アンケート結果を活用するために欠かせない、アンケートの集計と分析の方法

マーケティングの戦略や施策を進めていくにあたり、欠かせない手法がアンケートです。

アンケートの役割、作成方法や手順、注意点を以下の記事でまとめています。

参考:マーケティングにおけるアンケートの効果的な作成と活用の方法は?

今回はその続編として、アンケートの集計に関する知識、MAのアンケートツールの活用、分析の方法などを解説します。

調査結果を活用するために重要な、アンケート集計のコツ

アンケートの結果を正しく導き出すために、正確な集計が重要です。ミスや歪みのない集計のために注意すべき点をまとめます。

集計を考慮した質問項目の作成

アンケートの質問項目は、回収後の集計しやすさ、分析しやすさを考えて作成します。以下のようなポイントがあります。

必要に応じて属性を回答する質問を入れておく
アンケートの冒頭には、「性別」「年代(10代、20代、…など)」「職業(社会人、学生など)」など、回答者の大まかな属性についての質問を入れることが多いです。

これらの項目は、あとで説明するクロス集計を行うときに役立ちます。

性別、年代、職業以外によく使われる属性としては、「最終学歴」「居住地域」「年収」「家族構成」などがありますが、アンケートの目的にそって必要最低限に絞ります。

できるだけ「無回答」が生じない質問にする
回答者が回答しづらい質問をできるだけ避けましょう。

文章で回答する自由回答の質問は少なめにして、選択肢を選ぶ質問では「どちらともいえない」のような選択肢も入れておくと、無回答を減らせます。

知っておきたい「尺度」とは?

アンケートの回答のしかたは以下のような4つの尺度に分類されます。

アンケートの4つの尺度
定性データ 名義尺度(名前、性別、一番好きな季節など)
順序尺度(好きなものの順位、理由を選ぶなど)
定量データ 間隔尺度(温度、年・月など)
比例尺度(年収、年齢、売上金額など)

名義尺度のデータは、それ自体を数値化することはできませんが、同じ回答をカウントすることが可能です。

順序尺度は、「好きな動物を順番に3つ選ぶ」のように順序をつける尺度です。

満足度を質問するときに「満足・どちらかといえば満足・どちらともいえない・どちらかといえば不満足・不満足」のような選択肢を選ぶ回答方法がありますが、これをリッカート尺度といい、順序尺度のひとつです。

間隔尺度は等間隔の数値を回答するもので、年・月、温度などです。上記のリッカート尺度の5段階にそれぞれ5~1点を割り当てて間隔尺度とする場合もあります。

比例尺度は最もデータとして加工しやすい数値データです。重量、金額、人数、年齢などがあてはまります。

集計前にアンケートを整理する「エディティング」

改修したアンケートをチェックする作業を「エディティング」(またはデータクリーニング)といいます。

回答はまず有効票と無効票とに分類します。「調査対象以外の人が回答した」「一人が複数の回答をした」「重要な回答が無回答」などが無効票となります。

無回答の欄があったとしてもそれだけで無効票とはなりませんが、無回答をどのように処理するか、あらかじめ決めたルールのもとで整理します。また、回答欄や回答方法のミスで明らかに修正が可能なものは修正します。

その後、回答を数値化する場合もありますが、この作業を「コーディング」といいます。

単純集計とクロス集計など、集計方法の種類

代表的な集計方法には、単純集計とクロス集計、自由記述集計があります。

単純集計
まず、1つ1つの質問項目ごとに回答数や割合を計算します。
単純集計の結果を見て、全体の傾向をつかみ、その後のクロス集計や分析の方針を決めていきます。

たとえば「あなたはコンビニを週何回利用しますか?」という質問に対して得られた回答を集計した結果が以下です。

コンビニの利用頻度はどれくらいですか?
回答数合計 毎日 週4日以上 週2~3日 週1日 週1日未満
212 62 55 28 22 45

クロス集計
クロス集計は、属性ごとの回答の傾向を知るために行います。

「あなたはコンビニを週何回利用しますか?」という質問に対して得られた回答を、さらに性別でクロス集計した例が以下です。

コンビニの利用頻度はどれくらいですか?
回答数合計 毎日 週4日以上 週2~3日 週1日 週1日未満
212 全体 62 55 28 22 45
102 男性 38 37 18 8 17
110 女性 24 18 10 14 28

