「シナリオメール」とは、あらかじめ設定したシナリオに沿って自動でメールを送信すること。
1回目のメールを送信後、相手がクリックあり/なし条件に基づき、それぞれに対して2回目に異なるメールを送り、さらにそのメールに対するリアクションに応じて3回目・・・というように設定し、顧客一人一人に合わせたフォローを自動化できます。
本記事では、シナリオメールとは何か、ステップメールとの違い、活用シーンなどを確認した後、具体的な手順やポイントを解説します。
シナリオメールとは
シナリオメールとはメールマーケティング施策のひとつです。どんな方法なのか解説します。
シナリオメールとは何か
シナリオメールとは、あらかじめ設定したシナリオに基づいてメールを自動配信する方法です。
何らかの顧客の行動があったときに、その行動や属性、興味関心に合ったメールが自動で配信されるしくみです。
以下は、シナリオメールの一例です。セミナー参加者へ一斉送信するサンクスメールに対して、シナリオを設定しています。
サンクスメールに対してクリックがあった顧客はリスト登録、クリックがなかった顧客へは事例紹介メールを送信します。さらに、事例メールに対してクリックあり/なしによってまた次の異なるフォローをする、といったしくみです。
クリックあり/なしという条件に基づいて異なる処理を行う上記のような流れを、条件分岐といいます。
なぜシナリオメールが重視されるのか
シナリオメールは、マーケティング活動において欠かせない施策となっています。重視される理由として、以下があります。
One to Oneマーケティングが不可欠
顧客の興味・関心や行動が多様化・複雑化している現在、顧客や見込み客一人一人に合わせた適切な情報を届け、一人一人違うタイミングを理解してフォローすることが重要です。このようなマーケティングをOne to Oneマーケティングといい、現代のマーケティング活動で成果を上げるために欠かせない方法となっています。
参考:One to Oneマーケティングとは? MAで効率化できる具体的手法を解説
ステップメールとのちがい
シナリオメールと似ているステップメールとの違い、デジタルマーケティング全体での位置づけを確認します。
シナリオメールとステップメールの違い
ステップメールとは、顧客や見込み客の何らかのアクションを起点として、あらかじめ準備しておいた複数のメールをスケジュールに沿って順番に配信する仕組みのことです。
ステップメールの起点となる顧客のアクションの例として、以下があります。
・資料ダウンロード
・会員登録
・商品の購入
・お試し商品の購入
・セミナー、ウェビナーなどへの申込
ステップメールは、上記のような顧客行動に対する施策として有効です。
シナリオメールと違い、ステップメールはメールを送信した相手の反応の違いにかかわらず、あらかじめ設定したスケジュールにもとづいてメールが配信されます。
以下で、シナリオメールとステップメールのちがいをまとめています。
シナリオメール | ステップメール | |
仕組み | 送信対象の行動の違いにより異なるメールを配信 | 顧客の1つの行動を起点としてあらかじめ決まった複数のメールを配信 |
条件分岐 | あり | なし |
効果 | 顧客のさまざまな行動に合わせた効果的なメール送信が可能 | 登録、資料ダウンロード、購入など 顧客の特定の行動に対して効果的なメール送信が可能 |
設定の 難易度 |
高 自社で設定をする必要がある |
中 シンプルなツールでも設定可能 |
ツール | MA | メール配信システム |
シナリオメールとステップメールの大きな違いは、条件分岐の有無です。
シナリオメール施策を行うにはメールマーケティングツールが必要です。一例としてMA(マーケティングオートメーション)が挙げられます。
MAのシナリオ設定機能により、「クリックの有無」のほか、「特定のWebページを見た」「特定の動画を見た」などの条件でもシナリオを作成できます。また、いくつかの行動にスコアをつけて加算し、一定のスコアに達したときにアクションを設定することも可能です。
参考:ステップメールとは?商談化率8倍の事例や作成方法、効果的な運用方法をご紹介
デジタルマーケティングのなかでの位置づけ
メールやWeb広告、各種分析などのデジタルな手法によるマーケティング全般をデジタルマーケティングといいます。
デジタルマーケティングのなかの手法のひとつがメールマーケティングで、メールマーケティングの施策としてステップメール、シナリオメールなどがあります。
メールマーケティングでは、シナリオメールだけでなく、ステップメールやメルマガも適切に活用していきます。
参考:メールマーケティングとは?効果は?基礎知識から具体的な進め方・施策を解説
