組織を巻き込み、スピーディーにはじめる。「マーケティングDX」に必要な施策の整理とは

組織を巻き込み、スピーディーにはじめる。「マーケティングDX」に必要な施策の整理とは

この記事では、これからマーケティングにおける顧客情報の管理を行う人、デジタルを用いたマーケティングの施策をこれからはじめるという方々のために、シャノンが考えるマーケティングDXについて前編、後編の2回にわたって解説していきます。

マーケティングDXとは何か

マーケティングDXとは、耳慣れない言葉かもしれません。結論から言えば、シャノンが考えるマーケティングDXとは、デジタルトランスフォーメーション(DX)と顧客経験(CX)の一部を融合した考え方です。

マーケティングDXとは「購買行動の変化に対応するために、顧客情報をデジタルで一元管理し、自社のマーケティング・プロセスを変革する。その上で最適な顧客体験を構築し、競争上の優位性を確立すること」と定義します。

経済産業省によるとDXの定義とは「データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」というものです。
またCXといえば「顧客の経験価値」のことですが、インターネットにおけるUX(ユーザーエクスペリエンス)や実店舗、接客などのすべての顧客経験や、最近では「カスタマーサクセス」のような営業支援によって得られる価値まで幅広い解釈があります。マーケティングDXでは、このうちの「ビジネスモデル」と「カスタマーサクセス」といった要素は除いて考えます。

少し堅苦しい定義になったかもしれません。
ここではシンプルに「DXとCXの一部分をあわせるとマーケティングDXになる」とご理解ください。そしてこのマーケティングDXを実現するためには、マーケティングオートメーションが必要になることも述べておきます。順を追って説明してきます。

なぜマーケティングDXが必要なのか

新型コロナウィルスの問題で、企業のマーケティングも大きく変化しました。それまでリード(見込み客)の獲得手段として行われてきた、リアルな展示会やセミナーの開催が難しくなり、多くの企業がウェビナーにシフトしました。

オフライン接点が少なくなっており、顧客接点にデジタルを取り入れることが急務になってきたのです。

そうした時代のマーケティングに必要なことは、顧客情報、データ、プロセスをきちんと管理し、統合的かつ戦略的に活用していくこと――それが、シャノンの考えるマーケティングDXです。

そしてこの背景にある変化はコロナ以前から生じており、今後もしコロナの事態が落ち着いたとしても、その背景の動向は変わらないといえます。その背景の要因とは、

  • 購買行動の変化
  • 顧客接点の増加
  • 顧客情報の環境の変化
の変化の3つです。順を追って説明しましょう。

インターネットのトラフィックの量は一貫して増大しており、消費者の購買行動は変化してきました。BtoBにおいても同様で、以前であれば、企業の製品導担当者がモノを買うということは、「営業に会うこと」、しかも競争環境の中で優位になるために「少しでも早く会うこと」が基本でした。

しかし現在では、ほとんどの担当者がインターネットによって自分で情報収集をおこない、特にBtoBの場合は、ツールベンダーへの資料請求やダウンロードは情報収集の段階でおこなわれ、購入検討者が営業担当者に接触を持つ段階では、意思決定の60%近くが完了しているといわれます。

2つめがデジタルとアナログのチャネルによる「顧客接点の増加」です。インターネットを通じての顧客との接点は、Web、メール、SNS、動画、ウェビナーなど多様化する一方で、従来のアナログで行われていた紙のDMやオフラインのセミナーやイベントもなくなるわけではありません。後述しますが、ウィズコロナでは、この「デジタル+アナログ」の展開が重要となります。

さらに「顧客情報の環境の変化」があります。個人情報やプライバシーの関心の高まりは世界的なもので、サードパーティクッキー規制、ITP、GDPRなど大きな変化は避けられません。以前のようなリターゲティング広告などの施策は難しくなり、パーミッション(同意)をとった上で、きちんと顧客体験を管理・活用する仕組みが必要となります。

こうした動向を踏まえた仕組みづくりを、シャノンでは「顧客体験の構築」ととらえ、それを実行するための「プロセス」と「チーム」づくりが必要と考えているのです。

マーケティングDXをどのようにはじめるか

では、このマーケティングDXをどのようにはじめれば良いのでしょうか。はじめていくためには、以下の3つの要点があります。

要点1:チーム・関係者 = 組織の巻き込み

マーケティングDXを推進する時に、必ずぶつかるのが、経営者、関係部署、予算管理者などの「社内の壁」です。ここで重要なことは、関係者が理解しやすい説明です。そして何よりも、推進する立場が一人ではなくチームで取り組んでいくことだといえます。

