コンバージョン(CV)とは、「購入」「会員登録」「申込」など、企業がマーケティング活動の目的としている顧客行動のことを指します。たとえば以下のような行動です。
・ECサイトでの商品購入
・Webからの資料ダウンロード
・広告からの申込
・アプリのインストール
マーケティング活動では、「CVを増やす」ことが重要で、具体的な数値目標を設定して、施策を展開します。
今回は、CVや関連用語の意味、基礎知識をあらためて確認し、後半ではCVを増やすための具体的な施策について紹介していきます。
コンバージョンとは何か、あらためて確認
コンバージョンとは購入や会員登録を指すと知っている人は多いと思いますが、正確な意味と重要性について確認します。
コンバージョンとは
英語のConversionの元の意味は、「変換」「転換」です。
マーケティング分野では省略してCVと表記されることが多く、その意味は、「一般ユーザーから、見込み客や顧客への転換」あるいは、「見込み客から顧客への転換」です。
CVとは、顧客のアクションが対象です。「購入ボタンを押した」「資料をダウンロードした」など、重要な顧客行動の数を測定します。
コンバージョンの具体例
具体的なCVの例として、以下があります。
CVの一例 | |
BtoC | ECサイトで商品やサービスを購入した カートに商品を追加した アプリをダウンロードした ECサイトやアプリで会員登録した SNSでフォローした |
BtoB | 資料をダウンロードした ウェビナー・イベントに申込みした 問い合わせした |
上記のように、CVはユーザーや顧客の「行動」をカウントします。ユーザーがWeb上でボタンを押すアクションを終えた時点でCVが計測されます。
CVの基準となる行動を促すことを、CTA(Call to Action)といいます。
CVR、CPC、CPAの意味と計算方法
CVと合わせて覚えておきたいCVR、CPAについても解説します。
CVR、CPC、CPAとは
CVとは、すでに述べたように、自社で設定する「購入件数」「会員登録件数」などの数値です。
CVRはConversion Rateの略で、施策対象となるユーザーや顧客のうち、CVに至ったユーザーの割合、つまりコンバージョン率です。
CPAは、Cost Per Actionの略で、CV1件あたりにかかった獲得単価の指標です。
また、合わせてCPCを考慮することもあります。CPC(Cost Per Click)は1クリックあたりの単価です。
これらの指標は、主に広告施策のCVを評価するときに使われます。
CV1件あたりの獲得単価であるCPAを下げるためは、CVRを上げるか、CPCを下げる必要があります。
CVR、CPC、CPAの計算方法
CVRの計算方法は以下です。
たとえば、Webサイトを訪問したユーザー数が200名、うち購入したユーザー数が5名であれば、
このときCVは5、CVRは2.5%です。
上記の数式で訪問ユーザー数を増やして分母を200から300へと増やすことができればCVが増えて売上がアップします。また、訪問ユーザー数が一定でもCVRをアップさせてCVと売上を増やすことが可能です。
メルマガでウェビナーの案内を送信した場合であれば、CVを「ウェビナー申込」、分母は「メルマガ配信数」としてCVRを算出します。
CPAの計算方法は以下です。
Costとは、CV獲得のためにかかった総費用で、広告費、コンテンツ制作費、デジタルツール使用料などが含まれます。人件費まで含めて計算することもあります。
CPA = Cost(マーケティング施策コスト) / CV
CVが増えて売上が上がったとしても、CPAが高すぎれば収益性が下がるので、望ましくありません。
施策の費用対効果を検証し、CPAを適正な程度に抑えつつCVRを向上させることが重要です。
また、CPAとCPC、CVRの関係性は以下となります。
CPA = CPC / CVR
広告施策でCPAを下げたい場合には、CPCを下げるために広告入札単価や総額を見直したり、CVRを上げるために広告のターゲットやクリエイティブを改善したりします。
コンバージョンとKPIの違いと関係性
コンバージョンはマーケティング活動に欠かせない重要な数値ですが、これと似た指標としてKPIがあります。
KPI(重要業績評価指標)とは、事業の目標達成度を知るための指標です。事業全体から各施策まで、さまざまなレベルでKPIが設定されます。
KPIとしてCVが設定されることもありますが、それ以外の指標がKPIとなることもあります。
マーケティング部門のKPIの例として、たとえば以下があります。
