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インターネットを中心に古本の買取・販売事業を手がけるバリューブックス。古本と寄付を掛け合わせた「チャリボン」事業や、販売できなかった本を施設などに贈る「ブックギフトプロジェクト」などのプロジェクトを進行しつつ、2014年には長野県上田市に「NABO」という実店舗もオープンさせました。

多角的な事業を展開しているバリューブックスに注目したのは、本を集めるためにどのような仕組みを作っているのかが気になったから。どのようなマーケティング手法を取り入れているのでしょうか? 取締役の中村和義さん(右)とマーケティング担当の飯田光平さん(左)にお話を伺いました。

黎明期はチラシを使った地道なダイレクトマーケティングで成長

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ーー現在、仕入れ方法と販売方法ではどういう手段を取っているのでしょうか?

飯田:仕入れでいうと、お客様から本を送っていただき査定額をお支払いする「宅配買取サービス」と、古本を使った寄付サービス「チャリボン」の2つです。販売においては、Amazonと楽天、弊社の実店舗である「NABO」でも売っています。また、集まった本は販売以外の届け方もしていて、無償で本を施設などにお渡しする「ブックギフトプロジェクト」も行なっています。

中村:本屋や雑貨屋へ卸しも行なっています。将来的に「古本の取次」みたいなことができたらいいなぁ。

ーー年間、どれぐらいの冊数を取り扱われているのでしょうか?

中村弊社に届くのが1年間で900万冊。1日に届く量でいうと、2~3万冊が倉庫に届き、約1万冊が売れていきます。買取・販売ともに多くの方にご利用いただけています。

--「チャリボン」や「NABO」などは、どちらかというとバリューブックスのブランド力を高めるきっかけ作りなのかなと推測するのですが、どのような意図がありますか?

飯田:移動式の本屋「ブックバス」や、ブックカフェ「NABO」などの取り組みは収益に結びつきにくいのではと思われがちですが、単なるボランティア活動のつもりはなく、インバウンドマーケティングとしても考えています。もちろん、プロジェクト自体を価値ある取り組みとして続けることが重要だと考えています。しかし、すべて巡り巡って弊社の利益や、会社が継続して成長していくことに寄与すると見込んでいます。

中村:弊社は社長が高校の同級生たちとせどりから始めて成長してきた会社です。「せどりでの仕入れには限界があるね」ということで、個人からの宅配買取サービスをスタートさせました。今もそうですが、ダイレクトマーケティングを活用して、地道に成長してきました。

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ーーダイレクトマーケティングは具体的にはどういう形でやられていたのですか?

中村:「バリューブックスに本を売ってくれませんか」というチラシをネット通販等の発送物に同梱しています。リスティングも行いましたが、一番成長に寄与したのは同梱チラシですね。年々部数も増え、今も継続しています。チラシの反応率をいかに高めていくか。それがとても重要です。デザインをいろいろ変えたり、データを分析したりして、ノウハウを積み重ねてきました。

中古商材は仕入れが命。中古の場合はメーカーから直接仕入れることは少なく、個人や業者から集めないといけません。そこをいかにと伸ばしていけるか。

たとえば、以前はAmazonからの発送物に弊社のチラシを入れていました。Amazonは本を買う人が多くいるので、そこにチラシを入れることができたら、本を持つユーザーにダイレクトに届くはず。そこで、Amazonに提案したんです。創業当時はAmazonでチラシを同梱している業者はおらず、弊社が一番最初でした。

飯田:チラシは、テストし続けるのが大事です。なぜなら、どのようなチラシがお客様により反応してもらえるのかは、実際に出してみないと分からない。「このチラシいいじゃん」とか「このチラシはださいよね」と私たちが思っても、「ださいチラシ」の方が反応率が良かったりもするんです。数字を見ないと何とも言えないんですね。

かつ、例えばAというチラシの反応率が高くても、同じデザインが続くと人は慣れてしまう。それで、反応率が落ちてくることもあるんです。だから常に更新していく必要がある。「テストし、分析し、更新する」というサイクルをぐるぐる回していく必要があるので、「これで絶対大丈夫です」というチラシの決定版はできないのです。

ーーそのテストサイクルはどれぐらいの頻度で回しているのでしょうか?

飯田:現在は4種類ぐらいのチラシを同時に配布しています。内訳としては、その時点で一番反応率が高いチラシが8割、残りはテスト用に3種類の程度のチラシを入れています。そして、残りの3種類の中で、反応率が高いものが見つかったらそれをメインに据えていく。そのくりかえしですね。ウェブも同じです。チラシと同じように、バナー等もテストし続けながら最適なものを出していけるようにしています。

中村:別段珍しいことをしているわけではないんですよね。広告のクリエイティブは、意外にも科学できません。デザイン会社に格好良く作ってもらったチラシで反応率が悪いものもあるし、全然デザインの知識なんてない社員が作った整っていないチラシの反応率が良かったりして。

同梱チラシも、ウェブ広告も、始めたばかりの頃はうまくいかないもので、20パターン、30パターンと積み上げていかないと分からないことがたくさんあります。テストと集約をくりかえすしかありません。

飯田:扱う商材によって相性も変わります。弊社の場合、意外だったのは、有機野菜などが届く通販サイトへの同梱チラシの反応が良かったことです。高値で買い取れる本もよく届いたので、相性がいいなと感じました。

ただチラシにとっては、反応面の相性だけではダメで、チラシを撒ける数も重要です。そういう意味では、常時たくさんの人に発送できるAmazonや楽天をメインのプラットフォームとして使いたくなるんですよね。

「本を持っている人はどういう人だろう」と想像するのが大切だと感じています。

中村:その読みが外れることもありますよ。全然反応しないこともありますし(笑)

本を手放す選択肢に「寄付」という新たな提案をした

ーー「チャリボン」は一見CSRのように見えるのですが、実はマーケティング活動だったということですよね?

