カスタマーサクセスは、その名の通り「顧客の成功」を実現する業務です。
カスタマーサクセスは、CRMの「顧客管理」よりも顧客に積極的にかかわります。2010年代以降に一般化した比較的新しい職種ですが、現代のビジネスモデルに欠かせない業務として、多くの企業で取り入れられています。
今回は、カスタマーサクセスとはどんな業務なのか、何をめざすのかを確認したあと、有効なMAとの連携について5つの具体例をご紹介します。
カスタマーサクセスは、顧客に継続的に関わり成功へと引き上げる
カスタマーサクセスとはどんな業務なのか、マーケティング部門およびその他の部署とどう連携するのかを、まず確認します。
カスタマーサクセスはBtoBのサブスクリプションから始まり、BtoCにも拡大
カスタマーサクセスの仕事は顧客が自社の商品/サービスを購入したときから始まります。主な業務は以下の通りです。
- 商品やサービスの初期設定の支援
- オンボーディング(基本機能を使えるようになる)を支援
- 利用状況をモニタリングし、利用が少ない顧客をフォロー
- 顧客の個別課題をヒアリングし、解決策を提供
- 顧客の要望をヒアリングし、開発部門に連携
- アップセル(追加購入)やクロスセル(他の商品/サービスの購入)のニーズを担当部門に連携
- ユーザー会などでユーザー間のコミュニケーションを促進
- 顧客に役立つ最新情報の提供
カスタマーサクセスのKPIとしては解約率がよく用いられます。
カスタマーサクセスは、顧客がある商材を十分に活用して満足している状態をめざすことはもちろんですが、そのことが顧客企業の成長に明確に貢献している状態をゴールとします。
このようなカスタマーサクセスの業務が重視されるようになった背景には、SaaSとサブスクリプションの浸透があります。
SaaS(Software as a Service)とは、クラウド上に作られたアプリケーションやサービスを、インターネットを通じて利用することをいいます。
有料サービスの場合は月額××円などの定額サービスとなり、これをサブスクリプションといいます。
たとえば企業が経理システムを導入するとき、かつては数万円の「会計ソフト」を購入し、インストールして使用していましたが、今は、クラウドで提供される月額2000円などのサービスを契約する型が一般的になりました。2000年以降から次第に一般化したこの型がサブスクリプションです。
サブスクリプションモデルは顧客にとって契約のハードルが低く購入しやすい一方、解約することも簡単です。
したがって企業の側は、顧客が提供するサービスを十分に活用し解約することがないよう、導入後のフォローに務める必要性が生じ、カスタマーサクセスという業務が生まれました。
今では、カスタマーサクセスはBtoBやサブスクリプション以外にも広がり、多くの企業で専任組織をおくようになってきています。
ネット上のサービスを中心にBtoCでもサブスクリプション型のサービスが増えています。
さらに定額サービス以外の業態、たとえば飲食店や小売業などでもカスタマーサクセスの重要性は増しています。
これらの業態の場合、「リピート購入」を重視し、「顧客の離脱」を防止するのがカスタマーサクセスの役割です。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスと似ていて、もっと古くからある業務に「カスタマーサポート」があります。違いを確認しておきましょう。
カスタマーサポート | カスタマーサクセス | |
目的 | 顧客の疑問・不満を解決 | 顧客の成功を支援 |
スタイル | 受動的(リアクティブ) | 能動的(プロアクティブ) |
顧客との接点 | メールや電話 | 対面を含む |
顧客フォロー | 断続的 | 継続的 |
KPI | 応答件数、クローズ件数など | 解約率、LTVなど |
カスタマーサポートも企業にとって重要な業務ですが、上記のように、カスタマーサクセスとは位置づけが違います。
カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせを起点にに対応するのに対し、カスタマーサクセスは、顧客の成功というゴールを意識して、継続的・能動的に顧客に関わり続ける業務です。
カスタマーサクセスがめざす、「顧客の成功」とはどんなこと?