シナリオメールのメリットとデメリット
シナリオメールのメリットとデメリットを確認します。
シナリオメールのメリット
シナリオメールのメリットとして、以下が挙げられます。
業務の効率化
シナリオメールを使わない場合は、メールをクリックした人、しなかった人それぞれを確認して、人の手によって次のメールを送信する必要があります。
シナリオメールを使った場合、次のメールをシナリオに沿ってあらかじめ設定できるので業務を効率化できます。マーケティング担当者はルーティーン作業に時間をとられることなく、他の業務に専念できます。
タイミングを逃さずフォローできる
たとえば展示会で名刺交換した相手に対して、翌日にサンクスメールを送信、そのメールに対してリアクションがあった場合にもすぐに次のフォローをすることができます。
他にも、購買意欲が高いが競合他社も検討している顧客だった場合、他社により先に営業担当者から連絡をすることができます。
顧客体験を高める
シナリオメールにより顧客に合わせたOne to One施策を実施できるので、顧客側から見れば、不要な情報が届くことは少なくなります。よりよい顧客体験を提供して良好な関係を構築でき、結果として商談や購入などのCVも向上します。
送信ミスやモレを防げる
一連の施策を自動化することにより、手作業の場合より送信ミスや送信漏れ、対応の遅れを防げます。
シナリオメールのデメリット
シナリオメールのデメリットとして、以下が挙げられます。
初期設定にスキルが必要
担当者はシナリオ設定のスキルを習得する必要があります。ある程度複雑なシナリオを作成する場合には、設計の手間と時間もかかります。また、送信予定のメール文面もまとめて準備する必要があります。
ツール導入のコストがかかる
シナリオメール設定機能を備えたMA(マーケティングオートメーション)などのメールマーケティングツールが必要で、導入のためのコストがかかります。
シナリオメールの活用シーン
シナリオメールが有効なのはどのような場合でしょうか。
BtoCの活用シーン
まずBtoCの例として以下が挙げられます。
購入者のリピート促進
ECサイトで初めて購入した顧客に対して、購入後のサンクスメール、商品到着後のフォローから継続的なコミュニケーションを取り、リピート購入促進を目指す場合などに、シナリオメールを活用できます。
サブスク契約者のフォロー
サブスクリプションサービスを契約した顧客に対しては、サービスを十分に活用してもらうためのコミュニケーションが必要です。シナリオ設定により、顧客の興味・関心に合わせて効果的なフォローアップをすることが有効です。
カゴ落ち対策
商品をカートに入れるところまで進みながら購入がなかった顧客に対しては、「お買い忘れではありませんか?」という内容のメールを送信しますが、それに反応がなかった顧客には、「似た商品をおすすめする」「クーポンを案内する」などの次のメールを送信してさらにフォローします。
高額商品の販売
車、不動産など、単価が高い商品やサービスを提供するBtoCビジネスでは、時間をかけて検討する顧客とのコミュニケーションを継続的に行うためにシナリオメールが有効です。顧客体験を向上させ、購買の可能を高めます。
BtoBの活用シーン
次にBtoBの例として、以下があります。
資料ダウンロードしたリード(見込み客)のフォロー
Webサイトを見て資料をダウンロードしたリードは、少なくとも自社製品に何らかの興味があり、商談の可能性も高いです。
ダウンロードに対するサンクスメールを送信するとともに、ホワイトペーパーやウェビナーの案内などを送信することが多いですが、このときもリードの行動に応じて興味・関心が高いと思われるコンテンツをシナリオメールで送ることが可能です。
参考:ホワイトペーパーとは?種類や作り方、ダウンロード数を上げるコツをシャノンの具体例とともに紹介
展示会来場者のフォロー
展示会で名刺交換したリードのなかには、購買意欲が高いホットリード、将来的に購入の可能性があるウォームリード、見込みが少ないコールドリードなどが混在しています。
サンクスメールの送信から始まる展示会フォロー施策ではリードの購買意欲に合わせた施策を展開していくことが重要です。
参考:展示会はアフターフォローが重要!具体的な方法や成果を出すコツを解説
休眠顧客の掘り起こし
しばらく購入やその他の動きがない「休眠顧客」に対して、メールなどでコミュニケーションをとることにより一定の割合で掘り起こすことができます。
BtoBでは顧客の社内状況の変化によりニーズが復活することもあるので、定期的な休眠顧客フォローが重要です。
顧客のリアクションに合わせた対応ができるシナリオメールが有効に活用できます。
参考:休眠顧客の掘り起こしはなぜ必要?商談化率を高める具体策・方法と企業事例も解説!
