インサイトとは?顧客となる消費者を知りマーケティングに活かす

現代はモノやサービスが溢れています。消費者に選ばれるためには、消費者が本当に求めるモノやサービスが必要です。しかし、本当に求められるモノやサービスはなかなか生まれません。そのために多くの企業が市場調査や分析をして、求められるモノやサービスを開発しようとしています。

消費者が本当に求めるモノやサービスを生み出すためには消費者の「インサイト」を捉える必要があります。インサイト(Insight)という言葉は、日本語で「洞察」や「明察」という意味です。消費者のインサイトを捉えることで、イノベーションにつながるアイデアが生まれます。

この記事では、マーケティング活動に活かせるインサイトについてくわしく解説します。

マーケティングについては「マーケティングとは?その定義と歴史をふまえると、現代のマーケティングもわかる。おすすめ本も紹介!」でくわしく解説していますので、ぜひご覧ください。

インサイトとは

インサイトとは、消費者を動かす隠れた行動原理や深層心理のことです。シャノンでは「顧客の隠れた買う気スイッチ」と呼んでます。

人間の意識は潜在意識が5%、無意識が95%ともいわれています。この大半を占める「無意識」が消費者の行動原理につながります。

消費者のインサイトを捉えれば、商品開発やマーケティング戦略に活かすことが可能です。消費者の購買意欲を高められるので売上があがり、企業としての存在感も高められます。

インサイトが注目される理由

現代は市場が成熟化しており、高品質なモノやサービスが溢れています。他社との違いを打ち出すことが難しいため、価格競争に陥りがちです。

価格競争になると、値下げをしなければなりません。そうすると利益は下がり、消耗してしまいます。競合他社が多くひしめく中で持続的に利益を上げるには、他社と違った商品やサービスを開発する「差別化」が必要です。

消費者のインサイトを捉えられていれば、これまで市場に出ていない新しいモノやサービスを開発できるので、競合他社との差別化につながります。

インサイトとニーズとの違い

インサイトとニーズは混同されがちですが、意味は異なります。
インサイトは「消費者自身が無意識に抱いている欲求」です。一方、ニーズは「消費者自身が認識できている欲求」といえます。

ニーズであれば消費者自身に聞くことである程度引き出せますが、インサイトは消費者自身が気づいていないので引き出すことのが難しいです。
しかし、インサイトを理解できれば、消費者が本当に求めているものがわかります。

インサイトとニーズの違いを表にまとめましたので、ご覧ください。

インサイト ニーズ
消費者自身が無意識に抱いている欲求 消費者自身が認識できている欲求
競合他社は知らない 競合他社も知っている
競争優位性がある 競争優位性はない(価格競争になる)

上の表でインサイトとニーズは異なるとわかりましたが、どうすればインサイトを理解できるのでしょうか。具体的な調査方法をいくつかお伝えします。

インサイトの調査方法

インサイトの発見には顧客理解が必要になります。インサイトは無意識の中に隠されており、いる状態です。消費者自身が気づいていないものなので、直接質問しても答えを導き出すことができません答えられません。そのため、消費者の感情や思考、行動などを調査してインサイトを探る必要があります。

これから紹介する調査方法を実施した後は、チーム内で振り返るデブリーフィングやワークショップをおこないましょう。ひとりで考えるだけではなく、チームでさまざまな考えを共有することでインサイトを発見できる可能性が高まります。

アンケート調査

アンケート調査のみで消費者のインサイトを発見することは難しいです。ただし、インサイトを調べる入り口としてアンケートは活用できます。
アンケートによって定量調査をおこない、他の調査に活かしましょう。Webアンケートであれば、対面でおこなうアンケートよりも多くの回答が収集できます。

集めたデータをもとに、ユーザーインタビューや行動観察などでインサイトの発見につなげていきます。
アンケートの作成方法については「マーケティングにおけるアンケートの効果的な作成と活用の方法は?」でくわしく解説しています。

ユーザーインタビュー

ユーザーインタビューには、1対1でおこなうデプスインタビューや複数人でおこなうグループインタビューがあります。これらを活用することでインサイト発見のきっかけをつかめます。

ただし、ユーザーに「どのような商品や機能がほしいですか?」と直接的な質問をしても意味がありません。インサイトは消費者自身が無意識に抱いている欲求なので、本人は答えられないはずです。

そこで、写真を使って潜在意識を掘り下げるビジュアル刺激法が有効です。テーマを設定して、そのテーマに合うと思った写真を選んでもらいます。選んだ写真に対してインタビューを進めていくことで、インサイトを探っていきます。

行動観察

消費者の行動を観察することで、無意識な行動を確認できます。カルビーの元会長兼CEOの松本晃さんは、毎週末になるとスーパーやコンビニといった現場で消費者の行動を観察していました。

カルビーのフルグラがまだ売れていなかった頃、フルグラが置かれているお米やシリアルコーナーには、そもそも人があまり立ち寄りませんでした。

そこでフルグラを牛乳やヨーグルト売り場の近くに置いたところ、売上が伸びたのです。さらに1食分を小袋で売ったり、朝食に適した値段設定にするなどの施策をおこないました。

