リードナーチャリング(Lead Nurturing)とは、見込み客を顧客へと引き上げることです。 英語の「nurture」は、育成という意味ですが、シャノンでは後ほどご紹介する「購買ピラミッド」の考えから「顧客の引き上げ」と表現しています。
特にBtoBにおいて、リードナーチャリングは有効です。なぜなら、 企業が何らかの商材購入を決定するまでには 半年~1年程度かかることが多く、この期間にどのように見込み客にアプローチするかが重要だからです。 そして、様々な施策をタイミングを逃さず効果的に実施するためには、MAツールを使いこなすことが不可欠です。
今回は、BtoBのリードナーチャリングにはMAツールが有効である理由、リードナーチャリングで成果を上げるための具体的なステップについてご紹介します。
- リードナーチャリングとは? BtoBのリードナーチャリングでMAツールがなぜ有効か
- BtoBマーケティングで成果を上げるための、リードナーチャリング実践5ステップ
- リードナーチャリングの担当者は何をすべき? 注意点は何か
- まとめ
- 関連リンク
リードナーチャリングとは? BtoBのリードナーチャリングでMAツールがなぜ有効か
リードナーチャリングとは何でしょうか。 リードナーチャリングと似た言葉で「リードジェネレーション」がありますが、まずはその違いについて触れていきます。 その後、BtoBのリードナーチャリングにおいてMAツールが有効な5つの理由について挙げていきます。
リードナーチャリングとリードジェネレーションとの違い
リードナーチャリングを理解するために、よく似た言葉であるリードジェネレーションとの違いを整理します。
リードジェネレーションとは、「見込み客の獲得」のことです。見込み客のことをリードといいます。 リードジェネレーションの段階では、ウェブサイトへのアクセス、セミナー訪問、自社サイトからの資料ダウンロードなどのチャネルにより幅広くリードを獲得します。
リードの中には、すぐ具体的に購入を検討したいという「ホットリード」もいますが 、多くは「コールドリード」です。
Marketing Sherpaの調査 によると、獲得した顧客のうち すぐ購入にいたるのは1割程度であるのに対して、約7割の顧客は長期フォローが必要とされています。
それでは、長期フォローを必要とするのはどのような顧客でしょうか 。
具体的には、個人的な興味で問い合わせた人、比較検討の材料として情報収集している人などが当てはまります。そのなかに、「来期の予算で購入を検討したい」あるいは、「自社の課題を解決する商品・サービスが何なのかをよく見極めてから」といった意向の「未来のホットリード」が存在します。
時間をかけて適切なフォローをすることにより、コールドリードをホットリードに引き上げていくことが可能です。
リードナーチャリングとは、リードジェネレーションで獲得したコールドリードをホットリードに引き上げるために、様々な施策を継続的に実施していくことです。
リードナーチャリングは、具体的には以下のような手法を組み合わせて進めます。
- ウェブへのアクセス履歴の収集
- ホワイトペーパーなどのコンテンツの提供
- メール配信
- Web広告
- セミナー/ウェビナーの開催
- 電話、DM
重要なことは、見込み客がメールや広告に対してどんな反応をするかということです。 メールマガジンの場合なら、「開封しなかった」「開封した」「開封して文中のリンクをクリックした」などの個々のリアクションの履歴を蓄積し、その結果をもとに次のアクションを決めていきます。
こうした作業を積み重ね、見込み客をホットリードへと引き上げていくために は、MAツールが有効です。
MAツールにより、見込み客(リード)のホームページへのアクセス、メールの開封、展示会来訪などの行動履歴を一元管理し 、あらかじめ設定したシナリオに沿って、それぞれのリードに最適な次のアプローチを行うまでを自動化できます。
なぜ、BtoBのリードナーチャリングにMAツールが有効なのか
現代のBtoBマーケティングおいて、リードナーチャリングに MAツールが有効 といえる理由は以下の通りです。
- 過不足のない、顧客目線のアプローチができる
従来型の営業では電話をかけて、まだ検討を始めていない見込み客 から「今は忙しい」と断られ、その後のアプローチが難しくなるケースがありました 。
こうした状況はアナログ な手法に限ったことではなく、見込み客にとって興味のない内容のメールマガジンが頻繁に送信されることも同様にマイナス効果となります 。