中村:そうですね。CSRではなく、ビジネスとして取り組んでおります。CSRというよりはCSV(Creating Shared Value)に近いです。本を集める手段の一つとして活動していますが、自分たちの本業の持つ力を生かすことで、社会問題の解決とビジネスをつなげていくような感覚です。

飯田:お客様は読み終わった本を使って寄付ができ、弊社には本が届き、団体の方々には寄付金が届く。参加者全員が喜ばしい仕組みでありたいと思っています。通常の買い取りだと、本を集める為に弊社が広報や広告を打ち出します。しかし、チャリボンの場合は、どちらかというとパートナーの団体さんが主体になって、チラシを撒いたり広報したりイベントをしたりして動いてくれている。買い取りとの大きな違いはそこですかね。

飯田:これは想像の話なんですが、部屋の掃除なんかをしていて、もともと売るつもりの本ではなかったけれど、捨てるか売るかどうしようかと考えた時に「本で寄付ができるのなら」という思いで送ってくださる方が一定数いるのかなと。送ってくれるお客さまへは、捨てる、売るとはまた違う、「捨てようと思っていた本で様々な団体を応援できる」という3つ目の道をご提案できているのだと感じます。

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価値ある活動を通じて「共感してもらうこと」

ーーその他のプロジェクトについても教えてください。

飯田:最近、「エコシステム」という取り組みを出版社4社と始めました。簡単に言うと、パートナーシップを組んだ4社の本が弊社から売れた時に、売り上げの33%を、その出版社にお渡しするという仕組みです。古本は基本的に、売れても出版社や作家にお金がいかない。だから、古本からも利益が作り手の方にいくようにしたいという思いがありました。

エコシステムの図

▲エコシステムは、古本の販売利益を出版社に還元する仕組み(出展:value books

正直に申し上げると、弊社では、毎日買い取れない本が大量に出てしまっています。それらは古紙回収に回しているのですが、毎日トラックに大量の本が積み込まれていく光景は、私たちも見ていて苦しい。この量を減らしたいという思いがあったんです。

もともと、いくつかの出版社に対して「ここが作る本は、よく買い取ることができているよね」という実感がありした。そこで、まずはリユース率、つまり「この本をどれぐらいの割合で買い取れるのか」指標をつくり、買取の状況を分析しました。そうすると、リユース率が90%以上、10冊中9冊以上を買い取れている出版社が何社かあることがわかったんです。そのうちの4社にお声がけし、パートナーシップを結ばせていただきました。

新刊だけでなく、中古市場からもきちんと利益が出る環境をつくれたら、本が必要以上に刷られなくてもよくなるかもしれません。とても長期的な話にはなりますが、こうした思いを持って取り組んでいます。

ーーそれらのプロジェクトの核となるものは何なのでしょうか?

中村:現在の弊社のミッションは、日本及び世界中の人々が本を自由に読み、学び、楽しむ環境を整えるというもの。そこに向けて、いろんな活動をやっています。

また、自分たちが持続可能でちゃんと成長していけるかどうかが一つのポイントにはなっています。例えば、NABOやブックバスは、街の人たちが本を手に取れる環境を作るということに紐付いているし、それらをやることによって、自分たちの会社をいろんな人にアプローチしたり、リンクさせたり、共感を抱いてもらえたりするんです。

価値ある活動を続けることによって、共感をしてもらえるかもしれません。「どうせ売るんだったらバリューブックスで売りたいね」と、「バリューブックスだったら自分が大切に集めてきた本をできるだけいい形に生かしてくれるのかな」と思ってもらえたらいいなと思っています。いわばコンテンツマーケティングのようなものですかね。

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飯田:共感に関していえば、昨年11月に買取額アップのキャンペーンを実施しました。今まで書き入れ時の毎年12月にキャンペーンをしていたんです。でも、昨年はかなり宅配や物流のパンクが社会的に話題になりましたよね。

なので弊社は、12月のキャンペーンをやめる代わりに、11月に前倒して実施したんです。年末はそもそも物流の繁忙期で、さらに負荷を与えてしまうのは好ましくないので11月にやりますと、きちんと理由も説明しました。単純に見ると掻き入れ時の12月にキャンペーンをやめてしまうのはもったいないように感じるのですが、私たちの思いに共感してくれる人もいるのではないんだろうか、と思ったんです。

そうすると、想像以上に多くのお客様から本をお送りいただけました。そして、キャンペーンをやらなかった12月もそこまで落ち込まずにすみました。一見非合理に見えますが、こちらのスタンスをしっかりと表現できたら、共感し応援してくれる方々がいると実感でき、とても心強く思いました。

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ーー今後の展望について教えてください。

中村:広告への依存度を下げて行きたいんですよね。広告費を減らしていくことができれば、お客様や世の中はもちろん、従業員にも還元できる。純粋に自分たちの価値を高めることによって、仕入れと販売をうまく回せる会社になっていきたいですね。

飯田:そうですね。矛盾するんだけれど、極力広告に頼らない姿になるために、広告を使ってテストをしているという側面もあります。広告のことをきちんと理解し、効率性を高めることによって、広告への依存度を下げられると思っています。

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