要点2:現在のマーケティング・プロセスの整理

マーケティングDXへの取り組みは、これまでのマーケティングを完全に否定し拭い去るものではありません。従来の手法やプロセスの効果のある部分を残しながら整理し、新しい手法とプロセスとの相乗効果を追求していきます。

要点3:スピードと実行可能性

何よりもスピードをもって具体的に実行することです。ここで重要なことは、実行可能であることを念頭に置くこと。試験的な運用やPoCだけではなく、実行のフェーズで迅速な展開が必要です。

購買ピラミッドで施策を整理する

要点1で述べたような、社内の関係者を得るためには、これからおこなう施策が顧客獲得の上でそのような位置づけにあるかを分かりやすく説明することが重要です。ここでは、マーケティングの購買モデルの基本である「認知→興味・関心→比較・検討→商談」という4段階の購買ピラミッドを使って、説明することをお薦めします。

購入者の購入までのプロセスを説明するツールとして、最近ではカスタマージャーニーが使われることもあります。カスタマージャーニーは生活者が商品やサービスを知り、購買するまでの一連のプロセスを旅にたとえたもので、有効な場合もあるのですが、シャノンではこの手法はあまり推奨していません。

その理由は、

  • 顧客体験の多様化
  • マーケティング以外の関係者の巻き込みが難しいこと
にあります。カスタマージャーニーという枠組みはマーケティング部門にとってはなじみのあるものですが、その複雑な構造ゆえに他部門の関係者の協力を得て描くことは困難だからです。購買ピラミッドの方がシンプルかつ部門をまたいで理解を得やすいといえます。

「集客・引き上げ・獲得」の枠組みで施策を俯瞰

まずはじめにおこなうことは、購入にいたるまでの顧客ターゲット群を示す購買プラミッドを使ったマーケティング施策の整理です。

Web、SNS、広告、ウェビナーなど複雑化し増大する施策を整理がつかないままおこなっていては、効果が得られません。それぞれの施策が、このピラミッドの中のどこに位置するかをきちんと把握することが、マーケティングDXのはじめの第一歩です。

上の図は、マーケティングDXを推進していくときの全体像を表しています。右側に「認知」「興味・関心」「比較・検討」「商談」の4つのステップからなる購買ピラミッド、その左側に「集客」「獲得」「引き上げ」という、3つのカテゴリーの枠があります。

3つのカテゴリーと縦軸のステップというこのフレームワークを活用して、各施策を整理してアプローチや具体的なアクションを設定することができます。

たとえば、集客カテゴリーでは、Webコンテンツ、引き上げのカテゴリーでは動画、SNSやウェビナー、獲得のカテゴリーでは、ホワイトペーパー、資料請求やトラッキングなどの施策があります。

それぞれを購買ピラミッドの縦軸のどこに置くかが重要となります。「集客」については広告やTwitterなどのSNS、シナリオメールやメルマガ、そして、施策を立案する際に重要なのは、「獲得」と「引き上げ」です。たとえば、ホワイトペーパーや資料請求で興味・関心層を獲得し、比較・検討の層への引き上げを狙うといった施策が考えられます。

興味・関心層をどれだけ獲得しても、そのまま放置していては、次の段階に移行しません。また営業に引き渡すリード(見込み客)としても、このままでは熱い顧客とは言えずフォローしづらいと思われることが多いでしょう。ここでは、ウェビナーが有効ですが、その場合のコンセプトも「獲得した関心層を育成し、引き上げていく」ためのウェビナーであるべきなのです。

このように、特定段階の顧客や隠れ関心層の顧客を獲得していくこと。ウェビナーを開催するにしても、単体で考えるのではなく、ホワイトペーパー施策と連動するなど特定の関心層からの引き上げを狙うと良いでしょう。

「集客→獲得→引き上げ」の3つの施策を組合せ、体験・データ・プロセスを整理してスピードを持って施策を実行していきましょう。

「隠れ関心層」獲得の起点はWebトラッキング

獲得のカテゴリーで重要なのは、「隠れ検討層」の獲得です。

先ほど述べたように、BtoBでは、顧客は自主的に情報収集しています。BtoBにおいては、潜在購入者が企業にアプローチするのは、比較検討の段階であり、商談をおこなう段階ではすでに60%以上は意思決定がおこなわれているといわれます。(※出典:Retailingtoday、E-consultancy、Acquity Group、CEB、ガートナー)

言い換えれば、比較検討フェーズに入るまでの顧客は、企業には直接連絡はしてこないため、企業の側からすれば動きが見えないということになります。顧客自身は、決して隠れて検討しているわけではありません。情報収集の主導権は買う側の企業の担当者にあり、売る側の企業からはその様子が見えないということです。

では、この隠れ検討層を、どのように獲得するのでしょうか?