これらは、「顧客目線」が足りないことによる失敗例といえます。情報過多の現代にあって、企業の担当者である見込み客は「今、必要とする」情報だけを受け取りたいと考えています。
MAツールは、見込み客それぞれの興味・関心の段階に合わせて異なるメールを送るしくみを自動化できるので、過不足なく有効な情報を届けるために役立ちます。
- タイミングを逃さずホットリードをフォローできる
BtoBにおいて、見込み客は競合会社の商材も同時に比較検討していることが多いので、具体的な検討段階に入ったリードに対して他社に先駆けてアプローチすること がとても重要です。
たとえば、資料請求や料金表の閲覧などのアクションはホットリードのサインなので、速やかにフォロー する必要があります。
MAツールはこうしたアクションに対してすぐ通知を送ることができるので、タイミングを逃さずにセールス部門に情報を渡すことができます。
- 長期にわたる安定的・継続的なフォローができる
冒頭で述べたように、BtoBのリードが実際の顧客となるまでには通常半年~1年、商材によってはそれ以上の期間を要します。
また、一度ウェブサイトを訪れただけのコールドリードが1年以上後に復活し、ホットリードとなることもあります。
BtoBでは長期にわたってリードナーチャリングを継続していくことになります。
この間、一定のシナリオのもとで様々な施策を行い、結果をデータとして蓄積していく作業をもれなく着実に行うためにはMAツールが適しています 。
- ノウハウの属人化を防げる
BtoBマーケティングは長期にわたるため、リードナーチャリングの担当者が途中で交替する可能性もあります。MAツールならそんなときもノウハウが属人化することなく、過去に蓄積された業務のデータをスムーズに引き継ぐことができます 。
- 多様なワークスタイルに適していて、将来のDXにもつながる
2020年のコロナ禍で変革をせまられたワークスタイルは、2021年以降も定着していく見込みです。
BtoBにおいて自社担当者・顧客どちらもリモートワークといったシーンが珍しくない現在の状況は、今後のDX(デジタルトランスフォーメーション)を早めることになるでしょう。
DXとは、企業全般をデジタルにより変革することです。
将来のDXに備えるためにも、現在進行形の働き方改革に対応するためにも、MAツールが有効です。
BtoBマーケティングで成果を上げるための、リードナーチャリング実践5ステップ
リードナーチャリングの具体的な5つのステップを順にご紹介します。成果を上げるためには各ステップにおいてどんな点に留意するべきかについても述べていきます。
【STEP1】 リードナーチャリングの第一歩は、適切な「名寄せ」によるリードの集約と管理
見込み客を有望なホットリードに引き上げていくため、まず第一に必要なのは「リードの集約と管理」です。
リードジェネレーションで獲得したリードは、様々なチャネルから集められています。
たとえば、自社ホームページからの資料ダウンロード、展示会で交換した名刺、ウェビナーの参加者などです。
ある企業の担当者が資料ダウンロードをしてかつ、展示会にも参加していたとしたら、かなりのホットリードといえます。
しかし、会社名が「株式会社××」と「××」のように異なるために別々のリードとして管理されていたとしたら、このホットリードを見つけることができません。
BtoBでは会社名、役職名、住所など多くのデータを管理するので、このようなデータを適切に「名寄せ」する、リードの集約がきわめて重要です。
シャノンのMAツール では、たとえば以下のようなデータ表記の違いを整理するルールを自動化することができます。
- 半角と全角を統一
- 大文字と小文字を統一
- 法人格と会社名を分割
- 法人格の略称を統一
また、「人」と「企業(会社名)」を紐づけて管理するルールを設定することもできます。
このようにして、精度の高いリードデータを得ることを、データのクレンジングといいます。 適切なデータクレンジングを経た精度の高いリードデータを用意することが、各種のマーケティング施策で効果を上げるための第一歩です。
【STEP2】 企業や商材に合わせた「購買ピラミッド」を設計する
リードナーチャリングでは、自社の商材のことを最初に認知したリードが、その後どのような過程を経て商談までいたるかというシナリオを用意します。
