ペルソナマーケティングとは?設定するメリットや作成方法、具体例を紹介

ペルソナ(Persona)の意味は「仮面」ですが、この単語のもとは「Person」のラテン語で、「人、人物」という意味も持っています。

マーケティングにおける「ペルソナ」は、顧客を代表する人物像のことです。ペルソナを設定することで、マーケティング施策の精度を上げることができます。

今回は、BtoCとBtoBのペルソナの具体例、ペルソナマーケティングのメリット・デメリット、作成の手順、活用方法などを解説します。後半ではシャノンが実際に行っている、ペルソナ活用の事例をご紹介します。

ペルソナマーケティングとは? ペルソナを基本から解説

ペルソナとは何か、ターゲットとの違い、ペルソナマーケティングのメリットとデメリットについて解説します。

ペルソナとは? BtoCの具体例とともに解説

ペルソナとは、あらゆる商品開発やマーケティングで用いられる、特定の商品やサービスの典型的な顧客として作成する人物像のことです。

まず、BtoCのペルソナの例を挙げてみましょう。たとえば、あるレディースウォッチのペルソナは、以下の通りです。

女性、26歳独身。東京都世田谷区で一人暮らし 。
大手町にある大企業の管理部門に勤務する会社員。電車通勤。
休日は食べ歩き、旅行、スポーツジム通い。ファッションはカジュアル系。
スマホはiPhoneで、最もよく使用するアプリはLINEとInstagram。

このようなペルソナが設定されることにより、まず商品の仕様が明確になります。
デジタルかアナログか、どんな色がいいか、耐久性は必要かなど、ウォッチのデザインやスペックの詳細が具体的に決まります。

商品を売るためのマーケティング戦略においても、このペルソナと接点がありそうな場所やメディアで広告を展開すべきという方針や、広告の表現内容が定まります。

ウォッチのような形ある商品だけでなく、BtoCであれば、通販などのWebサービス、楽曲や映画の制作、商業施設などのビジネスにもペルソナは活用されています。

ペルソナとターゲットの違い

ペルソナと似た概念であるターゲットも、マーケティングで活用されています。
ターゲット(target)とは、商品やサービスを購入する対象者の属性です。属性とは、例を挙げると「性別」「年齢、年代」「職業」「居住地」「年収」などです。

ペルソナとターゲットを比較したのが以下の表です。

ペルソナ ターゲット 絞り込んだターゲット
性別 女性 女性 女性
何歳くらい? 26歳 20代 20代後半
職業 大企業の管理部門に勤務 会社員 大企業の会社員
どこに住んでいる? 東京都世田谷区 首都圏に在住 東京都23区
休日の過ごし方 食べ歩き、旅行、ジム通い 外出することが多い 食べ歩きや旅行

ペルソナでは年齢や職業、居住地などを当初から設定しますが、ターゲットはユーザーを属性によって分類していきます。

右端の「絞り込んだターゲット」は少しペルソナに近づいてきます。しかし、ターゲットは絞り込んでいっても「ある属性のグループ」というように複数の顧客であるのに対して、ペルソナは一人の顧客像を想定しています。

Webサイトのコンテンツや広告出稿先などの詳細を決めるときには、「誰に届けるのか」をリアルに想像しやすいペルソナが役に立ちます。一方で、「セグメンテーション」に基づき、各セグメントに対して施策を行うマーケティング手法ではターゲットでの考え方が有効的です。両者の違いを理解して、適切に活用しましょう。

参考:セグメントとは?意味や目的、分類方法、シャノンの事例「セグメントメール」も解説 !