リードナーチャリング
シナリオ設定では顧客の特定の行動も分岐の条件として設定することができます。
たとえば、「導入事例紹介ページを見た」「価格ページを見た」などの行動があった場合には購買意欲が高くなっている可能性があるので、それに合わせたコンテンツを提供することができます。
リードの行動に対してスコアを設定し、一定のスコアに達した場合にメールを送信することも可能です。
参考:リードナーチャリングとは?成果を出す7つの手法や成功事例を紹介
シナリオメール設定の手順と作成のポイント
シナリオメールを設定する手順とポイントを解説します。
シナリオメール設定の手順
一般的なシナリオメール設定の手順は、以下のとおりです。
STEP1 対象と目的を決める
誰を対象に、何をするかを決めます。
例:ホワイトペーパーをダウンロードしたリードをフォローして、製品の資料請求へと誘導する
STEP2 シナリオを設計する
送信するメール、添付するコンテンツと条件分岐を設定します。
上記の例の場合、ホワイトペーパーに関連するコラム記事へ誘導するメールを送信して、それを閲覧した/しないで分岐してそれぞれに対して違うメール施策を展開します。
STEP3 コンテンツを作成する
シナリオを実行するために必要となるコンテンツを作成します。メール文面、添付資料のほか、専用ランディングページの作成が必要になることもあります。
STEP4 配信設定
配信メールを設定し、想定通りにシナリオが進むことをテスト配信により確認します。
STEP5 運用
設定したシナリオメールを運用します。
STEP6 効果測定と検証、改善
シナリオメールの運用実績を確認・検証し、必要に応じてシナリオを改善します。
上の例の場合であれば、対象者のうち資料請求に至ったCV数やCV率を確認し、目標水準に達していない場合には改善を図ります。
シナリオ作成のポイント
シナリオ作成時のポイントとして、以下があります。
シナリオメールの条件はクリックがおすすめ
シナリオに設定する条件としてはクリックのほかに開封もありますが、開封はブラウザやデバイスによっては正確に測定できないことが増えています。
したがってクリックを条件とすることが一般的です。クリックのほかには、
・ランディングページのCVの有無
・提供した動画の視聴の有無
・特定のWebページ閲覧の有無
・ウェビナーなどの申込の有無
・アンケートの回答の有無
なども条件として使用されます。
CTAを明確にする
施策の目的である最終的なゴールを明確にするとともに、コンテンツのなかでそれが顧客に明確に伝わるか、メールの読者がアクションしやすい内容と構成になっているかが重要です。
ステップが多すぎないように設定する
ステップが多すぎると各メールの印象も薄くなり、離脱のもとになります。特に最初は3ステップ位のわかりやすいシナリオで設定してみましょう。顧客にとって価値があるコンテンツを作り、届けることに力を入れ、シナリオは3~5ステップ位の間で設定することがおすすめです。
第三者チェックと配信テストをして正確に設定する
シナリオにミスや不十分な点はないか、第三者による確認を含めて慎重にチェックすることが大事です。配信テストも入念に行いましょう。
定期的に見直しをする
シナリオは一度設定すれば長期的に使うことができますが、定期的に見直して改善するようにしましょう。
シナリオメールを実施できるMAのシナリオ機能とは
シナリオメール施策を実行するには、デジタルマーケティングツールであるMAの導入がおすすめです。
MAにはデジタルマーケティング施策を可能にする機能が搭載され、一元管理することが可能です。
MAならではの機能のひとつが、シナリオ機能です。
MAには自社のWebサイトを見たユーザーの行動履歴を検知する機能があります。
シナリオの条件として設定しやすい「メールのクリック」の場合、URLをクリックしたその先のWeb上で、どんな行動をとったかもあわせて取得できます。
また、MAのシナリオ機能は、顧客向けのシナリオメールだけでなく、条件に合うリードや顧客を抽出しリスト化するときや、リードの行動を営業担当者やインサイドセールスに知らせるときにも活用できます。
参考:MAのシナリオ機能とは?シナリオを作成するメリット、手順、シャノンが実践しているシナリオ事例も多数紹介!
