビジネスの定義、BtoCとの違い、BtoBマーケティングが重視されるようになった理由について、順に解説していきます。
BtoBビジネスとは、企業と企業の取引のこと
BtoBとは、Business to Businessの略。つまり企業対企業の取引のことです。
ほかに、企業と消費者の取引であるBtoC(Business to Consumer)があります。
BtoC企業には食品・家電などのメーカーから運輸会社・フィットネスジムなどのサービス業まで、わたしたちになじみ深い企業名が並びます。一方BtoBの企業は表に出にくいので名前はあまり知られていないことも多いです。しかし、以下のような有名企業もあります。
- 「三菱商事」「三井物産」などの商社
- 「電通」「博報堂」などの広告代理店
- 「大林組」「鹿島建設」などのゼネコン
- 素材の「住友化学」、機械全般の「三菱重工業」など
また、BtoBとBtoC両方の事業部門をもつ企業もあります。
- 「キャノン」・・・法人向けのオフィス複合機やソリューション、個人向けのカメラ、プリンター
- 「武田薬品工業」・・・医療機関向けの医薬品、個人向けの市販薬
- 「DELL」・・・法人向けのパソコン、個人向けのパソコン
表に出ないので認識されにくいですが、実はBtoB企業のほうがBtoC企業よりも数が多く、市場規模も大きいです。
BtoCとの対比でよくわかる、BtoBビジネスの特徴
以下はBtoBとBtoCの比較表です。
BtoC | BtoB | |
顧客 | 個人 | 企業 |
取引額 | 少額 | 高額 |
取引回数 | 多い | 少ない |
顧客の数 | 多い(幅広い) | 少ない(限定的) |
購入の理由 | 利便性、満足度など | 企業の利益 |
購入の検討期間 | 短い | 長い |
先ほど挙げたBtoB企業を思い浮かべるとわかるように、BtoB企業はBtoCに比べて顧客数(企業数)が少なく、その分1顧客あたりの取引額が大きいのが特徴です。
広く一般の人に商品やサービスを提供するBtoC企業はTVや雑誌、ネットに広告を出しますが、限られた企業を顧客とするBtoB企業は広告宣伝をほとんど行いません。そのかわりに営業部門の担当者がターゲット企業に売り込みにいくアナログなスタイルを長く続けてきました。
このため、「BtoBマーケティング」はあまり必要とされず、BtoB企業にマーケティング部門がないことも一般的でした。
しかしそれは、インターネットが普及する前までのことです。
※BtoC、BtoBの違いについてはこちらの記事でも解説しています。
2つのインパクトにより、「BtoBマーケティング」が必須に
2010年頃までにインターネットが社会インフラとして浸透しました。そこでBtoBビジネスに大きな変化が起こります。企業の購買担当者は自社にとって必要な商材についての情報をネットで自ら収集することができるようになりました。
以下は、企業が商材を検討するときの情報源についての調査結果です。
出展:トライベック・ブランド戦略研究所「BtoBサイト調査 2021」
最も多くの人が情報源としているのが企業のWebサイト、4番目にもネット上の業界サイトや専門サイトが入っています。企業自身の情報発信だけでなく、第三者の意見も参考にしていることがわかります。購買の主導権は、多様な情報を入手できるようになった顧客の側へとシフトしました。
とはいうものの、「営業員・技術員の説明」が2番目にランクインして、リアルな商談の機会も重視されています。
ところが、2020年以降のコロナ禍で、営業担当者とじかに会って商談をする機会が減りました。
今や、営業担当者がはじめて顧客に会う前の段階で、ネットを通じて効果的に見込み客とのコミュニケーションをはかるマーケティングが不可欠となっています。
しかし、BtoB企業にとって「インターネット普及による顧客行動の変化と、それを加速させるコロナ禍」という変化の波はあまりに大きく、対応しきれていない企業が多いのが現状です。