ペルソナマーケティングのメリットとデメリット

ペルソナマーケティングのメリットとして、以下が挙げられます。

《ペルソナマーケティングのメリット》

1) 顧客に着実に届くよう、施策の精度を上げられる
たとえば、広告をどのSNSに出稿するのか、広告の文言はカジュアルな文体がいいのか、メインビジュアルは何にするかといった施策の詳細について、受け手としてのペルソナがあることで決定しやすくなります。顧客のニーズに訴えかけ、集客や売上にもつながると期待ができます。

2) 多様な施策において一貫性を保ち、ブランディングにも有効
Webサイト、メールマガジン、広告、イベントなどの多様なマーケティング施策を複数の担当者が進めていくとき、ペルソナを基準とすることで内容の一貫性を保つことができます。コンセプトが統一されたマーケティング活動は、企業や商品のブランディングにも有効です。

3) ユーザー目線から外れることを防げる
作成したペルソナには具体的な名前をつけることもあります。担当者は常にペルソナを思い浮かべて「XXさんならこの情報を喜ぶだろうか」「XXさんならこのタイミングが最適ではないか」と考えることができます。マーケティング施策を進めていくにあたり、常にユーザー目線に立ち返ることができます。

4) 社内で共通認識を持てる
マーケティング部門だけでなく営業部門などにもペルソナを共有することで、部門やチームが違っても方向性や価値観の共有ができ、施策についてのコミュニケーションや連携がスムーズになります。

一方、デメリットとしては以下が挙げられます。

《ペルソナマーケティングのデメリット》

1) ペルソナ作成には時間とコストがかかる
精度が高く有効なペルソナを作成するためには、正確な顧客データを一定数集めて分析したり、インタビューを行ったりする必要があります。複数の商品やサービスを提供している企業では時間とコストが負担になることがあります。

2) ユーザー層が幅広い商品・サービスには向かない
ペルソナはどんな商品についても有効というわけではなく、日用品や宅配便のようなユーザー層が幅広い商品には向きません。ペルソナマーケティングが自社の商品・サービスにとってどこまで効果的かを見極める必要があります。

3) ペルソナは変化することがある
商品によっては顧客層が変化するので、ペルソナもそれに合わせて変更する必要があります。デジタル環境が急速に進展している近年は、顧客ニーズの変化のスピードも速くなっているので注意が必要です。

ペルソナの作成方法と項目、注意点は?

ペルソナの構成要素、作成に必要な情報を集める方法、項目の例を紹介します。

ペルソナの構成要素「デモグラフィック」「サイコグラフィック」とは

BtoCのペルソナは、「デモグラフィック」「サイコグラフィック」という2つの構成要素から成ります。

●デモグラフィック・・・統計学的属性。性別、年齢、職業、家族構成、年収、居住地など
●サイコグラフィック・・・心理学的属性。趣味、性格、価値観など
※デモグラフィックのうち居住地などの地理的属性を「ジオグラフィック」と呼ぶこともあります。

ペルソナはデモグラフィックとサイコグラフィックを組み合わせて構成します。

冒頭で示したペルソナの例では、オレンジ色の枠で囲んだ部分がデモグラフィック、青色の枠で囲んだがサイコグラフィックです。

女性。26歳。東京都世田谷区で一人暮らし。
大手町にある大企業の管理部門に在籍する会社員、電車通勤。

休日は食べ歩き、旅行、スポーツジム通い。
スマホはiPhoneで、最もよく利用するアプリはLINEとInstagram。

さらに、BtoBのペルソナでは会社の情報も構成要素となります。これは「ファーモグラフィック」と呼ばれます。

ペルソナ作成のためのデータ収集方法

ペルソナを作成するためには、客観的なデータを集めることが重要です。以下のような方法があります。

1)自社の顧客の属性を分析する
「すでに購入してくれている人がどんな人か」は、マーケティングにおける最大の手がかりです。現在の顧客の年代、居住地などの属性を分析し、そこから見えてくる典型的なユーザー像はペルソナに近いものです。

2) お客様アンケート・お客様の声を集めて、分析する
顧客についてより深く知るためには、お客様アンケートが有効です。「なぜその商品を購入したのか」「現在のサービスで不満に思っていることは何か」などの質問に対する回答から、顧客の行動の背景を知ることができます。Webの「お客様の声」に寄せられた意見も有効です。

3)ユーザーインタビューを実施する
顧客のライフスタイルや好みを知るためには、ユーザーインタビューが有効です。インタビューはペルソナに近い属性と思われる数名を対象とします。休日は何をしているか、購入した商品以外ではどんな商品やコンテンツに関心を持っているか、実際の顧客に話してもらうことで多くの情報が得られます。