シャノンが実践中!シナリオメールの具体例
シャノンではMAのシナリオ機能により各種のシナリオメールを設定・運用しています。その中から効果的な施策事例をいくつか紹介します。
ホワイトペーパーをダウンロードしたリードのフォロー
以下は、ホワイトペーパーをダウンロードしたリードを資料請求へと自動で誘導するシナリオメールの例です。
まず、ホワイトペーパー関連の読み物ページを案内するメールを送信します。メール内URLをクリックして事例ページを閲覧したリード、閲覧しなかったリードそれぞれに対して、「会社の強みページ」「関連事例ページ」を案内し、その後も継続的にフォローしていきます。
休眠顧客の掘り起こし
休眠リードに対して、定期的にコンタクトをとるときのシナリオです。
休眠顧客のなかには、現在でも変わらず休眠状態の顧客と、状況が変化している顧客とが混在しているので、まず興味・関心が高い人かどうかを判定できるよう、資料請求へ誘導するメールを配信します。
クリック有、申込有のリードは購買意欲が高いリードとして、「比較・検討フェーズ」リストに登録します。
クリック有、申込無のリードはその一段階下の「興味・関心フェーズ」に登録します。
一方、資料請求メールにクリック無のリードにはホワイトペーパーダウンロードを案内します。ここでホワイトペーパーの申込があったリードは「クリック無、申込有」として、「興味・関心フェーズ」に登録します。
さらに申込無の対象者へは読み物記事を案内します。
以上の方法で、休眠リードから「比較・検討」「興味・関心」「認知」の各フェーズに該当するリードを見つけ出すことができます。
このほか、以下の記事でもMAによるシナリオ機能設定例を豊富に紹介しています。
参考:MAのシナリオ機能とは?シナリオを作成するメリット、手順、シャノンが実践しているシナリオ事例も多数紹介!
まとめ
本稿のポイントは以下です。
1. シナリオメールとは、メールマーケティングのひとつで、あらかじめ設定したシナリオに基づいてメールを自動配信する方法です。ユーザーのリアクションによって異なるメール送信やその他のアクションを、あらかじめ設定して自動で行います。
2. ステップメールとは、顧客の1つのアクションを起点として、あらかじめ準備した複数のメールを一定の間隔で順番に送信する方法です。条件分岐はありません。
3. シナリオメールのメリットとデメリットは以下です。
《シナリオメールのメリット》
・業務の効率化
・タイミングを逃さずフォローできる
・顧客体験を高める
・送信ミスやモレを防げる
《シナリオメールのデメリット》
・初期設定にスキルが必要
・想定外の行動に対応できない
・ツール導入のコストがかかる
4. シナリオメール設定の手順は以下です。
STEP1 対象と目的を決める
STEP2 シナリオを設計する
STEP3 コンテンツを作成する
STEP4 配信設定
STEP5 運用
STEP6 効果測定と検証、改善
5. シナリオ作成のポイントは以下です。
・シナリオメールの条件はクリック率がおすすめ
・CTAを明確にする
・ステップが多すぎないように設定する
・第三者チェックと配信テストをして正確に設定する
・定期的に見直しをする
6. シナリオメールを設定するには、シナリオ機能搭載のMAがおすすめです。
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