ペルソナとは、あらゆる商品開発やマーケティングで用いられる、特定の商品やサービスの典型的な顧客として作成する人物像のことです。
まず、BtoCのペルソナの例を挙げてみましょう。たとえば、あるレディースウォッチのペルソナは、以下の通りです。
女性、26歳独身。東京都世田谷区で一人暮らし 。
大手町にある大企業の管理部門に勤務する会社員。電車通勤。
休日は食べ歩き、旅行、スポーツジム通い。ファッションはカジュアル系。
スマホはiPhoneで、最もよく使用するアプリはLINEとInstagram。
このようなペルソナが設定されることにより、デジタルかアナログか、どんな色がいいか、耐久性は必要か、など、ウォッチのデザインやスペックの詳細が具体的に決まります。 商品を売るマーケティングにおいても、このペルソナの人物と接点がありそうな場所やメディアで広告を展開すべきという方針が定まります。
このように、BtoCの事例はわかりやすいですが、BtoB、つまり企業を顧客とする場合のペルソナはどのように作成し活用するのでしょうか。
近年はBtoBマーケティングでもペルソナが必須となってきています。 今回は、BtoBにおけるペルソナの作成のしかた、活用法などについてご紹介します。 後半ではシャノンが実際に行っている、ペルソナ運用上の一工夫もご紹介します。
- あらゆるマーケティングに必須のペルソナの作成方法と注意点
- ペルソナを作成するための手がかりと、作成上の注意点
- BtoBマーケティングにおけるペルソナの作成方法とメリット
- シャノンが実践する、BtoBマーケティングにおけるペルソナ運用の一工夫
- まとめ
- 関連リンク
あらゆるマーケティングに必須のペルソナの作成方法と注意点
ペルソナとは何か、作成方法など、ペルソナ活用にあたり知っておきたい基本事項を確認します。
ペルソナはどんな場面で使われている?ターゲットとの違いは?
ペルソナ(persona)は、あらゆる商品やサービスの企画開発・マーケティングで活用されています。
各種商品やサービスの開発・販促はもちろん、Webサービス・楽曲製作のようなコンテンツ産業、商業施設の空間デザインなどでもペルソナが使用されます。
ペルソナとターゲットの違いについても確認しておきましょう。
マーケティングにおけるターゲット(target、標的)とは、商品やサービスを購入する対象者の属性です。
属性とは例を挙げると「性別」「年齢、年代」「職業」「居住地」「年収」などです。
ペルソナとターゲットの違いがわかりやすいよう、対比してみます。
ペルソナ | ターゲット | 絞り込んだターゲット | |
性別 | 女性 | 女性 | 女性 |
何歳くらい? | 26歳 | 20代 | 20代後半 |
職業 | 大企業の管理部門 | 会社員 | 大企業の会社員 |
どこに住んでいる? | 東京都世田谷区 | 首都圏に在住 | 東京23区内に在住 |
休日の過ごし方 | 食べ歩き、旅行、ジム通い | 外出することが多い | 食べ歩きや旅行が好き |
ペルソナでは年齢や職業、居住地などを当初から設定するのに対して、ターゲットは全体をいくつかに分類していきます。
ターゲットを絞り込んでいくと少しペルソナに近づいてきます。
しかし、ペルソナは一人の人物像であるのに対して、ターゲットは絞り込んでいっても「ある属性のグループ」というように複数の顧客を想定しています。
マーケティングのコンテンツや施策の詳細を決めるときには、「誰に届けるのか」をリアルに想像しやすいペルソナが役に立ちます。
一方で、ターゲットを分類する「セグメンテーション」に基づき、各セグメントに対して施策を行うマーケティング手法もあります。
両者の違いを理解して、適切に活用しましょう。
ペルソナの構成要素「デモグラフィック」「サイコグラフィック」とは
BtoCのペルソナは、「デモグラフィック」「サイコグラフィック」という2つの構成要素からなります。
- デモグラフィック・・・統計学的属性。性別、年齢、職業、家族構成、年収、居住地など
- サイコグラフィック・・・心理学的属性。趣味、性格、価値観など
※デモグラフィックのうち居住地などの地理的属性を「ジオグラフィック」と呼ぶこともあります。
ペルソナはデモグラフィックとサイコグラフィックを組み合わせて構成します。
冒頭で示したペルソナでは、オレンジ色の枠で囲んだ部分部分がデモグラフィック、青色の枠で囲んだ部分がサイコグラフィックです。
