株式会社ベンカン

必要だったのはマーケティングの社内浸透。
老舗メーカー、ベンカンが2度目のシャノン導入

配管メーカーとして70年以上の歴史を持つ株式会社ベンカン。

これまで対面の顧客営業を重視してきた同社が、現在は新たな市場と見込み顧客の開拓を目指しマーケティングを推進。

2020年11月からシャノンを導入し、Webやメールなどのデジタルの施策を進めている。1度は導入を断念した同社が、改めて本格的な導入に踏み切った理由は何か。

Point

  • 運用がまわらず一度はシャノンを解約したものの、社内にマーケティングを浸透させる取り組みは継続
  • 2020年、コロナ禍で対面営業が難しくなったタイミングでシャノンを再導入
  • メルマガの効果を確認しながら、Webサイトや資料ダウンロードのコンテンツを強化
  • 導入から数か月で設計・運用が難しいスコアリングにもチャレンジ

「人に会う」営業の基本から、BtoBマーケティングへ

取締役 執行本部 本部長 兼 最高執行責任者(COO) 我妻武彦氏

建築設備のライフラインともいえる配管。株式会社ベンカンは、その配管継手の製造・販売を中心に事業展開をおこなう企業だ。

1947年に前身の日本弁管工業株式会社から創業し、70年以上の歴史を持つ。特に「メカニカルジョイント」の分野ではグローバルに知られる。

同社はシャノンを導入し、マーケティングに力を入れだした。

「東南アジアでベンカンといえば溶接やジョイントの会社として知られています。メカニカルジョイントは40年来の製品ですがまだまだ成長しており、むしろこれからの製品ともいえます」 と語るのは取締役 最高執行責任者(COO)の我妻武彦さん。

ベンカンのマーケティング業務を立ち上げた我妻さんは仙台で建築業界の営業から始め、新規企業の開拓に務めてきた。 営業畑から経営企画、管理部長も歴任。

「お客様を1件ずつ訪問するという泥臭い営業スタイルを30年以上続けてきました」という。

ベンカンの本社は群馬県にあるが、営業部隊の執行本部は東京・大森。その2つの拠点をベースに全国を歩いた。

「人に会う」という基本を重視しながらも、我妻さんは一方で、従来型の営業の方法だけでは売上は伸びないのではないかという危機感から、マーケティングの必要性を感じ始めていた。

我妻さんが関心を持った当初は、日本ではマーケティングの情報はBtoCが中心だったが、次第にBtoBの情報も得られるようになり、関連する書籍を読み、セミナーを受講したという。

そうした中で、デジタルを用いた施策や「マーケティングオートメーション(MA)」などのツールの活用、「デマンドジェネレーション」などの考え方に刺激を受けた。

当初は賛同者はあまり多くなかったものの、社内でマーケティングの必要性を説得し、シャノンのMAツール「SHANON MARKETING PLATFORM」(SMP)の導入を決意したのが2016年。

しかし、この時期の導入は1年間にとどまった。その理由は何だったのだろうか?

「作業優先で製品を導入したことが問題でしたね」と我妻さんはいう。 シャノンは製品としては使いやすかったが、社内での運用が根づかなかった。

「必要なのはオペレーターではなく、マーケターだったのです」と我妻さん。 2017年には、「このまま運用が進まないまま利用を続けるよりも、いったんMAはやめよう」とSMPの運用を中止する。

現在、シャノンを活用しマーケティングに取り組んでいる営業部 開発営業課 マーケティンググループの佐藤康之氏も、この時は営業の立場。

「正直なところ、横から見ていても何をしているかあまり見えてこなかったですね」という。

当時は、営業の中で見込み顧客のリードを育てるという考え方はあまり浸透しておらず、カタログを送付して電話をかけるということが新規営業の基本。 「ツールを入れても意味がないのでは?」という受け止められ方だった。

我妻さん自身も営業の経験から、こうした営業現場の思いは理解できたという。

二度目のシャノンの導入、その決め手は?

営業部 開発営業課 マーケティンググループ グループ長 佐藤康之氏

MA導入を一度は断念したものの、我妻さんはマーケティングの講師を招いて勉強会を実施するなど、社内へマーケティングを普及させる取り組みを継続していた。

再度シャノンを導入することになったのは、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけだ。

もとより市場の拡大が見込まれながらも営業の人員が採用できないという状況は続いていたが、コロナをきっかけに従来のような営業が出来なくなり、営業部長から我妻さんに「MAを入れてはどうか」という打診があった。

2020年の秋、改めて検討がおこなわれ、この時も、SMPの導入が決まった。 理由は他のツールと比較した「使いやすさ」だった。

そして佐藤康之さんと、もう1名の2名がマーケティングの実行メンバーとなり、Webサイト、メルマガ、資料ダウンロードなどの施策が強化された。

特にメールについてはそれまでは月1回のメルマガを月2本に増やした。

「それまでは漠然とメールを打つことで、Webアクセスが増えることに満足していましたが、SMPのおかげで個々のメールの具体的な効果を確認できるようになり、業務が面白くなりました」と佐藤さん。

ベンカンのWebのコンテンツも強化し、コラム記事も増やした。 中でも我妻さん自身が寄稿するコラムは「マーケティング」「マネジメント」「環境」に関する独特の視点で書かれており、評判がよいという。

他にも取引先、パートナー企業からの投稿記事も好評だ。抽象的な記事はあまり読まれず、製品情報だけではなく役に立つ記事が読まれることなどが実感できた。 訪問者のトラッキングによる各ページの閲覧状況を知ることも参考になるという。

導入から数か月で設計・運用が難しい「スコアリング」にもチャレンジ

SMPの活用により、営業チームへのリードの提供も徐々に進んできている。

現在は既存顧客や見込み顧客の情報もより精緻化され、「MAの機能のなかでも設計や運用が難しい」と言われるスコアリングも導入から数か月で行うようになった。

佐藤さん自身が、営業チームにいた経験も大きく、営業チームのメンバー、部長や各営業所長とも意見交換がしやすい。

そして、SMPでのスコアリングも最近は重視しており、「リードを渡す時に、スコアの高いお客様は、なるべくフォローしてほしい」と営業に一声添えるという。

現在は、佐藤さんともう1名の2名体制でシャノンを活用している。

最初の導入段階ではビデオによるトレーニングなどを受講し、その後はシャノンのカスタマーサクセスチームのサポートも役に立っているという。

「動画だけではわからないことも多かったので、営業の人に電話で聞くこともありましたが、親切に教えていただきました」という佐藤さん。

「電化製品を買ってもマニュアルを見ないタイプ」だと我妻さんは苦笑する。

リードを渡すだけではもったいない。今後は営業情報との連携も

今後はリードを営業に渡すだけではなく、SMPとサイボウズ社のkintoneによる連携などで、営業からの情報もフィードバックして活用していきたいと佐藤さんはいう。

現在リード数は数万件に達しているが「これからもどんどん増やしたい」と意気込む。

我妻さんは、「ある日、息子の部屋でマーケティングの本を見つけたんです。彼は大学で物理系を専攻していたのですが、家にある私の本を見てマーケティングに興味を持ったそうです。就職後は会社でも『マーケティングをやりたい』と希望を出していて、ようやくマーケティング部門で働くことが決まりました」と嬉しそうに目を細める。

我妻さんの、長年の努力は別の形でも実を結びつつあるようだ。

マーケティング活動が進展したベンカン。コロナ禍という不測の事態は、同社の変革のきっかけになったとも言える。