4) 顧客と接する部門が入手した情報を参考にする
顧客の生の声に接することが多い部門から情報を収集することが有効です。BtoCの場合なら販売スタッフやカスタマーサービス、BtoBの場合なら営業部門から情報を収集しましょう。

5)SNSを参考にする
BtoCの商品・サービスであればSNSも参考になります。商品を使用してみた感想や不満など、率直な意見を拾うことができます。

上記のような方法のいくつかを組み合わせて、「客観的なデータ」をできるだけ多く収集し、それを元にペルソナを作成します。

ペルソナの項目

データを収集した後、ペルソナを作成します。
作成にあたっては、以下のような項目を組み合わせます。

ペルソナの項目の例
デモグラフィック 名前、年齢、性別、居住地
職業、勤務先、業種、部署、役職
学歴、家族構成、収入
使用しているデバイス、よく利用するアプリやサイト
サイコグラフィック 平日や休日の過ごし方、交友関係
趣味、お金の使い方、買い物のスタイル
将来の夢、悩み事、価値観

表はペルソナの項目の一例です。実際には個別の商品やサービスのペルソナに必要な要素を選び、リアルな顧客像がわかるように設定します。上記より詳細なペルソナを作成する場合もありますが、通常はあまり作り込み過ぎないほうが、共通認識として活用しやすいでしょう。

ペルソナ作成上の注意点

ペルソナを作成するときの注意点は以下です。

売り手側の思い込みを持ち込まない
ペルソナを作成するとき、情報の足りない部分があったとします。そんなときに、客観的なデータではなく、売り手が頭の中で想像する顧客像をもとに要素を追加してしまうというのが、最も避けたいポイントです。

定期的に見直しする
社会の変化に伴い、顧客ニーズも変化しているため、ペルソナは定期的に見直しをします。数年前から販売されている商品やサービスが、企画・開発時点で想定したペルソナとは異なる顧客に受け入れられているケースもしばしばあります。

当初は1つのペルソナから始める
ひとつの商品が異なる顧客層に同時に売れている場合、複数のペルソナを設定することもあります。しかし多くのペルソナがあれば、施策のパターンが増えてマーケティング活動のコストもかかります。費用対効果の点からも、ペルソナは最小限の数で運用することがおすすめです。

BtoBマーケティングにおけるペルソナの事例と、シャノンが実践するペルソナマーケティング施策を紹介!

ここまで主にBtoCのペルソナについて述べてきました。最後に、BtoBビジネスのペルソナマーケティングを取り上げます。BtoBのペルソナの事例や、シャノンが実際に行っている施策をご紹介します。

BtoBにおけるペルソナの具体例

BtoBではマーケティングの対象は個人ではなく企業です。
しかしマーケティングの直接の対象は購入を検討する企業の担当者、つまり個人です。

したがって、BtoBのペルソナは「企業」と「企業の担当者」の2つのペルソナを合わせた形式になります。

以下が、その具体例です。

BtoB商材「〇〇MAツール」のペルソナ作成例
担当者の情報 名前 Bさん
性別 男性
年齢 32歳
所属部門 マーケティング事業部
役職(※) チーフマネージャー
決裁権(※) なし
マーケティング業務経験 4年
会社の情報 会社名 株式会社Xネット
会社の規模 資本金1億円、年間売上15億円
業種 アプリで産直食材を販売する事業
会社の課題 ・シニア層への顧客拡大
・リピート率のアップ
・企業ブランドの確立
部門の情報 マーケティング部門の体制 チームは部長・Bさんを含めて5名。Bさんはチームリーダー的存在。
業務は役割分担して進めている
マーケティング部門の業務 ・メールマーケティング
Webコンテンツ作成
・広告出稿  など