ここが、マーケティングDXの要となる施策の連携であり、その起点はずばり「Webのトラッキング」です。

隠れ検討層からのシナリオ・プロセス

隠れ検討層を獲得するとはどういうことなのかを具体的に説明すると、以下のようなストーリーが考えられます。

想定される顧客体験ストーリー

中堅のITソリューション企業の営業チームのリーダーのAさんは2年前に、ある製品ベンダーが主催するデジタルマーケティングに関するセミナーに参加しました。参加の動機は、漠然とマーケティングに対する理解を深めたいと思ったからです。

セミナーでは、Webや書籍でも名前をよく見る有名講師の講演を聴き、そのベンダーの製品に関連するセッションも受講しました。
製品はオンラインマーケティングや営業支援に関するものでしたが、Aさんの会社が導入するにはまだ時期尚早で、自分が導入を検討するには予算的にもあわないという印象をもちました。
ただ、講演資料のダウンロードのためにはアンケートに答え、参加動機は「情報収集」で「導入の予定なし」の回答を残しました。その後来るメールマガジンは購読しており、時おりはメールからの記事をチェックしていました。

2年後、Aさんのチームの組織が変わり、新たな部長が着任しました。
新部長は組織の変革にも積極的で、これまでの訪問営業一辺倒のやり方を見直し、インターネットを活用し、リードづくりやインサイドセールスの体制も強化したいという考えで、その推進メンバーとしてAさんを指名しました。

また折からの新型コロナウイルスの影響もあり、非接触の営業やセミナーなどの施策が必要になり、Aさんは2年前のセミナーを思い出し、再度その会社のWebサイトにアクセスし資料をダウンロードしました。

しばらくすると、タイミングを見計らったように、セミナー案内の紙のDMが届きました。DMはパンフレット型で詳しく書かれていたので、上司にも参考資料として見せたところ「参加してみたら」と勧められました。

こうした場合、製品ベンダーにとってAさんは、潜在的な関心層であった2年間を経て、検討層に移行したことになります。2年前のテーマや、その間のAさんのメール記事閲覧の履歴、資料のダウンロードが把握できていれば、現在のAさんのテーマに見合ったウェビナーを個別にメールや電話で個別に案内することが可能です。

特定のユーザーを追いかける方法として以前は、企業サイトを見た人に広告を表示するリターゲティングがありました。しかし、インターネットの初期には有効だったこのやり方は、最近では敬遠される傾向にあります。

ユーザーの納得を得られる顧客体験の構築には、セミナーやWeb、資料請求などの履歴を管理する必要があります。Webのトラッキングデータを見れば、誰が、いつ、どんなWebページを見たのかわかります。しかし、実際にデータ採ってみるとたくさんの人が Web サイトを見ているので全てフォローするということはできません。ここでマーケティングオートメーションのスコアリングという方法を重ねていくことで、スコアリングの高い人にきちんとフォローしていくことが出来ます。

先ほどの例で言えば、以前にセミナーに参加したこともあるAさんは、しばらくの時間をおいて検討を再開して資料へのアクセスもおこなっているので、スコアリングの高い人になります。

このようなターゲットに対して、紙のDMは有効です。紙のDMはアナログな方法と思われがちですが、上司やチームメンバーに回覧され易いのです。メールに比べてコストはかかるものの、スコアリングによってセグメントされたターゲットに対しての効果は高いといえます。

このように、お客様の側からアプローチしてくれる層に対してとは別に、購入にはいたらなかった層を再度浮上させる意味ことも重要です。 たとえばSaaS系のサービスの場合、1年ごとのサブスクリプションで契約が発生するので、商談で購入に至らなかったお客様に8ヶ月後や1年後にDMを送ると、再度検討層として浮上してくることもあります。

さらに、キャンペーンを打つ場合などは、オーガニックな検索を通じてWebを訪問した人、セミナーに参加した人、記事広告を読んだ人など顧客ごとの獲得経路によってアプローチの手法やメッセージも変わります。

このように、隠れ検討層の掘り起こしからスコアリング、DMの管理までを統合的におこなうことが、マーケティングDXの顧客体験の構築の要であり、それを実現するのが、シャノンです。
マーケティング・プロセスの変革に取り組まれているみなさまは、ぜひ資料をダウンロードください。

後編では、もうひとつの大きなポイントである、「興味・関心層の引き上げ」を軸に紹介していきます。