ライブコマースとは?中国市場で成長を続ける理由を解説

新型コロナウイルスの感染対策として、外出自粛時期があったのは記憶に新しいと思います。この時期に私たちの生活を支えたのがオンラインショッピングです。

さまざまな商品をWeb上で購入できるため、年齢層を問わず活用が進みました。

そのオンラインショッピングの新しい販売手法が「ライブコマース」です。近年、中国市場を中心にライブコマースが急速に成長を続けています。

この記事では、今後日本でもトレンドとなり得るライブコマースのポイントを解説します。マーケティングにも活用できる可能性を秘めているので、ぜひ参考にしてください。

ライブコマースとは

ライブコマース(Live Commerce)とは、ライブ配信とECを組み合わせた販売方法です。

ライバーと呼ばれる配信者がリアルタイムに商品やサービスをPRしながら販売します。

ライバーとして出演するのは、インフルエンサーやタレント、店舗スタッフなどさまざまです。

ライブ配信の運営は企業がおこなうこともあれば、インフルエンサー個人がおこなうこともあります。

ライブコマースは視聴者とのコミュニケーションがとれるため、従来のECサイトと比べて購入される比率が高いです。

テレビショッピングと似ていますが、ライブコマースはスマートフォンとプラットフォームツールとインターネット環境さえあれば実施できます。

テレビショッピングと違い、それほど費用をかけずに始められます。ライブ配信頻度を増やせば顧客との接触時間が増え、信頼を高められるでしょう。

ライブコマースは、自社のECサイト上にライブ配信できるSaaSを導入する形態、ECモール上でおこなう形態、SNSのライブ配信機能を使う形態があります。

プラットフォームの種類 プラットフォームの例
自社のECサイト上 ・Firework
・Live cottage
ECモール上 ・淘宝(タオバオ)
・auPayマーケット
SNS上 ・Instagram
・YouTube
・TikTok

ライブコマースと相性いい商品

中国消費者協会が発表した「ライブコマースにおける消費者満足度に関するオンライン調査報告」を見ると、以下の商材がライブコマースで購入されやすいことが確認できます。

  •  衣料品(アパレル、小物など)
  • 日用品(消費財、家具など)
  •  グルメ(食品、お菓子など)
  •  化粧品(化粧水、メイク道具など)

これらの商品はライブによってイメージしやすくなるうえ、影響力の大きいKOL(Key Opinion Leader)、インフルエンサーなどが紹介しやすいのが特徴です。

インフルエンサーを起用して商品販売するプロモーション手法を、企業側も積極的に活用しています。

人気のあるインフルエンサーが出演者としてライブ配信すると、新たな層にアプローチできるため、売上につながります。そのため、インフルエンサーの選定が大切です。

ライブコマースが注目される理由

ライブコマースが注目される理由は、売上アップにつながるためです。売上アップする理由は大きく分けて以下の3つです。

  • 商品の魅力が伝わりやすい
  • 双方向のコミュニケーションが可能
  • オンラインで実店舗に近い買い物体験ができる

それぞれくわしく見ていきましょう。

商品の魅力が伝わりやすい

テキストだけでは伝えられない情報を、ライブ動画によって視聴者に細かく伝えられます。

例えば、配信者が野菜の生産者の場合、野菜への想いや生産過程のストーリーを視聴者へ直接伝えることが可能です。日用品なら店頭実演のように、使用してみるものいいでしょう。

ライブ配信は臨場感があり説明に熱がこもるため、テキストや写真だけでは伝えきれない商品の魅力を訴求できます。視聴者も安心して商品を購入できるでしょう。

しっかりと準備をして、動画ならではのメリットを活かすことで商品の魅力を伝えられ、視聴者の購買意欲も高まります。

商品の魅力を伝える具体的な内容は以下の通りです。

  • 着用して素材感を伝える(衣料品)
  • グルメレポートをして感想を伝える(食料品)
  •  商品の使い方を細かくレクチャーする(化粧品)

