BtoBのWebサイトには必ずといっていいほど、「導入事例」が掲載されています。
導入事例は、なんらかサービスを検討している担当者であれば、必ずチェックしたいコンテンツ。
「そのサービスは自社の課題解決に有効?」
「自社の担当者に使いこなせる?」
「本当に導入する価値があるのか?」
そういった疑問に多くの手がかりを与えてくれるのが導入事例です。
今回は、導入事例がなぜ重要なのか、どんなメリットがあるかを確認し、後半ではマーケティング担当者が導入事例インタビューを実施するときの進め方を解説します。
BtoBのマーケティングに欠かせない「導入事例」とは
BtoBのWebコンテンツとしての導入事例について、基本的なことを確認します。
「導入事例」はBtoB定番のコンテンツ
BtoB向けのサービスを紹介する公式Webサイトでは、「機能」「価格」「お知らせ」などの項目と並び、多くのサイトで「導入事例」が掲載されています。
導入事例とは、サービスを実際に利用している顧客の導入までのプロセスや、導入した結果どのような成果を上げたかを紹介するレポートです。
サービスの導入を考えている企業にとって、導入事例は非常に参考になる情報で、よく見られる人気コンテンツとなっています。
以下は、シャノンのWebサイトの導入事例ページです。
参考:シャノン導入事例
企業が導入事例を掲載する目的は、自社のサービスの価値を理解してもらい、集客・商談を増やすことです。
導入事例をコンテンツ化するメリット
企業がWebサイトに導入事例を掲載するメリットは以下です。
見込み客にサービスの価値が伝わりやすい
特にBtoB向けサービスは、多機能でかつ各社ごとに特徴が異なります。企業担当者にとって、多くのサービスがあるなかで、自社の課題を解決するために適したサービスを見極めることは簡単ではありません。そんな場合に導入事例があれば、「どの程度の規模の企業が、どんな業務をどのように改善できたのか」を知ることができ、個々のサービスにおいて、自社にとっての有用性を理解しやすくなります。
企業の実績を証明できる
導入事例の数、業種の幅広さが、サービス提供企業の実績を示します。導入企業として有名企業や大企業の名前がいくつかあれば信用度が上がり、中小企業が紹介されていれば同じような規模・業態の企業から関心を持たれます。
蓄積されたデータがサービスの改善・開発に役立つ
導入事例は定性的な顧客情報のデータベースでもあります。企業担当者からは、サービスへの要望、今後の活用の方向性などについても言及されます。導入事例として蓄積されたデータは、企業自身にとってもサービスの改善や今後の商品開発、マーケティング戦略立案にも役立つ、価値ある知財です。
導入事例のフォーマット
導入事例のまとめ方の例として、以下があります。
インタビュー記事
導入事例のなかで最も多くみられる形式です。インタビュアーが質問をしながら、企業担当者に率直に語っていただき、それをまとめます。「タイトル」をつけ、担当者やオフィスの「写真」を紹介しながら記事化してまとめます。
シャノンでは記事形式を採用しています。
参考:シャノン導入事例
インタビュー動画
上記と同じようなインタビューを動画で撮影し、3分前後程度に編集して掲載します。顧客企業担当者のコメントや表情で顧客満足度が伝わります。また、商品やサービスの使い方を具体的に示せるメリットもあります。
定形テンプレート
すべての導入事例を、共通する10項目程度の質問への回答で構成される定形のテンプレート内に収める方法もあります。Webサイトに掲載したり導入事例集をまとめたりするときに見やすく、見る人は比較検討しやすいことがメリットですが、さまざまな導入ストーリーの最も重要な部分を十分に伝えきれない場合があります。顧客にインタビューするほか、アンケート形式でコンテンツを効率よく集めることも可能です。
マンガ
典型的な例は、ある顧客がサービスを検討し、導入して成果を上げるまでの経緯をマンガにするものです。マンガの制作には時間とコストがかかりますが、あまり知られていない新しいサービスや、多機能のサービスをわかりやすく伝えることができます。
ユースケース
企業名を出さず、特定の機能の便利な使い方や、特定の業種におけるサービスの活用例などを示します。実際の事例でありながら顧客の希望で企業名を出せない場合にも、この形式が使われます。
以上のように、導入事例をどんな形でまとめるかについてはさまざまなパターンがありますが、いずれの場合もコンテンツを制作する過程において、顧客への「インタビュー」を行うことが多いです。
そこで次に、効果的な「インタビュー」の方法について考えていきます。
導入事例インタビューの進め方
導入事例インタビューをどのように企画・実施すればいいでしょうか。ここでは、外注ではなく社内のマーケティングチームの担当者がインタビューを企画・実施して導入事例を制作する場合を例にとり、順に解説します。