この間、BtoCビジネスはどうだったでしょうか。インターネットの普及により一般消費者の購買行動にも変化がありましたが、以前から「店頭で見て」「広告宣伝で知って」購入するスタイルで、企業とのリアルな接点はなかったので、BtoBほどの激変はなかったといえます。
以上のように、今、BtoB企業はマーケティングの必要性に迫られています。次に、BtoBマーケティングをどう進めていけばいいのか? について考えます。
BtoBマーケティングを成功に導く、効果的な進め方とは
BtoBマーケティングには勝機がありますが難しさもあり、マーケティング部門を立ち上げたものの成功しなかった経験のある企業も少なくありません。BtoBマーケティングの効果的な進め方について考えていきます。
BtoB企業マーケターの悩みは「ノウハウの不足」「営業部門との連携」
日本のBtoB企業は「営業部門の担当者が見込み客にコンタクトをとり、売り込む」スタイルをとってきました。つまりこちらからアクションをおこす「アウトバウンドセールス」です。市場調査や広告宣伝もほとんど行ってこなかったBtoB企業には、マーケティングを知る人材やノウハウが不足しているケースもあります。
また、BtoB企業では稼ぐしくみを一手に担ってきた営業部門の力が強く、新規にマーケティング部門やマーケティング担当者を設置しても営業部門とうまく連携が取れずきちんと施策に取り組むことが難しい傾向があります。しかし、社内で最も顧客を理解しているのは営業担当者であり、営業部門の経験値をマーケティング部門に取り入れなければ、マーケティングは成功しません。「マーケティング部門と営業部門との連携が課題」という例は多いようです。
コロナ禍以前からBtoB企業においても「これからはマーケティングが必要」と認識されるようになっていました。それでもマーケティング部門が定着してこなかったのには、こうした背景があります。
しかし今や選択肢はほかになく、BtoBマーケティングの強化が急務です。
※参考記事
BtoBに必須の「インバウンドマーケティング」。その基本から最新事情までを解説 !
BtoB企業のマーケティング部門を軌道にのせるための、5つのポイント
BtoB企業がマーケティング部門の強化をはかるとき、重要なポイントは以下です。
管理職がマーケティングチームに参加して、全社を巻き込める体制をつくる
企業のトップまたはそれに近い立場の人がマーケティングチームに参加することが有効です。マーケティングの知識がある管理職ならベストですが、管理職と専門知識のある担当者のチームでも機能します。マーケティングの実務では他部門に協力を依頼することが多く、新規の業務も多数発生するので、スピーディーに組織を動かし、全社を巻き込める体制が不可欠です。
マーケティング施策の事前準備として「データの整備」が必須
マーケティングで成果を上げるためには、ダブリやモレのない整備された見込み客、顧客のデータが必要です。BtoBの顧客リストには企業名と複数の担当者名があり、企業表記も「株式会社」「㈱」などばらつきがあります。これらを適切に名寄せし、SFAやCRMなどのデータを一元化する「データクレンジング」が必須です。
短期的な施策で早めに成果を出し、社内で共有する
マーケティングの戦略を立てて各種の施策を実施し、成果を出すまでに一定の時間がかかります。この間他部門から「何をやっているのかよくわからない」と思われないよう、最初は「リスティング広告」「Webサイトの改修」といった短期で成果が出やすい施策をいくつか実施して、「見込み客の獲得が2倍」「Webの訪問者数が3倍」といった数字で成果を示すことが有効です。
※BtoBリード獲得のために不可欠なランディングページの最適化。LPの改善をどう進める?
営業部門とマーケティング部門で共同作業する
営業部門とマーケティング部門で共同作業をすることが、今後の目標共有と行動の連携に役立ちます。たとえば「ペルソナの設定」なら、営業担当者がよく知る顧客像をもとに、ペルソナに落とし込みます。リモート時代に必要な「インサイドセールス部門の立ち上げ」もおすすめです。
※BtoBマーケティングにおけるペルソナの作り方と活用方法を解説。シャノンが実践する一工夫もご紹介!
