同じ予算で広告効果をあげる、アドフラウド(広告詐欺)対策とは

電通、インテグラル・アド・サイエンス社、Momentum社、電通デジタル、株式会社サイバー・コミュニケーションズらが参画する、日本におけるアドベリフィケーション問題の現状把握と具体的な対策の研究をする「アドベリフィケーション推進協議会」の調査レポート1によると、日本と主要各国のプログラマティック広告取引におけるアドフラウド(広告詐欺)の割合は9%前後となっています。

Webマーケティングに関わる予算が増えている昨今、アドフラウドは無視できない存在になってきています。今回、株式会社 Phybbit(フィビット)代表取締役 大月 聡子氏に、アドフラウドの現状と対策についてお話を伺いました。

ーーアドフラウドとは何か教えてください。

アドフラウドとは日本語で言うと広告詐欺です。代表的なものは、クリック数やアプリのインストール数を不正な水増しです。アドフラウドが標的にする広告はWebサイトとアプリです。今回はアプリを対象としたアドフラウドについてお話いたします。

まずスマホアプリの広告では、インストールを成果として課金する広告形態が多くあります。しかし実際にはインストールを偽る事でユーザーがインストールしていなくても広告売上を得られる場合があります。このように「何らかの抜け道を利用して実態のない宣伝実績を作ること」を広告詐欺と呼びます。

アドフラウドはさまざまな手法で行われている

同じ予算で広告効果をあげる、アドフラウド(広告詐欺)対策とは

ーーアドフラウドはどういう種類があるのでしょうか?

アドフラウドは、手動によるものと、プログラムで行われているものの二種類があります。

手動で行われるケースですと、スマートフォンを何百台も並べてアプリをインストールするインストールファームと呼ばれる手法があります。インストール後にアプリを起動し課金するといった手の込んだ事例もあります。これは人件費が安い海外で行われているケースが多いです。

システムで動いているものは、北米やロシアで開発されていることが多いと聞いています。 アドフラウドを行う事業者は世界中に存在しますが、国内に比べ海外の方が、あの手この手で考えられているアドフラウドが多いと感じています。

特に頭のいいアドフラウド事業社は、インターネット広告の仕組みを把握し利用しています。アドテクの仕組みとしては、広告効果計測ツール側が課金ポイントのデータを受け取った時点で「インストールされた」とみなし課金が行われますが、その仕組みを悪用し『オーガニック喰い』を起こしているアドフラウドも数多くあります。

例えば、マルウェアを仕込んだアプリ経由で端末やインストール情報を取得し、成果達成のタイミングで計測ツールにデータを差し込み成果を横取りするインストールハイジャックや、過去のデータを定期的に送りたまたまインストールした成果を刈り取るフローディングなど、手段は様々です。これは広告効果計測ツールが悪いわけではなく、アドフラウド事業者がその仕組をよく理解し、そのスキをうまくついてくるのです。この場合、オーガニックも普通の広告の結果も横取りされてしまい、ネットワークも被害者です。

国内で、『インターネットだけで30万円稼ごう』と銘打ったようなセミナーに非プログラマー系の人たちを集め、プログラムを提供しているケースもあるようです。セミナーに参加した方の中には、悪いことをしているという意識がなく、言われるがままアドフラウドを行っているケースもあるようです。

ーーアドフラウド対策の重要性について教えてください。

アドフラウド対策を行うことで広告効果が上がることが多いので、大事な広告予算を無駄にしないためにも、広告効果に疑問を感じたら「おかしいぞ」と考えることが対策の第1歩です。

私たちのクライアントさんの多くは、「広告効果を上げたい」という理由から、弊社のアドフラウド対策ツールをご利用いただいています。

もともとのきっかけは、毎月レポートを見ていて「このデータは何だろう?」と引っかかったことから、弊社にたどりついたようです。あるアプリでは、広告費の3割がアドフラウドということもありました。3割という数字は、インパクトが大きく見逃すことができません。

ある事例では、課金をしたユーザーが増えたのでマーケティング予算をそちらに寄せたところ、実は、その課金ユーザーすべてがアドフラウドだったということがありました。もちろん、アドフラウドのユーザーはすべて離脱してしまいました。広告予算が無駄になってしまったのです。