・資料ダウンロード数(CV)
・ウェビナーの申込者数(CV)
・広告のCVR(CVでない)
・商談数(CVでない)
・LTV(CVでない)
上記のように、KPIの数値として、CVが設定されることもあります。
一方で、CV数の目標達成のためにKPIが設定されることもあります。たとえば、CV=資料ダウンロード数を増やすために、WebサイトのPV数、UU数などのKPIを設定するような場合です。
KPIとCVの意味を理解して適切に使い分けましょう。
以下の記事ではKPIとは何か、運用方法などについて解説しています。
参考:KPIとは?基礎知識とKGI、KSF、OKRとのちがい、KPI設定と運用のコツを解説【Excelシート付き】
コンバージョンを計測するツール
CVを計測するツールとしては、無料で使用できるGA4(Google Analytics 4)が一般的です。
GA4は、Googleが提供するWebアクセス解析ツールです。
GA4ではWebサイト内のユーザーのさまざまな行動を計測することができます。
GA4では「購入」「資料ダウンロード」「登録」などをCVとして設定でき、計測結果をレポートで確認できます。
また、広告のCV計測には、Google広告であれば「Google Ads」を使用します。SNSへの広告配信では、それぞれのSNSが提供するサービスで計測ができます。
GA4については、以下の記事を参照してください。
参考:【企業向け】Googleアナリティクス(GA4)の使い方と設定方法、活用事例を解説
コンバージョンの具体例
CVとして設定されることが多い具体例と、詳細な計測をする場合に使い分けるCVの種類を解説します。
コンバージョンの具体例
Webサイトの機能や施策によりCVとして設定される内容は異なります。以下のような具体例があります。
メディア・施策 | CVに設定する具体例 |
ECサイト | 購入 |
ランディングページ(LP) | 購入、申込など(LPでアクションを促している内容による) |
企業サイト | 資料請求ダウンロード お問い合わせ、見積依頼、無料体験申込 |
オウンドメディア | メールマガジン登録、会員登録 |
広告 | 広告クリック経由での購入や会員登録、実店舗への来店 |
スマートフォンアプリ | ダウンロード、会員登録 |
SNS | 友達登録、投稿 |
人材採用サイト | 会員登録、採用エントリー |
CVは複数設定することもありますが、多すぎても管理の手間が増えて効率が悪いので、重要な内容を1~3つ程度選び、設定しましょう。
経路別CV
上記のようなCVをさらに細分化して分析することもよく行われます。
たとえば、「購入」であれば、以下のような経路ごとのCVを計測して、施策改善に役立てます。
・広告経由
・自然検索経由
・SNS経由
・メルマガ経由
・リファラル経由(他のブログや記事のリンク経由)
・既存顧客
さらにユーザーは、「広告を見たあとに自然検索してCV」のような行動をとることもあります。これについては次で解説します。
コンバージョンの種類
コンバージョンの種類について解説します。
総コンバージョンとユニークコンバージョン
総コンバージョンとは、すべてのコンバージョンをカウントした総数です。CVが商品購入であったとき、1人の顧客が3点の商品を購入すればCVは3となります。一方、ユニークコンバージョンは、1人の顧客が3点の購入をした場合のCVを1とするので、新規に獲得できた顧客数を知る目安となります。
一般的にCVといえば総コンバージョンのことを指しています。
ECサイトで総コンバージョンが高くユニークコンバージョンが低い場合はリピート購入やまとめ買いが多い状況、その逆である場合は品揃え不足の可能性があります。
直接コンバージョンと間接コンバージョン
直接コンバージョンとは、
「広告をクリック(タップ)→Webサイト訪問→購入」
「検索エンジンで検索→Webサイト訪問→購入」
のように、Webサイトを初訪問したときに離脱なくCVに至ることをいいます。
一方、間接コンバージョンとは、「Webサイト訪問」までは同じですが、その時点では閲覧のみで離脱し、後日再度Webサイトを訪れてCVに至ります。
直接CVとなることは少なく、多くの場合は間接CVの経過をたどります。間接CVを増やすためには、継続的なフォロー施策が必要となります。
クリックスルー・コンバージョンとビュースルーコンバージョン
クリックスルー・コンバージョン、ビュースルーコンバージョンは広告施策における2つのCVです。
クリックスルー・コンバージョンとは、ユーザーが広告をクリック(タップ)した後、CVに至ることです。上記で説明した直接CV、間接CVのどちらの場合もあります。