以下の図は、顧客の「認知」「興味・関心」「比較・検討」「商談」といったフェーズを示した「購買ピラミッド」 、シャノンがシナリオ設計のために提案しているツールです。 自社の商材を認知してくれたリードのうち、何割かはさらに興味と関心を深め、やがて比較・検討の段階を経て具体的な商談へと進んでいきます。
購買ピラミッドの詳細は、企業の業種や売ろうとしている商材によって異なるので、今までの顧客実績をもとに、自社に合ったものを設計する 必要があります。
たとえば、 「ウェビナーに参加した後に具体的な検討に入るリードが多い」 「最初に商品のことを知ってから、約半年後に商談を開始し購入に至るリードが多い」 「資料をダウンロードしても、その後半年以内に再度のアクセスがないリードは見込みが薄い」 など、自社の顧客に共通するいくつかの行動パターンをピックアップして、購買ピラミッドのシナリオに落とし込みます。
この設計図に基づき、各リードがどのフェーズにあるかを明確にすることで「いつ、何をするか」が決まります。
【STEP3】 マーケターが最も悩む「スコアリング」は、運用しながらブラッシュアップ
リードナーチャリングでは見込み客の状況を客観的に評価するために、顧客行動を数値化する「スコアリング」を実施します。
以下はスコア設定の具体例です。
- 自社に対する認知の程度によって5点または10点
- 1か月以内にWebにアクセスがあれば引き続き興味を持っているということで10点
- リードがマーケティング部門に所属していれば10点
のように設定します。
実際のスコアリングでは、各項目を何点にするのかが悩む所です。 各項目とも10点でいいのか、資料ダウンロードがあれば15点にしたほうがいいのか・・・
この点については、リードナーチャリングを開始する時点では明確な基準は存在しません。どんな要素がホットリードの決め手となるかは、個々の企業・商材によって異なるからです。
そんな初期段階においては、スコアは「1アクションにつき各10点」のように、シンプルに設定することがおすすめです。なぜなら、どのような項目が有効か分析しやすく、後から設定を見直しやすいからです 。
スコアリングで高得点となったリードは「商談可能」なホットリードと判定して、営業部門に引き渡すことになります。このホットリードのなかでも成約、保留、失注と結果が表れてくることになるでしょう。そうした結果をもとに、スコアリングを修正することもあります。
【STEP4】 顧客ごとに異なる1to1マーケティングの実践
リードナーチャリングでは各リードが自社商材に対してどの程度に関心を持っているかを明らかにしていきます。そのデータを基に、各リードの現在の関心の度合いに照準を合わせた情報を届けます。 これが、1to1マーケティングです。
たとえば、強い関心を示しているリードには「同業種の導入事例」「オンラインデモの案内」のような、次の段階へと進めるためのメールを配信します。
一方、配信済メールの開封がなかったリードに対しては、別の商材を案内するメールを送信したり、定期的なメールマガジンの配信をしたりしながら興味・関心がどこにあるかを探っていきます。
1to1マーケティングにより、各リードに対して最も必要としている情報をタイミングよく届け、かつ、不要な情報が届くことによってもたらされるマイナスの効果を減らすことができます。 MAツールを使用すれば、顧客のフェーズごとに異なるメールを用意し、異なるタイミングで配信する作業を自動化できます。
【STEP5】 STEP1~4を実践し、PDCAを回す
リードナーチャリングの精度を高め、成果を上げていくためには、運用しながら定期的に効果測定をすることが大切です。PDCAを回し、当初のシナリオ通りに成果が出ていない部分を突き止めて、「スコア」や「シナリオ」を修正し、修正した設計から結果を得たら前回との比較でさらに検証を重ねます。
こうした過程を経て、自社オリジナルのリードナーチャリングの制度設計ができあがっていきます。BtoBでは購入までの期間が長いので、こうした作業にもかなり時間がかかりますが、じっくり取り組む姿勢が必要です。
設定したリードナーチャリング施策を一巡させ、検証する過程には、営業部門にホットリードを引き渡す、リード管理の最終段階である「リードクオリフィケーション」も大きく関わってきます。 リードクオリフィケーションについては、「【成果に結びつけるマーケティング】リードクオリフィケーションとは?」 で詳しくご紹介します。