双方向のコミュニケーションが可能

ライブコマースは双方向性の高さが特徴です。配信者による一方的な情報発信だけでなく、視聴者も質問や気になることをコメントできます。

寄せられたコメントを配信者が読み上げたり、質問に答えられるのもライブコマースだからできることです。

衣料品であれば「縫い目を見たいのでアップで映して」、食料品であれば「実際に食べて感想を伝えて」といったリクエストもできます。

視聴者に楽しんでもらうため、商品に関するクイズを出している事例もあります。

双方向のコミュニケーションの具体的な例は以下の通りです。

  • コーディネートの悩みに答える(衣料品)
  • どのような料理に使えるか答える(食料品)
  • メイクの悩みに答える(化粧品)

オンラインで実店舗に近い買い物体験ができる

対面販売と同じく、オンラインでも接客は重要です。チャットに質問や相談が寄せられた場合は、対面販売と同じように真摯に対応してください。

そうすることで、視聴者は不安が解消されます。これは、まさに実店舗でもおこなわれている接客です。

実店舗に近い買い物体験の具体的な施策は以下の通りです。

  • 視聴者の身長体重を聞き、そのサイズに合った商品を紹介する(衣料品)
  • 視聴者の好みを聞き、適した商品を紹介する(食料品)
  • ビューティーアドバイザーによるアドバイスをおこなう(化粧品)

ライブコマース市場

新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、家にいながら買い物ができるライブコマース市場は注目を集めています。とくに市場規模の大きい国が中国です。

中国では、2020年末時点でライブコマースの利用者は約3億8,800人にも上り、多くの人が利用しています。

とくに若い世代の利用率は高く、スマートフォンからライブコマースを利用しているケースが増えています。

中国のライブコマース市場

KPMGとアリババ集団傘下のアリ研究院が「1兆元市場に向かうライブコマース」というレポートを発表しています。

このレポートによると、2021年の中国におけるライブコマース市場は、前年比90%増の1兆9,950億元(約33兆9,150億円、1元=約17円で計算)に達する予想です。

2020年3月に中国消費者協会が「ライブコマースショッピング消費者満足度オンライン調査報告」を発表しました。

この調査によると、中国の消費者がよく利用するプラットフォームTOP3は淘宝(タオバオ)、抖音(TikTok)、快手(クアイショウ)です。

これらの配信プラットフォームは中国国内での認知度も高く、販売者にとっても効果のある出店場所として浸透しています。

参照:ライブコマース、健全な発展を見据えて(中国)独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)

日本のライブコマース市場

現状、日本のライブコマース市場は中国のライブコマース市場と比べると規模が大きくありません。

MMD研究所の調査によると、日本でライブコマースを利用した経験のある人は12.7%、実際に商品を購入したことがある人は5.8%にとどまっています。

ただ、ライブコマースを認知している人の内、23.2%が利用したいと回答しています。とくにZ世代に近い10代から30代は利用意向が高い傾向にあるようです。

Z世代のように若い世代はこれからの消費を支える大事な顧客層のため、ライブコマース市場を注視し続けることが必要といえます。

Z世代については「Z世代とは?何歳からを指すのか、なぜZなのかを簡単に解説」でくわしく解説しています。

中国のライブコマースが成長を続ける理由

中国のライブコマースが成長を続ける理由の1つに、タオバオやJD.comといった大手EC企業の参入が挙げられます。

また、TikTokや快手など、SNS上でのライブ配信が可能になったことも成長を続ける理由です。

ライブコマースを支えるライバーと呼ばれる配信者の存在も大きく、トップライバーは1人で310億元(約5,270億円、1元=約17円で計算)を売り上げているというデータもあります。

トップライバーには多くのファンやフォロワーが存在し、集客手段の1つとしても活用されています。

ライブコマースプラットフォーム

ライブコマースプラットフォームを紹介します。プラットフォームを選ぶ際の注意点があります。それは、ライブ配信サービスが終了となる可能性があることです。

例えば、アメリカのMetaが提供する「Facebook live Shopping」や、Yahoo!ショッピングの「ショッピングLIVE」がサービスを終了しています。

