LTV、ライフタイムバリューとは、ある企業からひとりの顧客が生涯にわたって購入する総額のことです。

LTVを事業の重要指標とする企業が、BtoB、BtoCを問わず増えています。

LTVが指標とされる部門は一般的にはカスタマーサクセスですが、マーケティングや営業部門の業務でもLTVが重視され、なかには全社員にLTVへの意識づけを行う企業もあるようです。

LTVが重視されるようになったのにはどんな背景があるのでしょうか。また、LTV最大化のためには、どの部門が何をすればいいでしょうか。

今回はそれらを解説し、最後にシャノンの取り組みもご紹介します。

LTVとは?その重要性と算出方法

LTVの定義と注目されるようになった背景、LTVの計算方法について解説します。

LTV(ライフタイムバリュー)とはどんな概念?

「LTV」は、Life Time Valueの略で、日本語では顧客生涯価値と訳されます。企業の一顧客が生涯にわたって購入する総額 です。

LTVの考え方は1990年代にアメリカではじまったとされています。当初はBtoCの概念でした。そこには「市場シェアから個人シェアへ」というシフトがあります。

それぞれを車市場で例えると、
市場シェアは「日本の車市場のなかでA社は20%」 で、
個人シェアは「Xさんが生涯購入する車のなかで、A社の車は50%」 です。

買い替えの 際、次もXさんにA社の車を選んでもらうためには、継続的に顧客と向き合うコミュニケーションが必要です。

このような考えのもと、「OnetoOneマーケティング」が重視され、同じころ にCRM(顧客関係管理システム)も普及していきました。

CRMの最大の目的は、顧客一人一人との良好な関係を保ち、LTVを最大化することです。

その後LTVの考え方はBtoBでも有効と認識されます。

さらに、BtoBでこそLTVを戦略的に活用すべきという観点から「ABM(Account Based Marketing、アカウントベース ドマーケティング)」が生まれ、定着していきます。
参考:ABMとは?BtoBマーケティングに欠かせないABMをどう実現する?

BtoBでLTVが重視されるようになった背景

BtoBでLTVが重視されるようになった背景として、以下があります。

競争の激化と新規顧客獲得コストの上昇
市場が成熟して拡大しなくなると、限られたパイの奪い合いになります。
競争が激しい状態では、新規顧客獲得のため企業は多くの広告費やリソースを投入しなくてはなら ない上に、やっと獲得した顧客が競合他社に奪われることもあります。
多くの現場で、「新規顧客獲得のコスト>既存顧客をフォローするコスト」となって いる現状から、安定した経営のためにLTVが重視され るのです。

CRMなどデジタルツールの定着
LTVの最大化をはかるためには顧客とのOntoOneのコミュニケーションを効率よく実施・継続する必要があります。
そのためには、CRMに代表されるデジタルツールによる顧客データの管理・分析・活用が不可欠 です。

サブスクリプションの普及
BtoBのSaaS企業などでサブスクリプションサービスが拡大しています。
サブスクリプションを契約した顧客に解約されないためにはサービスを十分活用してもらう必要があり、そのため に顧客をフォローする「カスタマーサクセス」部門が生まれました。
カスタマーサクセスはLTV最大化をミッションとする業務です。

カスタマーサクセスについて詳しく知りたいかたは、こちらの記事をご覧ください。
参考:カスタマーサクセスとは?業務内容、導入のメリットについて解説!

ABMの普及
自社 のターゲット企業に注力するABMは、BtoBマーケティングの中でLTV最大化 を戦略的に取り組む手法のひとつといえます。
ABMで成果を上げるBtoB企業の事例が増え、BtoBにおけるLTV重視の考え方も定着してきています。