個々の導入事例については、ここではインタビュー記事を想定して解説していきます。
顧客企業の選定と依頼
はじめに、導入事例インタビューに協力してくれる顧客企業をピックアップします。以下の項目で選ぶと効果的です。
業界 | さまざまな業界からの事例を集めることで、幅広い層にアピールできます。自社のターゲット業界や成長中の業界の顧客はもちろん、これまでに掲載されていない業種を選定軸に選ぶと良いでしょう。 |
使用期間と満足度 | システムやサービスを一定期間使用しており、その効果に満足している顧客を選ぶことが重要です。導入からの時間が短い場合、まだ効果が出ていない可能性があるためです。 |
具体的な 成果 |
数値化できる成果(例えば、売上の増加、コスト削減、業務効率の向上など)を示せる顧客を選びましょう。具体的なデータがあると、導入事例の説得力が増します。 |
企業の 規模 |
小規模企業から大企業まで、さまざまな規模の企業の事例を集めると、多様な視点を提供できます。特に、自社のターゲットとなる企業規模の顧客事例を選ぶことが大切です。 |
お断りされるケースも想定し、導入事例インタビューを依頼する顧客は複数社リストアップすることがおすすめです。
顧客企業に取材依頼をするときには、以下の内容を含めた依頼状等を作成し、承諾を得る必要があります。
- 企業ロゴの使用許可
- インタビュー掲載場所
- インタビュー時間の確保
- 事前準備、事前原稿チェックなど、掲載までの流れ
事前準備
掲載企業が決まったら、インタビューの前に顧客企業に協力していただきたいことをお願いしたり、当日のインタビューを円滑に行うための下取材を行ったりする機会を設けます。
事前打ち合わせ
事前に顧客企業の担当者とオンラインまたは対面で打ち合わせを行います。
- 写真に登場していただく担当者、撮影してもよいオフィスなどを確認
- 導入して得られた成果のを「集客数前年比××%増」などの数値で示していただけるか確認
- インタビュー全体の流れを確認
事前打ち合わせの時間がとれる場合には、次に紹介するヒアリングシートも合わせて提出します。
ヒアリングシート
インタビューで予定している質問項目を列記して簡単に回答していただく「ヒアリングシート」をやり取りする方法が効果的です。事前に知らせることで、顧客企業の担当者は当日どんな話をするか考える時間を確保でき、社内に情報共有してよいエピソードを集めてくれることもあります。
ヒアリングシートには当日の具体的な質問を列挙します。
質問項目の代表例は以下の通りです。
- 貴社について簡単に自己紹介をお願いいたします。
- XXX導入以前の状況と、課題を教えてください。
- XXXを知ってから検討を経て導入を決めるまでの経緯を教えてください。
- XXX導入の決め手は何ですか?(価格、機能、サポート体制、その他)
- XXXを導入後、どのように課題解決できていますか?(できれば具体的な数値で教えてください)
- XXXの良い点、もう少し改善してほしい点は何ですか?
- XXXを活用して今後やっていきたいことは何ですか?
- その他、率直な感想などあれば自由にお話しください。
ヒアリングシートを送付後、担当者から回答をいただければ理想的ですが、上記のような質問項目のそれぞれに回答することはかなりの負担となるので、「回答できる項目のみ簡潔に記載してください」と依頼するか、シート送付後に電話をして、簡単に回答していただいてメモをとることがおすすめです。質問項目を担当者に事前にお知らせすることが重要です。
事前調査
インタビュアーはインタビュー当日までに、以下のようなことについて、できるだけ情報を集めて下準備します。さまざまな知識を頭に入れておくことで、インタビュー時に顧客担当者から出てくる話題についてより深く理解し、共感を示し、効果的な問いかけをすることが可能になります。
- 自社と顧客企業の取引履歴を再確認し、営業担当者にもヒアリング
- 顧客企業のコーポレートサイトで企業情報や沿革を確認
- 顧客企業のメディア掲載記事や広告を確認
- 顧客企業の業界の特徴や競合他社について調査
インタビューのシナリオを作成
一連の事前準備で得た顧客や業界の情報をふまえて、インタビューをどのように進めていくか、大まかなシナリオを作成します。記事化したときのタイトルや大見出しにしたいポイントについてイメージしながら、最初に何を質問するか、最も深堀したい部分、疑問点などを整理します。
以上、いくつかの準備の方法を紹介しましたが、実際には顧客企業の都合やスケジュールの制約のなかで臨機応変に進めることになります。ポイントをおさえて準備しましょう。
インタビュー当日
当日は、インタビューを開始する前に全体の進め方とタイムスケジュールを再確認しましょう。録音や録画をする場合は許可をとります。
インタビューは事前に送付したヒアリングシートの質問項目と作成したシナリオに沿って進めます。