結果、フルグラは5年で10倍の売上を達成するほどの大ヒット商品になっています。消費者の購買行動を観察し、「お米やパン以外の朝食の選択肢がほしい」というインサイトを捉えた結果といえます。

ソーシャルリスニング

TwitterやFacebook、InstagramなどのSNS(ソーシャルネットワーク)や口コミサイトなど、消費者の投稿を分析することでインサイトの発見につながります。1つひとつの投稿を確認するのは大変ですが、分析ツールを活用すれば時間をかけずに調査可能です。

アンケートやインタビューの場合、決められた質問に対して回答しますが、ソーシャルリスニングでは率直な意見を集められます。自社の商品名やサービス名、会社名などで検索してみてください。また、これらはリアルタイムに情報発信されているので、現在の情報を手軽に得られるのが特徴です。

インサイトのメリット・デメリット

続いてインサイトのメリット・デメリットについて紹介します。インサイトを発見することで大きなメリットがありますが、発見するまでが大変です。メリットとデメリットを把握したうえで、インサイト調査をおこなうかどうか決定しましょう。

インサイトのメリット

インサイトを発見するメリットは、イノベーションにつながるアイデアが生まれる点です。消費者が無意識に求めているモノやサービスを提供できるようになります。

イノベーションを起こせれば他社との差別化ができるので、シェアの拡大や顧客獲得につながります。価格競争からも抜け出せるので、売上・利益ともに伸びていきます。

インサイトのデメリット

インサイトのデメリットは、発見することが難しい点です。インサイトを調査するためには、人手やお金、時間といったリソースが必要です。長年調査をしても発見できない可能性もあります。

また、継続して調査することが必要です。人の心理は時代によって変化します。「現在」のインサイトを捉えるためには、継続してインサイトを調査しなければなりません。大変ですが、そのぶんインサイトを発見できた場合の価値は大きいです。

インサイトの活用・調査事例

インサイトを発見することは難しいですが、発見できれば商品開発やマーケティング戦略に活かせるので、売上につながります。インサイトを開発やマーケティング活動に活用して、成功した企業事例を紹介します。

日清食品

日清食品のカップヌードルは、インサイトの活用事例として有名です。カップヌードルは若年層に人気のイメージが強く、シニア層への訴求ができていませんでした。そこで日清食品が目をつけたのがアクティブシニアです。

シニア=健康志向というイメージでしたが、アクティブシニアをターゲットに調査した結果、自由に好きなものを食べており、健康と美味しさを求めていることがわかりました。

アクティブシニアのインサイトを捉え、健康に配慮しつつスープの味にもこだわった「カップヌードルリッチ」が開発され、発売7か月で1,400万食を売り上げました。

JR東日本

JR東日本は、駅を集う場所という考えで「エキナカ」を生み出し、駅と一体化した商業空間「ecute(エキュート)」の開業を成功させました。駅を交通手段としての利用だけでなく、新たな市場としました。まさに駅ならではのインサイトを活用した事例です。

JR東日本企画 駅消費研究センターは、エキナカや駅のファッションビルなどでショッピングを楽しむ消費者を「エキシューマー」と名付け、「エキシューマー・インサイト」を探究しています。

シャノン

最後に、シャノンの事例としてインサイトの調査方法についてご紹介します。
シャノンではコンテンツを企画する上で、顧客理解が浅いと企画が煮詰まってしまう場面があったので、アンケートやデプスインタビューを実施しています。

アンケートでは、マーケティング部門のかたへご自身が在籍されているチームとご自身について尋ねる質問を中心に回答を集めたのですが、より具体的な業務について伺うデプスインタビューも実施し、その後は社内で振り返りミーティングを行っています。

ちなみにデプスインタビューでは、ユーザーさまご自身のお話を伺うために、できる限り誘導するような質問はせず、インタビュワーが話すぎないよう心がけています。また、表情や話しかたなど少しでも違和感があった場合はメモを残しています。

実際に話していただいた内容も重要なのですが、「あえて話さなかったこと」に隠れた思いがあると考え、チームでの振り返りの際に必ず触れるようにしています。

まとめ

この記事では、インサイトについて解説をしてきました。ポイントは以下の4つです。

  1. インサイトとは、消費者を動かす隠れた行動原理や深層心理のことです。人間の意識は潜在意識が5%、無意識が95%といわれており、この大半を占める「無意識」が消費者の行動原理につながります。
  2. インサイトとニーズは意味が異なります。インサイトは「消費者自身が無意識に抱いている欲求」。ニーズは「消費者自身が認識できている欲求」です。インサイトを捉えれば競争優位性が生まれます。
  3. インサイトの発見には顧客理解が必要です。インサイトの調査方法は大きく分けて以下の4つがあります。
    • アンケート調査
    • ユーザーインタビュー
    • 行動観察
    • ソーシャルリスニング
  4. インサイトのメリットは、イノベーションにつながるアイデアが生まれる点です。一方、デメリットはインサイトを発見することが難しい点です。発見できた場合の価値は大きいといえます。

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