LTVの計算方法

LTVの計算方法はいくつかあります。その中で最もシンプルな のは、一顧客のLTVを求める以下の計算式です。

LTV = 購入単価 × 購入回数 × 契約期間

この式からわかることは、1回の購入単価が低くても、購入回数または契約期間の数値 を上げられれば、LTVは上がるということです。

LTV最大化のためには、リピート回数を増やしたり長期で契約を維持したりすることが重要です。

逆に、顧客の購入回数や契約期間の数値が下がる傾向があれば、早急な対策が必要といえます。

LTVは「生涯」という言葉が表すとおり、企業が最大限に長期的な視点で顧客と向き合う考え方です。

しかし算出するときは、データを比較検討するために期間を区切る必要があります。「年間LTV」のように期間を区切ってLTVを測定する方法が一般化しています。

企業の目線で顧客動向を知るためには、全顧客の平均値をもとに計算します。以下の計算式が最もよく使われます。

LTV = 平均購入単価 × 平均購入回数

売上ではなく粗利に着目する場合は以下となります。

LTV = 平均購入単価 × 平均購入回数 × 粗利率
LTV = (売上高 - 売上原価)/ 顧客数      など

一方、BtoB企業のサブスクリプションサービスにおけるLTV算出方法としては、以下が使われます。

LTV = 顧客の平均購入単価 × 平均顧客寿命

平均顧客寿命は以下で計算されます。

平均顧客寿命 = 1 / チャーンレート
チャーンレート = 当月の解約顧客数 / 前月末の顧客数 × 100

LTVとCAC(顧客獲得単価)の比率は3:1以上

LTVと合わせて知っておきたいのがCACです。CAC(Customer Acquisition Cost)は、顧客獲得単価と訳されます。

一顧客を獲得するためにどれだけコストがかかっているかの指標で、CACの計算式は以下です。

CAC = 顧客獲得コストの総額 / 獲得顧客数

顧客獲得コストには、マーケティング部門や営業部門で顧客獲得のためにかかった費用をすべて加算します。

CACとLTVのバランスをみる指標が以下です。このときのLTVは粗利で計算します。

LTV / CAC > 3

LTVがCACに対して3倍以上の数値であれば、事業は順調だといえます。

LTVが高ければ、新規事業の展開などで集中的なマーケティング施策に投資をすることも可能 です。

ただし分母が大きくなり、LTV/CAC比率は1に近づくので、この状態から早くもとの3に戻るよう努力する必要があります。

LTV向上のためのマーケティング施策とは

LTVを向上させることがなぜ必要か、そのため にはどんな施策があるかについて述べます。

LTV の向上がなぜ必要か

LTVを向上させて高い水準に保つことが、なぜ重要かを再度確認します。

経営の安定化
LTVが高いということは、顧客との良好な関係が維持されているということです。
現在の収益基盤が安定 するだけでなく、将来的にもある程度 続くことが期待できるので、経営の安定化に寄与します。

新規顧客獲得や新事業展開がしやすくなる
LTVが高く保たれていれば経費 を抑えられ ます。
その分、新しい事業の展開や 、新規 顧客獲得のためのマーケティングに投資 ができるので、経営の自由度が高いといえます。

ブランド価値が上がる
LTVが高いということは、企業や商品のファンが多いということであり、中にはよいお得意様を意味する「ロイヤルカスタマー」もいます。
商品開発によりさらに顧客が求めるものを提供することで、企業と顧客とのあいだにブランド価値を上げる相乗効果が生まれます。

参考:ロイヤルカスタマーとは?その定義と、MA連携でロイヤルカスタマーを増やす手法

カスタマーサクセスが担当する、LTV向上のための業務とは

LTV向上のための施策を担当するのはカスタマーサクセスです。「お客様担当」などと呼ばれていることもあります。カスタマーサクセスは以下のような業務で顧客をフォローして、LTV向上を図ります。

顧客の平均購入単価、購入回数を上げる
既存顧客のアップセル・クロスセル、リピート需要を増やすことでLTVが向上します。

導入時のオンボーディングなど、サービス活用の支援
顧客が商品やサービスを最大限に活用できるよう、技術的なサポートをしたり、企業ごとの個別課題を解決できる活用方法を提案したりします。

解約率を下げ、契約期間を長くする
サブスクリプションサービスにおいては顧客フォローにより解約率を下げ、長期で契約を維持することが有効です。

導入サポート、顧客への情報提供などを担当するカスタマーサクセスの目的は名前のとおり、顧客の成功です。

顧客の体験のことをCX(カスタマーエクスペリエンス)といい、CXを向上させることで、結果的にLTV向上を目指します。
参考:BtoBでも重視されるカスタマーエクスペリエンスとは?CX向上の具体策も紹介

また、カスタマーサクセス部門以外で判断するLTV向上のための施策として、以下があります。

価格を上げる/下げる
価格を上げることで短期的にLTVが上がりますが、「顧客離れ」の可能性もあります。
下げた場合は短期的にLTVが下がりますが、「顧客増加」 の可能性があります。
中長期的な視野でLTVが最大化することを考えて、価格を改定します。

新規顧客獲得のコストを下げ、顧客フォローへの投資を増やす
新規顧客の獲得と既存顧客のフォローはどちらも重要ですが、同じ額を販売するためのコストの割合が約5:1ということも知っておきましょう。
コストがかかる新規顧客獲得を停止して顧客フォローに注力する のも一つの方法ですが、既存顧客数はいずれ減少するので、新規顧客の獲得をゼロにはできません。
バランスの見極めが求められます。

他部門が連携するLTV向上のための施策とは

営業部門、インサイドセールス部門、マーケティング部門など、カスタマーサクセス以外の部門にもLTV最大化の意識を共有し、連携することが有効です。

他部門が連携するための施策 として、以下があります。

  • CRMとカスタマーサクセスによる既存顧客のフォロー
  • オンボーディング(新機能の導入)の支援
  • 利用が少ない顧客のフォロー
  • 顧客の課題に対して個別のソリューションを提供
  • アップセルやクロスセルのニーズを営業部門に連携

などを実施し、情報はCRMで管理します。
参考:顧客理解に欠かせないCRMとは?マーケティングにどう役立てる?