また、リードナーチャリングの施策には今回具体例を挙げなかったものも多数あります。ウェビナーなどのイベント、広告への反応など、多くの施策に対するリードのリアクションを統合管理することを「キャンペーンマネジメント」といいます。キャンペーンマネジメントについても別の記事で解説します。
リードマネジメント関連記事
www.shanon.co.jp
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リードナーチャリングの担当者は何をすべき? 注意点は何か
リードナーチャリングの具体的な5つのステップについて、重要なポイントを中心に解説してきました。
MAツールを使用することでリードナーチャリングの作業を効率よく進めることができますが、マーケターがすべきことはたくさんあります。
最後に、リードナーチャリングの担当者が何をするのか、そこでの注意点を挙げておきます。
「KPI」などの目標設定と共有は、マーケターの最重要課題
KPIとは、「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」などと訳されます。KPIは、業務の成果を定量的に測定するための重要な指標で、中長期的な時間軸で達成度を測ります。
リードナーチャリングでは、例えば以下のようなKPIを設定します。
- 半年以内に「興味・関心」から、「比較・検討」フェーズへと進むリードが15%
- ウェビナーの案内メール/ウェビナー開催レポートのURLをクリックするリードが10%
- メールマガジンの開封率が15%
- 半年以内にホットリード(50点以上のスコア)となるリードが5%
リードナーチャリングの担当者は、いくつかのKPIを設定し、それを達成するためにどうするかという観点から、シナリオや施策を構築していきます。
もうひとつ、目標設定で重要なことは、他部門との連携です。
リードナーチャリングにおけるKPIは、設定するのはマーケティング部門だったとしても、営業部門や上長など関連するすべての部門やメンバーに共有されることが重要です。BtoBのリードナーチャリングは成果が出るまでに時間がかかるということにも、具体的な数値を示しながら理解を得ておく必要があるでしょう。
目標が共有されていれば、進捗も他部門にわかりやすくなり、情報提供などの協力も得られます。
参考資料
smp.shanon.co.jp
最初のシナリオやスコアリングはシンプルに設定する
MAツールを導入すると、非常に多くの機能があり指標などをカスタマイズすることも可能なので、たくさんのことを試してみたくなるかもしれません。
しかし、最初のシナリオはシンプルに設定する必要があります。
具体的には、「最も典型的な顧客行動のパターン」を1つか2つ程度に絞りこんで設定しましょう。
スコアリングについても同様です。重要と思われるアクションに対しては配点に傾斜をつけたほうがいいのではないかと思ってしまいますが、当初は「各10点」のように一律に設定します。
シナリオやスコアはできるだけシンプルなものにすることで、結果の検証がしやすくなります。
BtoBのリードナーチャリングは長期にわたります。定期的なメールマガジンの配信以外に、「イベントの案内」「広告表示」など施策は追加され、リードのデータも増えていきます。初期設定はシンプルなものにしておいて、結果を丁寧に検証することに重きを置くことが有効です。
PDCAを何度か回してデータが蓄積されたときには、その経験値を基に、シナリオの追加やスコアの見直しが無理なく行えるでしょう。
まとめ
本稿のポイントは以下の3点です。
- リードナーチャリングとは、リードジェネレーションで獲得した見込み客を顧客へと引き上げることです。特にBtoBマーケティングでは、購入までの期間が1年程度と長いので、この間に適切な情報を届けるリードナーチャリングが有効です。
- リードナーチャリングでは「データの集約と管理」「購買ピラミッドの作成」「スコアリング」「1to1マーケティングの実践」の4つを行い、PDCAによって精度を高めていきます。
- リードナーチャリングの担当者は、KPIなどの目標を明確にして他部門と共有すること、最初はシンプルなシナリオでスタートさせ、結果の検証を重ねていくことが重要です。
シャノンは、リードの獲得から買う気の引き上げまで実施できるマーケティングオートメーションを提供しています。 本記事では触れることのできなかった具体的な施策もご紹介しておりますので、情報収集されているかたはぜひ資料をダウンロードください。