適切なアドフラウド対策なくしては、マーケティングの予算配分を誤りかねません。より効果的な広告出稿を狙ううえで、アドフラウど対策はとても重要な施策です。

マーケターは日頃から広告レポートを見て、不自然な数字の動きを察知し、「この広告レポートは本当に正しいのか?」と疑ってみる目を持ってください。

手間なく確実にアドフラウド対策を支援する「Spider AF」

ーーアドフラウド対策を考えていかなければいけない時代ですね。御社のアドフラウド対策ツール「SpiderAF(スパイダーエーエフ)」について詳しく教えてください。

SpiderAFは2016年夏にローンチしています。もともと、弊社は受託開発を行っている会社でしたが、広告ネットワーク事業者様のニーズに応えアドフラウド対策ツールを開発しました。良い効果を出せたため他の企業にも紹介したところ評判も良く、自社サービスとして開発するに至りました。現在、株式会社アイモバイル、株式会社Zucks、株式会社ファンコミュニケーションズをはじめ徐々に多くの企業と契約させていただいております。

SpiderAFは広告実績からアドフラウドを分析するツールです。広告実績の様々な面を可視化し、更にアドフラウドの可能性をスコアリングしてくれます。そのために、弊社では各種広告計測ツールのログを頂き、掲載されたサイトの監視・調査や弊社保有のブラックリストとの比較を含め、様々な分析を行っております。

上図はアプリケーションのインストール実績をサイトごとに分析している画面です。アドフラウドの可能性の高さに応じて判断材料となった部分が赤や黄色で表示されています。例えば上から2つ目の159インストールという箇所は全てデータセンター(サーバー)でダウンロードされたことがわかります。つまり、人間ではなくロボットがダウンロードしているのです。仮に1インストールの広告費を1000円とすると、 単純計算で159,000円の広告費が詐欺被害にあっていることになります。

他にも上から4行目の142インストールの箇所を確認してみましょう。この広告は国内のみで展開されていません。しかしアプリをダウンロードしたスマートフォンの大多数が国内販売されていない機種でした。さらに、インストールしたスマートフォンの言語を確認すると9割以上が日本語ではありません。

他にも「ユーザーが広告をクリックしてからアプリをインストールするまでの時間」も確認できます。この例ではほぼ全てが10秒以下となっています。通常、人がダウンロードする場合は30秒あっても足りません。これはシステムによるアドフラウドとしか考えられません。

ーーSpiderAFを利用すると、詐欺にあったことを明らかにすることができるのですね。事前にアドフラウドを防ぐことはできるのでしょうか。

Google や Yahoo! のアドネットワークは、配信先除外ができるので、そこに関しては IP とクッキーを配信先除外として、先んじて対応ができます。他のネットワークに関しては、配信先除外に指定することで、事前に配信除外をすることができます。

通常は、事業社が広告キャンペーンを実施する際に、ネットワーク事業者などにSpiderAFを使って計測することを事前に伝えます。広告キャンペーン後にアドフラウド被害にあったことが発覚した場合には、事業社や広告代理店がネットワーク事業者などに請求除外の交渉をすることで被害を減らしています。

ネットワーク事業者も被害を受けています。そのため、ネットワーク事業社は発覚後は不正を行った広告配信先に支払いを停止したり、配信先から除外したりなどの対応がなされているようです。結果としては「事前に配信除外している」と言えます。

アドフラウドの具体的な解決策を提示していきたい

同じ予算で広告効果をあげる、アドフラウド(広告詐欺)対策とは

ーーSpiderAFを広めるために、どのようなマーケティングを行っていらっしゃいますか?

SpiderAFのターゲットは広告主とネットワーク事業者ですが、現在一番効果が高いのはリアルの口コミで、二番目は純粋な取材です。現在、『アドフラウド』というキーワードで検索すると危険を煽るだけの内容の記事が多く、アドフラウドの解決策が具体的に提示されていない現状です。

そこで今後は、ブログなどを活用したインバウンドマーケティングを強化していきたいと考えています。イベントも積極的に実施し、使い方のご説明したり、弊社のクライアントに登壇してもらって使い勝手などをお話いただく、リアルの場を作っていきたいと考えています。

ーーこれまでに実施された施策のうち、うまくいったものや、失敗だと感じるものについて、教えてください。

以前、[PR]とついた取材記事を書いてもらったことがありますが、有料の記事広告より無料で取材いただいた記事の方が反響が高い傾向にあると感じています。とはいえ、まだツールの提供をはじめたばかりで、失敗をしたというほどのマーケティング施策を行っておらず、 マーケティング担当や PR 担当を採用できていないことが失敗かもしれません。

ーー今後、マーケティングをする上で大切にしていきたいことはありますか?

これまで「Spider AF」は、お客様の口コミによって多くの企業様にご利用いただいてきました。人におすすめしたくなるようなツール作りに励みたいです。マーケターの皆さんに対しては、広告効果を上げていただくために、アドフラウドの解決策を具体的に提供していくコミュニケーションをしていきたいと思っています。

最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。以下にて豊富な機能をくわしくご紹介しております。
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