自由記述集計
自由回答を集計することを自由記述集計といいます。

自由に記述した文章を集めたときは、頻出するキーワードに注目する「コーディング」、単語の縮減頻度を分析して可視化する「テキストマイニング」などを実施することもあります。

平均値・中央値・最頻値の使い分け

数値データの代表値として「平均値」「中央値」「最頻値」があります。それぞれの定義は以下です。

  • 平均値は「すべての数値を合計してデータ数で割った値」
  • 中央値は「すべてのデータを小さい順に並べたときに、ちょうど中央に位置するデータの値」
  • 最頻値は「最も頻度が多い数値」

最初に平均値と中央値を算出します。平均値と中央値にあまり差がない場合は、平均値を代表値とします。

しかし、データの数値のなかに「極端なバラつきのあるデータ」があると、平均値はその数値に影響を受けます。このとき平均値と中央値には乖離が生じます。

よく例に挙げられるのが平均年収です。たとえば、ある年の日本の給与所得者の平均年収は430万円だったとします。

このとき、中央値はこれより低い390万円ほど。これは、一部の高い年収を得ている人が平均値を上に引き上げている現状を示しています。

中央値のほうが平均的な人を代表しているといえます。さらにこのときの最頻値は350万円でした。これは、多くの人が中央値よりさらに低い年収だということです。

最頻値と中央値と平均値

マーケティング部門のアンケート集計にはMAツールがおすすめ

アンケート集計やグラフ化のツールについて解説します。Excelを利用している人が多いと思いますが、マーケティング部門であれば、他の施策と合わせて管理できるMAが便利です。

Excelを使ったアンケートの集計とグラフ化

Excelを使ったアンケートの集計では、まず一回答を一行として入力した「データソース」を用意します。
単純集計ならCOUNTIF関数で集計できます。

クロス集計の場合は、ピボットテーブルによって関数を使わずに分割表を作成できます。

集計した結果をもとにグラフを作成します。

Excelを使ったアンケート集計とグラフ化

Excelを日常的に使っている人にとっては難しい作業ではなく、各種のデータ加工や集計ができるでしょう。

また、GoogleフォームやマイクロソフトのFormsを使えばアンケートの回答がそのままデータソースとなるので、元データを入力する手間も不要です。

ただし、課題もあります。

マーケティング施策の一環として見込み客や顧客に対してアンケートを実施する場合、「営業担当者への要望」「自社の課題」「欲しい追加機能」など、今後の営業活動に関連する重要な情報が含まれています。

にもかかわらず、他のマーケティング施策と紐づけたり、同じ顧客からの回答履歴を時間軸で管理したりすることが簡単に行えないという点です。

MAツールなら、データ入力も個別の設定も不要

マーケティング部門では以下のようなアンケートを実施します。

  • イベントに来場した人への満足度アンケート
  • 顧客向けに商品やサービスの満足度アンケート
  • お問い合わせがあった見込み客向けに営業担当者への要望アンケート
  • メールマガジンの読者へメルマガへの要望アンケート

MAツールのアンケート機能を活用すれば、このようなアンケートの回答履歴を見込み客や顧客のデータと一元管理できます。

回答のなかには、アップセルやクロスセルにつながるポジティブなもの、解約のリスクがあるネガティブなものなどが含まれていますが、営業担当者やカスタマーサービスへすぐに情報を連携してフォローすることができます。

シャノンのマーケティングプラットフォームはアンケート機能を実装しています。

アンケートの作成・配布・回収・集計・分析までの自動化はもちろん、集計データを見込み客や顧客の履歴と合わせて蓄積し、マーケティングに活用できます。

シャノンのアンケート機能

集計結果をさらに活用する分析手法

アンケートを集計・グラフ化しただけでも傾向がつかめますが、各種の分析手法を使うことでさらに深い知見が得られることがあります。データの分析手法と事例を合わせて紹介します。

多変量解析とは? 