こうした事態を避けるためには、市場シェアの高いサービスを選ぶことが重要です。

タオバオ

タオバオは、中国で最も利用されているECサイトです。2016年にライブコマースプラットフォームのタオバオライブを開設。タオバオのすごさがわかる成功事例を紹介します。

中国では、毎年11月11日に「ダブルイレブン」と呼ばれるECセールイベントが開催されます。アリババグループの発表によると、2021年に開催された天猫ダブルイレブン・ショッピングフェスティバルのGMV(流通総額)が、5,403億元(9兆1,851円、1元=約17円で計算)に達しました。

2022年のダブルイレブンでは、タオバオライブを視聴した消費者が事前イベント期間も含めて3億人以上にも達しています。

予約販売開始1時間のタオバオライブにおける再生回数は昨年同期と比較して600%も増加。新規顧客をプラットフォームに誘導できています。

62のライブコマースチャンネルにおいて1億元(17億円、1元=約17円で計算)超えの売上を記録し、632 のライブコマースチャンネルが1,000万元(約1.7億円)以上の売上を記録し、多くのチャンネルにとって効果的であることが証明されました。

ダブルイレブン以外の日にも、タオバオライブは活発に利用されています。タオバオライブにおける2021年の流通総額は、4,048億元(6兆8,816円、1元=約17円で計算) にも上りました。

参照:「【中国EC】「ライブコマース」「C2M」「私域を使った顧客管理」で大きく変わる中国マーケットの今とこれから」ネットショップ担当者フォーラム

SHOWROOM

SHOWROOMは、国内最大級のライブ配信アプリです。ライブコマースサービスも提供しており、SHOWROOMの配信を通じて商品の紹介や販売ができます。

SHOWROOMでは、ビックカメラやヤマト運輸などがユーザーとしてライブコマース開催。ビックカメラは、商品知識豊富な販売員の目線で商品を紹介しています。

ヤマト運輸は、新型コロナウイルスの影響を受けた全国の生産者や事業者をサポートするため、SHOWROOM内に特設ページを開設。

生産者や事業者自身にライバーとなってもらう取り組みをおこないました。ライブ配信中に購入された商品は、ヤマト運輸が購入者へお届けする仕組みです。

参照:「ヤマト運輸とSHOWROOMが連携 ライブコマースで生産者・事業者の販売を支援する取組を 5月12日(水)より全国でスタート」SHOWROOM株式会社

Instagram

Instagramは、写真や動画を共有するSNSですが、ライブコマースにも活用されています。アプリをダウンロード後、簡単な設定をするだけでライブ配信が可能です。

Instagramのライブショッピングでは、ライブ配信をしているときに商品をタグ付けできるため、視聴者はショッピング動画の商品の購入や保存ができます。

阪急阪神百貨店がInstagramも活用して、店頭とオンラインを融合させるOMO(オンライン・マージズ・ウィズ・オフライン)の取り組みを進めています。

阪神梅田本店では、日々の暮らしを豊かにするためのアイデアやヒントをお伝えする「ナビゲーター」と呼ばれる社員が、それぞれの伝えたいコンテンツをInstagramで発信。

コミュニケーションを積み重ねることで、ファンコミュニティーを作っています。

参照:「新卒採用情報トピック」株式会社阪急阪神百貨店

まとめ

ライブコマースについて解説してきました。本稿のポイントは以下の3点です。

  1. ライブコマースとは、ライブ配信とECを組み合わせた販売方法。インフルエンサーや店舗スタッフなどがプラットフォーム上で配信をおこないます。商品の魅力が伝わりやすく、双方向のコミュニケーションが可能で、オンライン上で実店舗に近い買い物体験ができます。
  2. 中国のライブコマース市場は急成長しており、2021年の中国におけるライブコマース市場は、前年比90%増の1兆9,950億元(約33兆9,150億円、1元=約17円で計算)に達する予想。一方、日本では、まだ規模が大きくないのが現状です。今後の成長が期待されます。
  3. 数多くのライブコマースプラットフォームが誕生。中国ではタオバオ、日本ではSHOWROOMが注目されています。InstagramやTikTokなどのSNS上でもライブコマースがおこなわれています。

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