ただし、当日のインタビューはシナリオの通りには進みません。顧客の担当者が熱意を持って話をしているときはその流れに合わせた質問を投げかけて、会話を盛り上げましょう。担当者は話しやすくなり、本音の部分が出てきて意外なコメントを引き出せることもあります。
逆に話が一段落して小休止したときは話題を変え、別の角度からの質問をします。
撮影は、インタビュー中の担当者の様子を撮影したり、できるだけインタビューと並行して行い、効率的に進めます。
原稿作成と先方確認
インタビュー後は速やかに原稿を作成します。インタビュー記事の構成は多岐にわたりますが、シャノンでは
- 課題
- 選定理由/経緯
- 解決
の流れで進めることが最も多いです。
他にも原稿をまとめるポイントは以下です。
タイトルにはできるだけ成果の数字を入れる
「集客数が前年比180%増」「一人あたり売上が50%アップ」など、導入の成果がわかる数字があればぜひタイトルに使いましょう。数字がない場合もできるだけ具体的で成果が伝わるタイトルにします。
主要な話題を3つ程度にまとめ、それぞれに小見出しをつける
特に注目すべき内容を3つ前後選び、それぞれに小見出しをつけて詳しく紹介します。たくさんの興味深いエピソードがある企業であれば、もっと増やすことも可能です。
第三者視点から記述するとまとめやすい
インタビューを記事化するときはQ&A形式でまとめることもありますが、長くなりすぎる場合は第三者視点の書き言葉をメインにまとめるのがおすすめです。
Q&A形式:法律エキスパートセミナーでのシャノン活用、効率化と品質向上のポイントとは
ストーリー形式:マーケティング施策起点での受注件数は前年比264%に増加。商材ごとの購買フェーズ管理を実現したMA活用方法とは
重要なコメントは会話文で入れる
全体を客観的に記述しながら、顧客の印象的なコメントには「 」をつけて会話文で掲載することで、記事のメリハリがつき、リアリティーが増します。
以上のようなポイントをおさえつつ原稿をまとめ、写真を挿入した状態で、先方に確認をとります。
例えば、ロジスティード株式会社様の導入事例は以下のような構成になっています。
参考:マーケティング施策起点での受注件数は前年比264%に増加。商材ごとの購買フェーズ管理を実現したMA活用方法とは
記事公開とコンテンツの活用
顧客企業の担当者の確認後、自社でも誤字脱字やその他のミスがないか十分にチェックをした上で、自社のWebサイトに導入事例として掲載します。
導入事例はある程度数を集めることでページの見栄えがして閲覧数が増えるので、できるだけ早く10社以上の掲載を目指しましょう。
一定数が集まった導入事例は企業の価値あるコンテンツとなります。一記事ずつメルマガに掲載したり、より詳しいデータを追加した導入事例集をダウンロード資料として提供したりといった展開が可能です。
全体のスケジュール
取材当日を起点とした事例インタビュー全体のスケジュールの目安は以下のとおりです。
目安時期 | タスク | 担当者 |
2か月前 | 取材依頼 | 弊社 |
---|---|---|
1か月前 | 事前打ち合わせ | 弊社・お客さま |
2週間前 | ヒアリングシートお送り | 弊社 |
取材当日 | 取材・撮影実施 | 弊社・お客さま |
1週間後 | インタビュー記事初稿提出 | 弊社 |
2週間後 | インタビュー記事、プレスリリースご確認 | お客さま |
3週間後 | インタビュー記事、プレスリリース修正対応 | 弊社 |
3週間後 | インタビュー記事、プレスリリース最終確認、FIX | 弊社 |
1か月後 | インタビュー記事、プレスリリース公開 | 弊社 |
まとめ
本稿のポイントは以下です。
1. 企業のサービスを実際に活用している顧客の「導入事例」はBtoB定番のWebコンテンツです。
2. 導入事例を掲載するメリットは以下です。
・見込み客にサービスの価値が伝わりやすい
・潜在顧客のニーズを掘り起こす可能性がある
・企業の実績を証明できる
・見込み客を獲得できる
・顧客との関係構築に役立つ
・蓄積されたデータがサービスの改善・開発に役立つ
3. 導入事例インタビューは、以下の流れで進めます。
(1)紹介する顧客企業の選定
(2)取材依頼と企業の決定
(3)事前準備
(4)インタビュー当日
(5)原稿作成と先方確認
(6)記事公開とコンテンツの活用
4. 導入事例インタビュー全体のスケジュールをまとめ、把握しておきましょう。
最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。
また、シャノンコンテンツアシスタントでは、主にセミナー集客メールのタイトルと内容、記事集客メールのタイトルと内容、記事本文の生成が可能です。
⇒マーケティング専用 生成AIクラウドのサービスサイトはこちら