カスタマーサクセス部門がめざす顧客の成功とは、具体的にはどんなものでしょうか。
カスタマーサクセスが目指すこと
1) CX(カスタマーエクスペリエンス)を向上させる
CX(Customer Experience)は顧客体験のことです。
ここでいう体験とは、商品/サービスを認知したときに始まり、営業担当者とのやりとり、契約・納品、購入後のサポートなど、すべての段階における体験が対象です。
しかし特に重要なのは、カスタマーサクセスが担当する「購入後のサポート」です。
購入した商品/サービスを導入・運用した結果、「コスト削減」「売上アップ」などの成果に結びつくと実感できたら、最も望ましいCXのひとつといえます。
このような価値あるCXを顧客が数多く蓄積できることを、カスタマーサクセスはめざします。
2)解約率(チャーン・レート)を下げる
解約率、チャーンレート(Churn Rate)はカスタマーサクセスが重視する指標です。
顧客が解約するときの理由はさまざまです。
「コストに見合う効果が得られなかった」
「担当者が忙しく、使いこなせなかった」
「不明点を問い合わせたときのサポートデスクの対応が不満だった」
このような企業の事情は、カスタマーサクセスが対応することで回避できた可能性があります。
顧客が解約を決断する前に、問題の発生をできるだけ早く察知してフォローすることが大切です。
定額サービスにおけるチャーンレートは、商品の販売においてはリピート購入がなくなる「顧客の離脱率」が同じ意味の指標です。
3)LTVを最大化させる
LTV(Life Time Value)は顧客生涯価値と訳され、一顧客が自社にとってどのくらいの利益をもたらすのかを長期的に計測した指標です。
高いコストをかけて新規顧客を獲得するよりも、既存顧客と長く取引を継続することを重視するべきという考え方です。
LTVを最大化するためには、アップセル・クロスセルを増やすことも重要です。
アップセルとはより高額な商品/サービスを販売すること、クロスセルは、自社の別の商品/サービスを販売することです。
4)多くのロイヤルカスタマーを創出する
ロイヤルカスタマーとは、自社の商品/サービスを大いに活用し、競合他社から購入する可能性が低い、「お得意様」あるいは「ファン」のような顧客のことをいいます。
顧客をロイヤルカスタマーへと引き上げるのもカスタマーサクセスの役割です。
※ロイヤルカスタマーについて詳しくは、「ロイヤルカスタマーとは?その定義と、MA連携でロイヤルカスタマーを増やす手法」で詳しくご紹介します。
マーケティングやセールス部門との、適切な分業と連携が重要
マーケティング部門でベストセラーになった「THE MODEL」(福田康隆著、2019年)では、営業活動における分業が重要と主張しています。
同書では、営業活動はマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスという4つの部門に分類し、それぞれのチームが専門スキルを高めて分業し、かつ緊密に連携するスタイルが現代に適していると述べています。
マーケティング部門のMAとカスタマーサクセスを連携する、5つの具体例
シャノンでは、カスタマーサクセスとマーケティングの連携を行っています。いくつかの実例を挙げてご紹介していきます。
マーケティングとカスタマーサクセスの適切な連携が有効
THE MODELでは4つの部門の分業と連携が示されました。
シャノンではさらに、カスタマーサクセスとマーケティングのデータ連携も重要と考えて実践しています。
マーケティングはコールドリードをホットリードへと引き上げる、カスタマーサクセスは顧客を成功へと引き上げる、という似たベクトルの目標を持ち、どちらの部門も1to1の継続的なコミュニケーションが重要なので、両部門にはナレッジの親和性もあるといえます。
MAとカスタマーサクセスで何を連携? 5つの具体例
MAで取得した情報のなかには、カスタマーサクセスにとって重要なものがあり、顧客の状況によってはスピーディーな対応が必須となるものもあります。
シャノンが実践しているデータ連携の具体例をご紹介します。
1) サポートページを見ている
営業担当やカスタマーサクセスに直接連絡はないものの、サポートページへのアクセスがあった場合は、仕様や操作方法などについて疑問が発生しています。
早めにカスタマーサクセスから連絡をとり、問題解決できたか、ほかに課題はないかなどを確認するべき事例です。
2) 解約に関連するページを見ている
最も素早く対応するべき「解約アラート」もMAで取得しカスタマーサクセスに連携できます。
前述したようにサブスクリプションサービスの場合は簡単に解約できるので、迅速な対応が求められます。
3) 違う商品/サービスの資料をダウンロードしている
顧客が契約中のサービス以外にも関心を示していると考えられます。
カスタマーサクセスが状況をヒアリングし、クロスセルの可能性がある場合は営業担当などにパスします。
4) ウェビナーへの申込があった
主に見込み客向けであるマーケティング部門主催のウェビナーに顧客がエントリーすることもあります。
情報を得たカスタマーサクセスは、顧客事情に合わせて個別にフォローします。アップセル・クロスセルへとつながる可能性もあります。
5)顧客企業の別の部署、別の社員からのコンタクトがあった
カスタマーサクセスがコミュニケーションをとっている顧客担当者とは別の人からの、LPへのアクセス・ウェビナー申込などがあり新規リードとしてMAに登録された場合です。
このときもアップセル・クロスセルの可能性が考えられるので、まずカスタマーサクセスが情報収集し、その後は適切な部門で担当します。
シャノンのMAでは、上記のうち1)~4)のようなデータを自動連携することができます。
5)の場合だけは一元化されていないデータなので、登録された企業名を確認して手動で連携しています。
まとめ
本稿のポイントは以下の3点です。
1. カスタマーサクセスとは「顧客の成功」を実現する業務で、サブスクリプション型サービスの解約を減らすために生まれました。今はサブスクリプション以外の業態でも重視され始めています。
2. カスタマーサクセスは、顧客が価値あるCXを積み重ねること、LTVを最大化することなどをめざして、能動的に顧客に関わります。
3. カスタマーサクセス業務にとって、MAが取得する情報の連携が有効です。