一方、ビュースルーコンバージョンはクリックすることなく、ユーザーが見ているブラウザに表示されたのみで、その後CVとなった場合です。広告をクリックするという行動がなくても一定の広告効果があることを示す指標です。
CVを増やすために重要な、マイクロコンバージョンとは
マイクロコンバージョンとは、CVまでに経由するWebページ上でのユーザー行動を細分化して、CVにはならなかったがCV目前で離脱してしまったユーザーの細かいアクションを測定することです。
たとえば、ECサイトの場合、以下の枠内のユーザー行動について、マイクロCVを設定します。
・マイクロCV1:カートへ追加
・マイクロCV2:購入フォームへの入力
・マイクロCV3:確認画面を表示
CVの手前のマイクロCV1~CV3に到達していたユーザーは、その時点では購入の意欲があったにもかかわらず、何らかの理由で購入完了しませんでした。
設定した3つのマイクロCVのうち、「マイクロCV2」での離脱率が高かった場合、購入フォームのページに入力のわかりづらさ、欲しい情報の不足などが生じている可能性があるため、「購入フォームページの改善」によりCVを増やすことができると推測ができます。
BtoBの資料請求ページ、ウェビナー申込ページでも同じように、マイクロコンバージョンの設定と解析、それに基づいた改善が有効です。
マイクロコンバージョンを設定してユーザーの行動を詳細に調査し、理解することで、離脱時点のユーザー行動を推測し、Webサイトの該当箇所を改善できます。
マイクロコンバージョンは、CVを増やすために重要な指標といえます。
CVを増やす手順
マーケティング活動ではCVを増やすことが重要です。
そのため、常にCVやCVRの数値をチェックして、目標に届かない場合には、原因を分析して施策を改善し続けていく必要があります。
CVを増やすための改善は、以下のような手順で進めます。
STEP1)CV、CVRの数値を分析して、課題を明確にする
CVやCVRの数値をGA4などで計測・分析することにより、今後に向けての課題が明らかになります。
CVやCVRに関する課題とは、たとえば以下のようなものです。
・CVの総数が足りない
・広告、メルマガ、ウェビナーなど、特定の施策でCVやCVRが低い
・従来通りのマーケティング施策を実施しているが、CVやCVRが前年比で下がっている
・コストをかけているのにCVやCVRが向上しない
ほかにも細かいものまで入れると多くの課題が見つかると思われます。そのなかで、これから取り上げる個別課題を決めます。
STEP2)仮説を立てる
CVやCVRが低いのには何か理由があります。たとえばECサイトの場合なら、以下のような仮説をたてます。
仮説: Webサイト訪問者数は増えているのに、商品購入に到達するCVRがあまり増えていない。 Webサイトをわかりやすく、購入しやすいよう改善する必要があるのではないか |
Webサイトでのユーザーの動きをくわしく知るには、マイクロコンバージョンの計測と分析が有効です。マイクロコンバージョンが下がる部分のWebページは改善が必要と考えられます。
分析したうえで、Webサイトの改善策として以下を挙げます。
改善策1 必要事項入力フォームのレイアウトや導線をわかりやすくする 改善策2 商品購入ページに顧客の不安を解消する説明を追加する |
STEP3)仮説の内容を「ABテスト」で検証する
仮説の検証はABテストで行うことが一般的です。仮説の内容を具体的な改善案に落とし込み、従来のパターンと改善したパターンをそれぞれA、Bとして、ABテストを行います。
上の例の場合だと、以下のようにABテストを2回行います。
ABテスト1 従来の入力フォームとわかりやすくした改善入力フォーム ABテスト2 従来の商品購入ページと説明を追加した商品購入ページ |
上記では2回のテストを行いますが、1回で両方を検証することも可能です。
母数が確保できれば、改善策1のAとB、改善策2のAとBを組み合わせた「1Aと2A、1Aと2B、1Bと2A、1Bと2B」の4パターンでテストします。
これを多変量解析といいます。
STEP4)結果をもとに施策を改善する
有意な結果が得られた場合は、改善レイアウトを採用してWebサイトを改善します。
もしA、Bに明確な差が表れなかった場合、仮説から組み立てなおして次のテストを行います。
CVを増やすためには、このような施策の改善を繰り返し継続的に行っていきます。
参考:ABテストとは?メリットやおすすめツール、具体的な事例を紹介!