女性、26歳独身。
東京都世田谷区で一人暮らし。
大手町にある大企業の管理部門に勤務する会社員。
電車通勤。
休日は食べ歩き、旅行、スポーツジム通い。
ファッションはカジュアル系。
スマホはiPhoneで、最もよく使用するアプリはLINEとInstagram。
さらに、BtoBのペルソナでは会社の情報も構成要素となります。これは「ファーモグラフィック」と呼ばれます。
ペルソナを作成するための手がかりと、作成上の注意点
ペルソナには本当の顧客の人物像を正確に反映させることが重要で、想像や思い込みで作成するとマーケティングの成果を得られません。
ペルソナ作成では、以下のような手がかりを用います。
1)実際の顧客の属性を分析する
「すでに購入してくれている人がどんな人か」は、マーケティングにおける最大の手がかりです。
現在の顧客の年代、居住地などの属性を分析し、そこから見えてくる典型的なユーザー像はペルソナに近いものです。
2)お客様アンケート・お客様の声を集めて、分析する
顧客名簿だけではライフスタイルや好みは見えてきません。顧客についてより深く知るためには、お客様アンケートが有効です。
「なぜその商品を購入したのか」「現在のサービスで不満に思っていることは何か」などの質問に対する回答から、顧客の行動の背景を知ることができます。
Webの「お客様の声」に寄せられた意見や、「ユーザーインタビュー」でのヒアリングも有効です。
3)顧客と接する部門が入手した情報を参考にする
顧客の生の声に接することが多い部門から情報を収集することが有効です。
BtoCの場合なら販売スタッフやカスタマーサービス、BtoBの場合なら営業部門から情報を収集しましょう。
4)SNSを参考にする
BtoCの商品・サービスであればSNSも参考になります。商品を使用してみた感想や不満など、率直な意見を拾うことができます。
上記のような方法で、「客観的なデータ」をできるだけ多く収集し、それを元にペルソナを作成することが大切です。
たとえば、20代のアクティブな女性向けに企画されたバッグが実際には30代の子育て世代の女性の外出時に活用されていた、といったケースもあります。
BtoC、BtoBを問わず、すでに販売されている商品やサービスが、開発側の思惑と異なるユーザーに受け入れられていることがしばしばあります。
売り手の漠然とした思い込みをペルソナに持ち込まないように注意しましょう。
BtoBマーケティングにおけるペルソナの作成方法とメリット
BtoCとBtoBではペルソナの構成要素や作成方法はどう違うのか、BtoBでペルソナを使用するメリットは何かについて述べていきます。
BtoBにおけるペルソナの具体例
BtoBではマーケティングの対象は個人ではなく企業です。
しかし、マーケティングの直接の対象はメールを受信して読んだり、購入を検討したりする企業の担当者、つまり個人です。
したがって、BtoBのペルソナは「企業」と「企業の担当者」の2つのペルソナを合わせた形式になります。
具体例を示します。
担当者の情報 | 名前 | Bさん |
性別 | 男性 | |
年齢 | 32歳 | |
所属部門 | マーケティング事業部 | |
役職(※) | チーフマネージャー | |
決裁権(※) | なし | |
マーケティング業務経験(※) | 4年 | |
会社の情報 | 会社名 | 株式会社Xネット |
会社の規模 | 資本金1億円、年間売り上げ15億円 | |
業種 | アプリで産直食材を販売する事業 | |
会社の課題 | シニア層への課題 リピート率のアップ 企業ブランドの確立 |
|
部門の情報 | マーケティング部門の体制(※) | チームは部長・Bさんを含めて5名 Bさんはチームリーダー的存在 業務は分担して進めている |
マーケティング部門の業務 | メールマーケティング Webコンテンツ作成 広告出稿 |
一見してわかるように、担当者個人の情報はBtoCよりも簡単ですが、会社やマーケティング部門の情報を追加したBtoBのペルソナの項目は多岐にわたります。
上記ではできるだけ細かく設定していますが、当初はここまで詳細なペルソナが作成できないかもしれません。
そんなときもできるだけ設定したいのが※の部分です。
既存顧客の担当者はどのような人が多いかを調査した上で、
- どんな役職か?(肩書のほか、実質的にはどんな役割か)
- 決裁権者か?