※「インサイドセールス」の役割はどこまで広がる?フィールドセールスやマーケティング部門との分業のあるべき姿とは
マーケティング支援会社を活用する
マーケティングの経験が少なかったりリソースが少なかったりする企業は、最新のBtoBマーケティングの経験豊かな専門家の知恵をかりるのが近道です。
※シャノンのトータルサポート体制により構築から定着化まで、お客様の成功を支援
中長期で目指すべき、BtoBマーケティングの4つの展開
マーケティング部門を軌道に乗せることができたら、中長期的には以下のような展開を目指します。
どれも今後BtoB企業にとって不可欠といえますが、手間と時間がかかる作業も多いので着実に進めていくべき施策です。
定期的にウェビナーやオンライン商談会を開催できる体制をつくる
ウェビナーを実施するためには「配信するコンテンツ」「配信する設備」「集客とフォローの体制」を準備します。定期的にオンラインイベントを開催して集客できる体制づくりは、アフターコロナの今後も必要と見込まれます。
集客できるオウンドメディアを作る
成果が出るまで時間がかかりますが、自社の商材による課題解決事例をメインのコンテンツとするブログ、見込み客にとって有用なホワイトペーパーなどを整備したオウンドメディアが不可欠です。集客力アップのためにSEOも実施します。
営業プロセスの分業とオンライン化
インサイドセールス、カスタマーサクセスなどの分業を進め、オンライン化が可能な業務については多様なコミュニケーションが図れるよう体制を整備します。
ABMの強化
ABM(Account Based Marketing)とは、BtoB企業が顧客である企業(Account)との適切なコミュニケーションをはかり、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を最大化する考え方です。ABMを実施するにあたってはMAをメインに、SFAやCRMも連携するデジタルツール活用が欠かせません。
※参考資料・記事
BtoBマーケティングにはMAが有効。その理由と導入事例
最後に、BtoBマーケティングで成果を上げるためにMAが有効な理由と、実際の導入事例をご紹介します。
BtoBマーケティングにMAが向いている理由
前述したように、BtoBビジネスにおいて企業から顧客へと主導権のシフトが起きています。営業担当者と顧客が出会う前の検討期間に、見込み客とコミュニケーションをとることができた企業は、競合に先んじることができます。
この期間に実施可能なBtoBマーケティングの施策として、たとえば以下があります。
- メルマガ
- ウェビナー(またはセミナー)開催
- ホワイトペーパー
- 顧客の行動履歴のフォロー
- 無料トライアルなどのキャンペーン
これらの施策を適切に実施し、得られた成果を一元管理。購入意欲が高まってきた見込み客を見つけ出した場合は商談可能な「ホットリード」としてピックアップ。MAは、こうした一連の作業を効率よく行い、BtoBマーケティングを支援します。BtoBマーケティングで重要な、見込み客との「1to1マーケティング」をMAが容易にします。
シャノンのMAを導入したBtoB企業の成功事例
最後に、シャノンのMAを活用されたBtoB企業「ベンカン」の導入事例をご紹介します。
株式会社ベンカンは、配管を製造販売する老舗のものづくり企業です。2016年にシャノンを導入いただいたものの運用しきれずに解約したご経験があり、2020年コロナ禍のタイミングで再導入しました。過去の経験を生かし、ベテラン営業担当者を含む実効性のあるマーケティングチームを作って取り組んだことにより、運用が進み成果が表れるまでになりました。成果が目に見えたことにより業務に弾みがつき、2度目の導入から数か月で「スコアリング」にチャレンジするまでになっています。
「シャノン・マーケティング・プラットフォーム(SMP)」 は、BtoBマーケティングを効率よく実施できるツールです。
ご紹介したベンカンのようなものづくり企業ではデジタルマーケティングに加え、展示会・体験会といった従来型のリアルイベントが今後も欠かせません。SMPはこうしたオフラインの接点もMAのなかに取り込み、一元管理します。
※事例についてくわしくはこちら
必要だったのはマーケティングの社内浸透。老舗メーカー、ベンカンが2 度目のシャノン導入
この記事を読んだあと順番に読むとBtoBマーケティングがよくわかる、おすすめの記事
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まとめ
本稿のポイントは以下の3点です。
1. BtoBビジネスではBtoCと違い、マーケティングが定着してきませんでした。
2. インターネットの普及とコロナ禍という2つのインパクトにより、BtoBマーケティングが急務となりました。
3. 人材不足や営業部門との連携の難しさがBtoBマーケティングの課題です。
4. MAがBtoBマーケティングに有効です。BtoBの各施策を効率よく実施し、成果を一元管理することができます。