マーケティング用語の「ホワイトペーパー」とは、ある商品やサービスの見込み客に対して企業が提供する資料のことです。
多くの場合、資料をWebからダウンロードしようとすると、事前にメールアドレスや名前など個人情報の入力を求められます。
こうして、企業は見込み客(リード)の情報を入手することができるしくみになっています。
ホワイトペーパーは、リード情報を収集するための有力な手段ですが、マーケティングの成果を上げるためには以下3点がポイントとなります。
- リードにとって魅力のあるホワイトペーパーを提供する
- より多くの人にダウンロードされるよう、見せ方や入力フォームを工夫する
- 自社の商品・サービスを購入する可能性の高いリードに、確実にリーチする
今回は、ホワイトペーパーのしくみや作成の仕方、効果を上げるためのアイデアを、シャノンが提供している人気の高いホワイトペーパーを例に挙げながら解説していきます。
BtoBマーケのリードジェネレーションとして有効なホワイトペーパーとは
ホワイトペーパーとは何か、ホワイトペーパーがリードジェネレーションにどう活用できるのかについて述べていきます。
ホワイトペーパーとは、見込み客にとって有用な資料の提供
ホワイトペーパー(white paper)の元の意味は文字通りの「白書」で、政府や公的機関の報告書などをいいます。
そこから転じてマーケティング業界では、企業が発する調査レポートなどを指すようになりました。
そして現在は、BtoBマーケティングにおいて、企業がリード獲得のために提供するダウンロード資料のことをホワイトペーパーと呼んでいることが多いです。
企業は、商品やサービスを売りたい対象企業にとって価値があると思われる情報を資料にまとめ、Webからダウンロードできる状態で提供し、
企業の担当者がその資料を入手したい場合、会社名、メールアドレス、担当者名などの個人情報を入力することにより、ダウンロードが可能になります。
Web上に入力フォームやダウンロードボタンを設定する一連の作業を効率よく行いたい場合は、MAツールが便利です。
申込履歴や登録されたリードをほかのマーケティング接点と合わせて一元管理することができます。
参考:シャノンのマーケティングプラットフォーム
ホワイトペーパーはリードジェネレーションの有効な手段
リードジェネレーションとは、見込み客獲得のための活動全般のことで、オンラインだけでなくオフラインの活動も含みます。
オフラインのリードジェネレーションとしてはショールームや展示会、パンフレットの配布などの方法があります。
オフラインで接点があったリードは名刺交換などによりリスト化できます。
一方オンラインのリードジェネレーションにおいて、BtoBマーケティングの担当者はまず、ネット広告やSNSなどで幅広く自社の商品・サービスの情報を告知し、自社のWebサイトへと誘導します。
興味を持ってくれたリードは、その後もサイトを訪れてくれるかもしれません。
しかし、オンラインのリードジェネレーションでは、見込み客の名前や会社名、メールアドレスなどの情報を入手しにくいという課題があります。
参考:リードジェネレーションとは?MA(マーケティングオートメーション)で効果的に見込み顧客を獲得する手法と事例を紹介
そこで、ホワイトペーパーが有効となります。
特定の商品・サービスを紹介するページを閲覧している企業の担当者は、何らかの興味・関心を持っています。
その興味に応えるような資料を入手できるのであれば、代わりに個人情報を入力してもいいと考える人は多いでしょう。
BtoCと違い、BtoBの個人情報には個人の住所などのプライバシーが含まれないということもあり、ホワイトペーパーのしくみは有効に作用します。
見込み客の名前とメールアドレスがわかれば、そこからメールマーケティングを展開することができます。
自社商品の機能を紹介するセミナー/ウェビナーを案内したり、見込み客にとって魅力的なキャンペーンの情報を届けたりして、購入の検討へと促していくことが可能になります。
ホワイトペーパーの種類
ホワイトペーパーが有効だとわかっていても、どんな内容で作成すれば見込み客に歓迎され、リード情報を獲得できるのか?は多くのマーケティング担当者が悩むところです。
見込み客の獲得に有効なホワイトペーパーにはいくつかの種類があります。
以下に例を挙げるので、自社の持つノウハウやデータのなかでホワイトペーパーに活用できるコンテンツがあるか、再チェックしてみてください。
1)業界解説、用語集
現代は業種を問わず多くの企業が変革を迫られているので、新しい概念をわかりやすく解説する資料が有効です。
見込み客のニーズ | ★★☆ |
---|---|
制作難易度 | ★☆☆ |
2)導入事例集
すでに導入している同業他社が実際にどのような活用をしているのかは、製品やサービスを検討するうえで企業が知っておきたい情報です。
できるだけ既存顧客の承諾を得て実社名入りの事例集を作成しましょう。
導入企業の担当者の協力を得てインタビュー記事を作成するのも効果的です。
例:導入事例集~製造業編
見込み客のニーズ | ★★★ |
---|---|
制作難易度 | ★★★ |
3)調査レポート
アンケート調査などを実施し、企業の関心事をデータで示す資料です。
例:シャノンが実施したアンケートによると「こっそり参加」が3割以上。ウェビナーの参加実態とは?