一見してわかるように、「担当者の情報」はBtoCよりも簡単ですが、会社やマーケティング部門の情報を追加したBtoBのペルソナの項目は多岐にわたります。

上記は細かく設定していますが、当初はここまで詳細なペルソナが作成できないかもしれません。

そんなときもできるだけ設定したいのが※の部分です。既存顧客の担当者はどのような人が多いかを調査した上で、
・どんな役職か?(肩書のほか、実質的にはどんな役割か)
・決裁権者か?
・部門の業務をチームで行っているか、担当者が一人で行っているか
などをペルソナに反映させると、コンテンツマーケティングやウェビナーのテーマ設定、One to Oneマーケティングなど、各種施策における活用の幅が広がります。

参考:コンテンツマーケティングとは?進め方、事例、コンテンツを増やすコツまでをご紹介
参考:One to Oneマーケティングとは? MAで効率化できるその具体的手法を解説

作成にあたってはBtoCの場合と同様で、自社の顧客情報などをもとに、客観的なデータをできるだけ集めることが大切です。

シャノンが実践する、BtoBマーケティングにおけるペルソナ活用事例

最後に、シャノンが実践しているペルソナマーケティングの取り組みをご紹介します。

1) リアルな顧客をそのままペルソナとして活用

見込み客や顧客の典型的な姿を正確に反映するペルソナを作成するのは簡単なことではなく、かなりの作業量にもなります。データがそろわない場合もあるでしょう。

そんなとき、実際の顧客の一人をそのままペルソナに置き換えて、さまざまなマーケティング施策に活用するという方法があります。

シャノンのマーケティングチームが実際にこの方法を実践しています。

ペルソナに設定するのは、リストのなかで他のデータと多くの共通点があり、かつ、社内体制など細かい情報までよく知っている顧客がおすすめです。

ペルソナの運用と同様に、「Y社のDさんならいつ、どんな情報が欲しいだろうか」と想定しながらマーケティングの各施策を進めていくことができます。

ただしこの方法は、個人情報をほぼそのままペルソナに移行させているので、社内だけの運用にとどめる必要があります。外部の協力会社と連携して作業する場合などには使用できないので、注意しましょう。

2)  複数のペルソナを同時に運用する方法もある

商材によっては、顧客のペルソナをひとつに絞り切れないこともあるでしょう。

その場合には、複数のペルソナを同時に運用することも可能です。

BtoBであれば以下のようなケースが考えられます。
・顧客が大企業と中小企業どちらにも幅広く売れている場合
・社長決裁と、部門の担当者決裁の2パターンにグルーピングできる場合
・既存顧客からの追加注文と、新規の顧客開拓のどちらも重視したい場合
上記のように明確に複数の顧客像が描ける場合以外はペルソナを2つ以上設定する方法も有効です。

しかし、どうすべきか迷うケースではペルソナは1つに絞り、まずは運用してみましょう。

3)ブランディング戦略においては、詳細なペルソナを作成

シャノンでは自社のブランディングを実施しました。PEST分析、3C分析などのフレームワークも活用して自社の立ち位置を明確にするとともに、詳細なペルソナ作成も行いました。

参考:市場分析の手法にはどんなものがある?種類や活用法を知っておこう

自社の顧客分析をもとに作成したペルソナは、属性としては企業のマーケティング担当者。年齢、役職などに始まり、ビジネスにおける価値観、マーケティング業務の経験など、細部まで設定しています。

ブランディング戦略を進める過程では、ペルソナを起点として、自社の価値や姿勢を分析していきました。
顧客を代表する姿としてのペルソナを作り込むことにより、自社のブランド価値も明確になります。

直接の集客だけでないペルソナ活用方法として、最後にご紹介しました。

まとめ

本稿のポイントは以下の4点です。

1. ペルソナとは、ある商品やサービスの典型的な顧客として作成する人物像のことです。BtoCの商品開発やマーケティングで必須の概念ですが、今はBtoBでも活用されています。

2. ペルソナマーケティングは施策の精度を高めるとともに、社内の意識共有にも有効です。

3. ペルソナを作成するときは、客観的データを集めてそれを元に作成すること、思い込みで要素を追加しないことがポイントです。

4. BtoBのペルソナは企業の情報と、企業の担当者個人の情報を合わせて作成します。

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