- 部門の業務をチームで行っているか、担当者が一人で行っているか
などをペルソナに反映させると、配信するメールの文言をどうするかなど、具体策を決めやすくなります。
作成にあたってはBtoCの場合と同様で、客観的なデータをできるだけ集めることが大切です。 ペルソナを作成するための手がかりと、作成上の注意点を参照してください。
BtoBにおける、ペルソナのメリット
BtoCでは不可欠とされるペルソナが、近年はデジタルマーケティングの浸透とともに、BtoBでも活用されるようになってきました。
BtoBでペルソナを作成・使用するメリットとして以下が挙げられます。
1)マーケティングの各施策の詳細まで、一貫性をもって決定できる
配信メールの内容、送信する時間帯、どんな情報を提供するかなど、マーケティング施策の詳細を決めていくにあたり、受け手としてのペルソナがあることで施策をブレなく決定し継続していくことができます。
2)社内チームのメンバー同士や他部門と方針の共有がしやすい
ペルソナを共通認識とすることで、それぞれの作業を担当しているチームのメンバー間で方向性や価値観の共有ができます。
BtoBでは顧客のイメージがつかみにくいですが「こんな会社のこんな担当者」というスタイルで具体的な姿をメンバーに伝えることができます。
また、営業部門など他部門とも、連携がスムーズになります。
3) ユーザー目線から外れることを防げる
上記例では簡単にBさんとしていますが、作成したペルソナには具体的な名前をつけることもあります。
そうすることで、常にペルソナを思い浮かべて「Bさんならこの情報を喜ぶだろうか」「Bさんならこのタイミングが最適ではないか」と考えることができます。
マーケティング施策を実施しながら常にユーザー目線に立ち返ることができます。
シャノンが実践する、BtoBマーケティングにおけるペルソナ運用の一工夫
BtoBマーケティングにおけるペルソナ。作成まではできても、活用することが難しいと感じる人もいるかもしれません。最後に、参考となる事例をご紹介します。
【運用例1】リアルな顧客をそのままペルソナとして活用
見込み客や顧客の典型的な姿を正確に反映するペルソナを作成するのは簡単なことではなく、かなりの作業量にもなります。データがそろわない場合もあるでしょう。
そんなとき、実際の顧客の一人をそのままペルソナに置き換えて、さまざまなマーケティング施策に活用するという方法があります。
シャノンのマーケティングチームが実際にこの方法を実践しています。
ペルソナに設定するのは、リストのなかで他のデータと多くの共通点があり、かつ、社内体制など細かい情報までよく知っている顧客がおすすめです。
ペルソナの運用と同様に、「Y社のDさんならいつ、どんな情報が欲しいだろうか」と想定しながらマーケティングの各施策を進めていくことができます。
ただしこの方法は、個人情報をほぼそのままペルソナに移行させているので、社内だけの運用にとどめる必要があります。
外部の協力会社と連携して作業する場合などには使用できないので、注意しましょう。
【運用例2】複数のペルソナを同時に運用する方法もある
商材によっては、顧客のペルソナをひとつに絞り切れないこともあるでしょう。
その場合には、複数のペルソナを同時に運用することも可能です。
BtoBであれば以下のようなケースが考えられます。
①顧客が大企業と中小企業どちらにも幅広く売れている場合
②社長決裁と、部門の担当者決裁の2パターンにグルーピングできる場合
③既存顧客からの追加注文と、新規の顧客開拓のどちらも重視したい場合
上記のように明確に複数の顧客像が描ける場合以外はペルソナを2つ以上設定する方法も有効です。
しかし、どうすべきか迷うケースではペルソナは1つに絞り、まずは運用してみましょう。
まとめ
本稿のポイントは以下の3点です。
1.ペルソナはBtoCの商品開発やマーケティングで必須の概念とされてきましたが、BtoBでも活用されるようになってきています。
2.BtoBのペルソナは企業の情報と、企業の担当者個人の情報を合わせて作成します。
3.BtoBのペルソナはマーケティングのユーザー目線を維持するために有効であると同時に、社内でマーケティングの方向性を共有するために役立ちます。