このあと解説する事例のなかで、ABテストで実際に施策を改善し、CVやCVRを向上させた例も紹介します。
【事例紹介】CVを増やす具体策を紹介! シャノン検証済み15の改善アイデア
最後に、シャノンのマーケティングチームが実践してきたCVとCVRを向上させる施策を紹介します。
以下は、シャノンが実際に活用しているシートの一部で、資料請求というCVを増やすための施策をリストアップしています。実際にはもっと多くの改善策がありますが、主要なものを以下に紹介しています。
各アイデアは、ABテストで検証して有効性を明らかにしています。
実際の検証と改善の方法について、以下で事例を紹介します。
Webサイトのファーストビューに「資料請求」を設置してCVRアップ
以下は、現在のシャノンのWebサイトトップページ( https://www.shanon.co.jp/ )です。
ページの中央と右上の2か所に「資料請求」ボタンを設置しています。
このレイアウト案は、以下のABテストを経てWebサイトに反映されました。
『上司の指示を受けた担当者は、「まずは資料が欲しい」という考えでWebサイトを訪問し、効率よく資料を集めようとするのではないか』 という仮説のもとで実施したABテストです。
「資料請求ボタン」を最も目立つ位置に設置したA案は、「シャノンのMAを確認する」という文言のボタンを設置したB案より265%CVRが高いという結果が得られました。
テキスト表現の改善でメルマガのCVRを向上
メルマガのクリック率を上げるには、メールを読んでみようかと思わせられるよう、メールタイトルのテキスト表現を改善します。そこで、メルマガのタイトル文案についてABテストします。
成功推しか、失敗推しか
メルマガのタイトルでは「成功させる~」「失敗させない~」などの文言を使うことがありますが、どちらの方が読まれ、CVRが高いでしょうか。シャノンがテストした結果、クリック率はほぼ同じ、CVRであるウェビナー申込率は失敗推しのほうが高いという結果でした。
権威付けは必要?
メルマガのタイトルにダウンロード数などの具体的な数字を入れたほうがいいか? のテストです。
結果は、「特になし」のB案のCVRがA案の約3倍でした。
指摘型か、提案型か
A案が「指摘する」、B案が「提案する」という立ち位置のタイトルを比較しました。提案型のBのほうが申込率が高かったためB案を採用という結論になりました。ただし、指摘型のA案のほうがクリック率は120%高いという、相反する結果になりました。
今回ご紹介した事例を含む、ウェビナーアーカイブ動画3本を現在公開中です。
以下よりご覧いただけます。
※失敗しないリード獲得の実践方法
※【集まれメルマガ担当者】クリックされるBtoBメールタイトル検証会
※メルマガ担当者の「知りたい」を検証 | 1ヶ月間毎日メールを送ってわかったABテストの結果一挙公開
まとめ
本稿のポイントは以下です。
1. コンバージョン(CV)とはマーケティング施策が目的とする成果のことです。BtoCでは「購入」、BtoBでは「資料ダウンロード」「ウェビナー申込」などをCVに設定します。
2. CVRはコンバージョン率、CPAはCV1件あたりにかかったコストです。
3. CVの具体例として、以下が挙げられます。
-
- 購入
- 申込
- 資料請求ダウンロード
- お問い合わせ、見積依頼、無料体験申込
- メールマガジン登録、会員登録
- 広告クリック経由での購入、店舗への来店
- アプリダウンロード、会員登録
- SNSの友達登録、投稿
- 人材採用サイトでの登録、エントリー
4. コンバージョンの種類には、「総CV/ユニークCV」「直接CV/間接CV」「クリックスルーCV/ビュースルーCV」などがあります。
5. マイクロコンバージョンとは、CVにいたる直前の顧客行動をこまかく測定した数値です。購入完了ページや資料請求ページの改善に役立ちます。
6. CVとCVR改善の手順は、以下の通りです。
STEP1)CV、CVRの数値を分析して、課題を明確にする
STEP2)仮説を立てる
STEP3)仮説の内容を「ABテスト」で検証する
STEP4)結果をもとに施策を改善する
最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。
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