MAによる顧客行動のフォロー
広告やメールなどで施策を打ち、それに対して見込み客がどんな行動をとるかの履歴を 追います。
メルマガを開封したか、メルマガに記載のURLをクリックしたか、LPを訪れた後はどんなWebページを見たか。MAではこうした見込み客の行動履歴を 自動で取得・履歴化し、必要に応じて営業部門やカスタマーサクセス部門にアラートを共有することで売上とLTVに貢献します。

参考:MA(マーケティングオートメーション)のリード管理とSFAの案件管理。成果を最大化する連携とは

「顧客のファン化」のための特別な施策
ロイヤルカスタマーをはじめとするエンゲージメントの高い顧客 限定で「新システムの体験会」などの特別な案内をします。
また、顧客同士で交流をはかるイベントも好評です。

LTV向上の具体例は? 企業事例とシャノンの実践例

LTVが向上した企業の事例、シャノンの営業現場の実践例をご紹介します。

LTVを向上させた企業の事例

BtoB、BtoC、DtoCそれぞれのLTVを向上させた事例として以下があります。

■Sansan株式会社
名刺管理をキーに顧客管理を行うシステムのサブスクリプションサービス。
2012年に日本企業で初のカスタマーサクセス部門を設置し、解約率10%を目標とするとともに、同部署を「LTV最大化の要」と位置付けて強化してきました。
同社は2019年に東証マザーズ、2021年1月に東証一部へと上場して、コロナ禍でも成長を続けています。

■オイシックス・ラ・大地
食品宅配サービス「Oisix」の運営会社。同社では、全社員がLTVを意識しています。
手軽に健康的で見た目にも華やかな食事が作れるミールキットの宅配では、家庭内での成功体験をしてもらうことを重視し、常に新メニューを投入しています。
合わせて、おいしい牛乳や卵のサブスクリプションサービスなどを提供してLTVを向上させています。

■カゴメ株式会社
品質の高い野菜加工品の定期購入を促す通販部門。
購入後の感想を伺うフォローコールとフォローDMを実施することによりどちらも届かなかった顧客と比較して解約率に50%の差がありました。
また、委託していたコールセンター業務の改革により半年でLTVが28%増えた実績もあるそうです。
その後、顧客をファン化するプロジェクトを立ち上げて顧客フォロー。
LTV向上とロイヤルカスタマーの拡大を図っています。

■オルビス株式会社
化粧品通販のオルビスは2022年で創業35周年のDtoCですが、35年間前からの既存顧客が1000人以上いるそうです。
詳細なセグメンテーションや顧客側の視点に立ったリピート提案などで継続購入を促進してきました。
LINE公式アカウントの友達はなんと3,300万人。
ユーザーに合わせた情報の出し分けで今後もLTV向上施策を継続していきます。

カスタマーサクセス部門をメインに、マーケティングも協力。シャノンのLTV向上への取り組み

最後にシャノンがLTV向上のために行っていることをご紹介します。

シャノンではカスタマーサクセス部門 は「ツール活用のサポート」「各種の情報提供」「契約プランの最適化」 が担当の業務です。

お客様個別の困りごとをヒアリングし、活用すべき機能の提案や参考になる成功事例の紹介を行います。

既存顧客は新機能を知らないままということもあるので、新機能のアップデート情報を紹介し活用サポートをすることも欠かせません。

過去にはカスタマーサクセス実践1年で解約件数が7割減になった経験をWebで紹介されました。
参考:国産MAベンダーのシャノン、カスタマーサクセス実践1年で解約件数が7割減に

ユーザー交流会
「メールマーケティング成功/失敗事例情報交換会」など、テーマを決めてユーザー同士で情報交換・交流をしていただく機会を定期的に実施しています。
大規模なユーザーカンファレンスも年に1回開催しています。

新機能体験ワークショップ
特定の機能を活用できるよう、体験イベントを開催します。

MAツールで知ることができる顧客の行動履歴のなかで、注目すべき行動をキャッチした場合は、担当者にメールで自動通知できるようにしています。

  • 「解約ページを見た」…カスタマーサクセス部門に連携
  • 「プランや価格のページを見た」…カスタマーサクセス部門と営業部門に連携
  • 「失注顧客からのアクセスがあった」…営業部門に連携

このようなきめ細かい顧客フォローにより、関係部門全体でLTV向上を目指しています。

まとめ

本稿のポイントは以下の4点です。

  1. LTVとは顧客生涯価値、一顧客が生涯に企業から購入する総額のことです。LTVを事業の重要指標とする企業が増えています。
  2. LTVは平均購入単価×平均購入回数などで計算します。CAC(顧客獲得単価)と比較して、LTV/CACが3以上が望ましいとされています。
  3. LTV向上は経営の安定化や戦略の自由度拡大に寄与します。
  4. LTV向上を担当するのはカスタマーサクセス部門ですが、マーケティング部門でも既存顧客のフォローを行っています。

最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。以下にて豊富な機能をくわしくご紹介しております。
⇒製品資料と特典資料4点の無料ダウンロードはこちら