見込み客のニーズ | ★★★ |
---|---|
制作難易度 | ★★☆ |
4)ノウハウ紹介
企業が何らかの新しい試みを始めたい、業務改善を図りたいなどのときに役立つノウハウを提供する資料です。
例:ウェビナーのはじめかたガイド
見込み客のニーズ | ★★★ |
---|---|
制作難易度 | ★★☆ |
5)セミナー/ウェビナーの講演録
実際に行ったセミナー/ウェビナーの内容をまとめた資料です。
講演録などをリバイズすることで制作コストを抑えることができます。
例:「マーケティングオートメーションのはじめかたウェビナー」資料
見込み客のニーズ | ★★☆ |
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制作難易度 | ★☆☆ |
6)商品比較レポート
見込み客が比較検討しているであろう複数の商品やサービスについて、機能や価格を比較し解説を加えた資料です。
見込み客のニーズ | ★★★ |
---|---|
制作難易度 | ★★☆ |
他にも様々なテーマのホワイトペーパーが考えられます。
既存のホワイトペーパーの形式や内容にとらわれず、「見込み客にとっての価値」という観点から、ホワイトペーパー作成にチャレンジしてみてください。
ホワイトペーパーで成果を上げる5つのアイデア
ホワイトペーパーでより多く、より質の高いリードを獲得するためのアイデアをご紹介します。
大切なことは、ホワイトペーパー単体でなく、デジタルマーケティング全体のなかで個々のホワイトペーパーをどう位置付けるか、を考えながら進めていくことです。
【アイデア1】見込み客の段階に合わせてターゲットを明確にする
前項ではホワイトペーパーの種類を列挙しましたが、実際に個別のホワイトペーパーを作成するときに意識したいことがもう一つあります。
それは、ホワイトペーパーのターゲットです。
具体的には以下のように、リードの興味・関心の度合いで分類し、どの段階の見込み客に対して届けるのかを明確にします。
① 認知・インサイト発掘の段階
企業の課題を解決するソリューションを探している段階です。
インサイトとは、見込み客自身が気づいていない潜在的なニーズのことを指し、シャノンでは「顧客の隠れた買う気スイッチ」と呼んでます。
この段階では「同業他社はどんなことに悩んでいるのか」を明らかにする調査レポート、多くの企業で参考になる「ウェビナーはじめかたガイド」、知識を増やしたい担当者向けの「業界最新用語集」などが向いています。
② 興味・関心の段階
「この商品はうちの会社に必要かもしれない」と思い始めた段階です。
「他社の活用事例集」「マーケティングオートメーションのはじめかたウェビナー」解説資料 などが該当します。
③ 比較・検討の段階
他社製品も含めて比較検討に入っている段階です。
「商品比較レポート」「導入までの流れ」のような資料が該当します。
ホワイトペーパーは1種類でもいいのですが、①②③のような各段階の見込み客に向けて、複数のホワイトペーパーを用意しておくこと有効です。
何をダウンロードしたかによって見込み客の興味・関心がどの段階かがより明確になります。
【アイデア2】入力項目は少なめにして、ダウンロードのハードルを下げる
ダウンロードしたいと思う資料を見つけてボタンを押したところ、たくさんの入力項目を目にしてダウンロードをやめてしまう、というのはよくあることです。
「検討度合いが高くない見込み客が含まれていても、できるだけ多くのリードを集めたい」という場合は、思い切って入力項目を少なくしてみます。
メールマーケティングを継続的に実施していくのであれば、最低限の項目として「会社名」「部署名」「役職」「名前」「メールアドレス」程度に絞り込み、携帯電話番号などの入力は任意にしてもいいでしょう。
しかし、電話によるアプローチが発生する可能性があれば電話番号は必須となります。
特に在宅勤務が増えたいまは、電話番号の項目に「日中にご連絡が可能なお電話番号」など、こちらから連絡することをわかりやすく明記しておくことがおすすめです。
リードを獲得後どんなフォローをしていくかを視野に入れながら、必要最低限の入力項目に絞り込みましょう。
【アイデア3】一目でダウンロードしたくなる工夫も必要
ホワイトペーパーの内容はダウンロードするまでわかりません。
そのため、掲載するページを見た瞬間に「このホワイトペーパーはダウンロードする価値がありそうだ」と思わせるための工夫が必要になります。
以下のような点に留意しましょう。
1)「読んでみたい」と思わせるタイトルをつける
よい内容のホワイトペーパーでも、興味を引かれるタイトルでなければダウンロード数は伸びません。
思わずダウンロードしたくなるようなタイトルをつけるために、複数の候補をあげてベストなものを選びます。
たとえば調査レポートの場合、A案よりB案の方がより続きを読みたくなり、ダウンロードしてみたいと思われるでしょう。
- A案「マーケティング担当者へのアンケート ウェビナー実施率は6割 調査レポート」
- B案「マーケティング部門の6割がウェビナーを実施。 残る4割が抱えている課題とは?」