マーケティングにおいて、市場予測、商品開発、マーケットのセグメンテーションなどさまざまな目的で多変量解析が行われています。

多変量解析とは、3つ以上の変数に基づいて予測、判定などを行ういろいろな統計手法の総称です。

前述したクロス集計は2つの変数を解析しています。さらに進んで、3つ以上の変数を同時に解析しようとすることを多変量解析といいます。

多変量解析にはクラスター分析、コレスポンデンス分析、決定木、その他多数の分析手法があります。

日本インフォメーション株式会社、多変量解析について

アンケート結果を分析して活用した事例を紹介

データを統計的に分析する手法は数多くありますが、そのなかで、市場調査などのマーケティング分野でよく使用されているものを紹介します。

クラスター分析により顧客像をグルーピング
クラスター分析は多変量解析のひとつで、大きなグループのなかから似たもの同士のグループを見つけ出す手法です。

年齢や居住地域のようなあらかじめわかっているグループ分けではなく、趣味嗜好を組み合わせたグループを見つけ出すときに使用します。

7タイプゴルファー診断
株式会社Tポイント・ジャパンはゴルフに関するアンケート調査を実施して得られた結果をもとに、プレースタイルや価値観、メンタル面の傾向などを調査し、クラスター分析により7キャラクターのタイプを作成。  「7タイプゴルファー診断」サイトをオープンしました。

コレスポンデンス分析でポジショニングを可視化
コレスポンデンス分析は多変量解析のひとつで、2変量の解析から得られる傾向を平面にマッピングして傾向を可視化します。「数量化Ⅲ類」も同じ方法です。

スマホゲームのジャンルとプレイ理由
株式会社クロス・マーケティングはゲームに関する調査を行い、スマートフォンゲームのジャンルとプレイする理由についてコレスポンデンス分析を行いました。
Z世代は「話題作りになる」「友人・知人ができる」などの理由から”FPS・バトルロイヤル”を選ぶ、女性30代~60代は「ひまつぶし」のために“パズルゲーム”を選ぶといった結果が得られました。

スマホゲームのジャンルとプレイ理由

テキストマイニングで世相の言葉を視覚化する
テキストマイニングは多くのテキストデータから傾向を読み取り可視化する方法です。文章を単語に分割し、出現頻度や相関関係をAIで分析します。

感染禍で日常の尊さを実感
コロナ禍が私たちのくらしにどんな影響を与えたのか、新潟日報社がアンケートを行い、得られた自由記述の回答をテキストマイニングによりまとめました。
「大切さ」「生活スタイル」「気付かす」「人生観」などの特徴的な言葉が見つかりました。

感染禍で日常の尊さを実感

狙い通りの結果が得られないときは、再チャレンジ

実際には、アンケートの作成、集計、分析を適切・正確に行ったにもかかわらず、有意な結果が得られないことが珍しくありません。

あらかじめ立てた仮説が肯定されず、一方で否定する根拠も得られないといった場合もあります。

また、望む結論に近づけるために集計や分析の段階で無意識のうちにバイアスをかけてしまうことにも、注意が必要です。

興味深い結果が得られた場合は多くの利用価値がありますが、残念ながらそうならない場合もあります。

アンケートでは「有意な結果が得られなかった」という結論も、現状を反映する事実として重要と位置づけ、また別の角度からアンケートの計画を立てていきましょう。

まとめ

本稿のポイントは以下の4点です。

1. アンケートの結果は「4つの尺度」などのデータの特性を理解した上で適切に集計します。

2. アンケートの集計方法として、単純集計、クロス集計、自由記述集計があります。

3. マーケティング部門で行うアンケートの集計・管理にはリードや顧客のデータとして管理できるMAツールがおすすめです。

4. マーケティングのアンケート調査では、集計結果をさらに分析して傾向を見つけ出すため、多変量解析の手法などを活用します。

最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。以下にて豊富な機能をくわしくご紹介しております。
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