ただし、ダウンロードした担当者の期待にホワイトペーパーが応えられなかった場合は逆効果となってしまいます。
ホワイトペーパーの内容を正確に要約し、かつ、興味を引かれる文言でわかりやすいタイトルをつけましょう。
2)商品の情報がわかりやすく、共感できるWebサイト
Webサイトがスッキリと見やすいデザインで、商品についてわかりやすく紹介されていることが大事です。
さらに、ターゲットとなる企業や企業担当者の課題に応えるひとことが掲載されていたら、「これ、うちの会社のことだ」と共感を覚えます。
ホワイトペーパーを提供することと合わせて、Webサイトを整備することが大切です。
3)ホワイトペーパーを紹介するページに内容の抜粋や要約を掲載する
電子書籍の「立ち読み」機能のように、ホワイトペーパーの一部を公開したり、内容の要約を掲載したりすることも有効です。
ホワイトペーパー一覧のページに1つだけ、個人情報の入力なしでダウンロードできる資料を掲載しておくという方法もあります。
ここまで3つのアイデアを紹介してきました。
さらにここからは、シャノンで実際に提供しているホワイトペーパーを具体例として挙げながら2つのアイデアを解説します。
【アイデア4】「Why」から伝えて関心を引き上げる
LPやウェビナーなど他のコンテンツにも共通することですが、作成時は「Why」「How」「What」の順番に構成を整えることが大切です。 そしてホワイトペーパー作成にあたっては、たとえば こちらで分類したターゲット①のリードを意識して「Why」を明確にすることが特に重要です。
1)「Why」「How」「What」の三部構成にする
ホワイトペーパーのようなコンテンツを作成するときは、「Why」「How」「What」を意識して構成すると、読み手に伝わりやすいストーリになります。
あるMAツール・商品名「X」について紹介する場合、以下のように展開します。
- 「Why~なぜ今、MAが必要なのか」
- 「How~どのようにMAを進めていけばいいのか」
- 「What~そのためにはXがおすすめ」
下の図は、シャノンが提供し、多くの方にダウンロードしていただいているホワイトペーパー「ウェビナーのはじめかたガイド」のページ構成です。
「Why」「How」「What」の三部構成で組み立てられ、自社商品そのものを紹介する「What」に割くページ数は多くありません。
重要なのは、「Why」「How」の部分で納得感を得られること、言い換えれば、読み手目線で知りたい気持ちに応えることが重要です。
2)「Why」を明確にして、インサイトを発掘し関心を引き上げる
認知フェーズのリードの場合、自社の課題を解決したいという意思はあるものの、具体的な解決策に到達していません。
ホワイトペーパーは、漠然とした課題感を持つ見込み客に対して、「Xのようなツールが有効かもしれない」と自ら考えるようになってもらうことが大事です。
引き続き上の図を参照すると、「Why」に最も多くのページ数を使っています。
商品の説明は一切なく、課題感を整理し、説得力を持ってソリューションを示す内容となっています。
「Why」を明確にすることで、「顧客の隠れた買う気スイッチ」を動かし、認知フェーズのリードを興味・関心や比較・検討のフェーズへと引き上げることができます。
【アイデア5】コンテンツは惜しみなく提供し、期待に応える
シャノンが実際に提供しているホワイトペーパー「ウェビナーのはじめかたガイド」のWebページは以下です。
ダウンロードページには、「ウェビナーの目的」「ダウンロード配信とオンデマンド配信の違い」「ウェビナー配信に必要な機材・環境」のグラフィックをカルーセルで示し、内容の一部を紹介しています。
資料のボリュームはなんと60ページ。目次は以下の通りです。
各ページにはグラフィックを多用し、見やすく理解しやすい編集にも時間をかけています。
この資料があれば初心者もウェビナーを企画し安全・確実に開催できる、網羅的な内容となっています。
ホワイトペーパーでは、ダウンロードというアクションを起こした見込み客の悩みを十分に解消し、満足を感じてもらえるよう、「コンテンツは惜しみなく提供する」姿勢が大切です。
ただし一方で、数ページだけのシンプルな資料がNGというわけではありません。
興味深いアンケート結果、参考になる他社の導入事例など、十分な内容があれば、無理にページ数を増やす必要はありません。
重要なのは「ダウンロードした人の期待に応える内容かどうか」です。
まとめ
本記事のポイントは以下の3点です。
1. 資料を提供する代わりに個人情報の入力を求めるホワイトペーパーは、BtoBマーケティングで見込み客を獲得するための有力な手段です。
2. ホワイトペーパーには様々な種類があります。自社が持つノウハウやデータのなかで見込み客にとって価値のある情報を探して、編集することが大切です。
3. ホワイトペーパーで多くのリードを獲得するためのアイデアをご紹介します。
1)見込み客の段階に合わせてターゲットを明確にする
2) 入力項目は少なめにして、ダウンロードのハードルを下げる
3)一目でダウンロードしたくなる工夫も必要
4)「Why」から伝えて、関心を引き上げる
5)コンテンツは惜しみなく提供し、期待に応える