
2014年の「MA元年」から11年以上。日本市場においてマーケティングオートメーション(MA)は広く認知され、多くの企業に導入されてきました。しかし、現場から聞こえてくるのは「MAを入れたが使いこなせていない」「結局、高いメール配信ツールになっている」という悲痛な声です。
なぜ、日本の多くの企業でMAの運用が止まってしまうのか? そして、今なぜシャノンは「MA2.0」という新しい概念を提示するのか?
2010年からシャノンに在籍し、営業・インサイドセールス・カスタマーサクセス・マーケティングといったすべての顧客接点部門、そして支社の立ち上げを経験してきた執行役員CMO兼グロース担当の浅野哲に、その真意とB2Bマーケティングの未来を聞きました。
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浅野哲 株式会社シャノン 執行役員CMO兼グロース担当
サン・マイクロシステムズ(現オラクル)、村田製作所等を経て2010年シャノン入社。サービス企画・カスタマーサクセス・西日本支社立ち上げを経て現職。営業・インサイドセールス・CS・マーケティングと、顧客に関わるすべての部門立ち上げを経験。2014年のMA黎明期から第一線にいる数少ない実務者として、MAの導入・活用からAI検索最適化(AIO)まで幅広い知見を持つ。MarkeZine Day登壇や年間50本近いウェビナーなどを通じ、現場で得た実践知を積極的に届けている。
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1. なぜ「MA1.0」は限界を迎えたのか?
浅野: 声を大にして言いたいのですが、使いこなせないのは企業のせいでも、現場の担当者のせいでもありません。MAという仕組み自体が、「専任マーケターしか運用できない時代の産物(MA1.0)」のまま進化していないことが最大の問題なんです。
浅野: 2014年に外資系MAが日本に本格上陸した際、「これさえ入れれば勝手にリードが育ち、商談になる」という夢が語られているケースが散見されていました。しかし現実は違います。複雑なシナリオを設計し、スコアリングを設定し、コンテンツを作り続け、データを分析する——。これを回し続けるには、高度なスキルを持つ専任のマーケターと、それを支える制作チームが不可欠でした。
しかし、日本の企業の99%以上は中小・中堅企業(SMB)です。そんな都合よく優秀な専任マーケターなんて存在しません。結果として、コンテンツを作り続ける事も叶わず、年間数百万円を払って「ただの一斉メール配信ツール」として使わざるを得ない現場が山ほど生まれました。これが「MA1.0」の限界です。
浅野: たしかに、コンテンツを作るコストは下がりました。コロナ禍前後でコンテンツ製作の外注が活発になり、今はAIによるコンテンツ製作の量産と内製化が実現できる時代です。しかし今度は、爆発的な情報過多によってメールの開封率は下がり、WEB広告のCPAは高騰し、インサイドセールスが電話をかけても「誰も電話に出ない」という事態が起きています。獲得しても、つぎの商談に繋がらない。でやきもきしている企業やマーケティング担当者は多いでしょう。
さらに、検索行動がGoogleからChatGPTやPerplexityなどのAI検索へとシフトする「AIO(AI検索最適化)」の時代が来ました。マーケティングの戦場自体が変わっているのに、古いMA1.0の運用の延長線上で戦おうとすること自体が無謀なんです。
2. MA2.0の定義:主役を「マーケター」から「現場」へ
浅野: 定義は極めてシンプルです。
これまでのMAは「マーケターがいること」を前提に作られていました。だからマーケターがいない会社、あるいは担当者が離職した瞬間にシステムが止まってしまった。
MA2.0は、その前提を根本からひっくり返します。 「マーケターがいないからMAが使えない」のではなく、「マーケターがいない会社だからこそ、MA2.0が必要なのだ」という発想の転換です。
浅野: 専任マーケターではなく、兼任の営業担当、kintoneなどのノーコードツールで業務改善をやっている総務担当、あるいは経営者自身がMAを動かす世界です。
- 複雑なシナリオ設計なんていらない。
- 一から原稿を書かなくても、AIが下書きを作る。
- kintoneやCRMに眠っている顧客データを使って、営業のフォローメールを一本送る。
「マーケティング」という大層な言葉で身構える必要はありません。「お客様への定期的な連絡」や「営業フォローの自動化」でいいんです。現場の人間が主役となり、当たり前に顧客接点を作り出せる状態。それこそがMA2.0です。
浅野: 非常に良い質問ですね(笑)
まず、既に実現できています。東京には多くのマーケティング従事者、これは支援会社も含めてですが存在しますがまだまだ地方の中小企業にはいません。でも、営業に付帯する販促活動の一環としてMAを導入しているケースは多いのです。問題は、「若手」や「少しマーケティングに関心のある」人に運用を押し付け、「一部の人しか操作しない、できない」という構図も頻繁に見かけます。それはMA2.0とは呼べず、(複数の)非マーケターが運用できる、平たく言うと誰でも気軽にMAを操作できる事を指します。これを実現するためには、AIによるナビゲーションと、わかりやすいUIが必須になってきます。
運用成果については今後益々あがっていく可能性は高いでしょうね。
浅野: 今までマーケターが企画、内製または外注していたコンテンツに関して、より一次情報が重要視されています。簡単に言うと、自社にしかない調査レポート、営業や技術の知見、ノウハウ、事例など。これは現場にしか存在しない情報ですので情報源がAIをつかって高速でコンテンツ化し、情報発信ができればこれに勝るものはないからです。
3. なぜ今、営業や技術といった「現場」が主役になるべきなのか
浅野: 2つの理由があります。1つは「分業の行き過ぎによる弊害」です。
会社にとって最も重要なのは売上であり利益です。受注があり、商談があり、その手前にリード獲得がある。にもかかわらず、例えば営業が「既存商談で忙しいから」と、自分たちの生命線であるリード獲得や商談化をすべてマーケター任せにするのは、組織として不健全だと思いませんか?
マーケターを「振れば商談が出てくる魔法使いや福の神」のように扱う構造から抜け出し、全社でマーケティングに取り組む必要があります。
浅野: 先ほど挙げた「一次情報の価値」が飛躍的に上がっているからです。
生成AIの登場によって、どこにでもあるような「一般的な解説記事」の価値は暴落しました。AIOの時代において顧客やAI検索に選ばれるのは、繰り返しになりますが、現場の営業や技術者が持っている「生々しい事例」や「泥臭い現場のノウハウ(一次情報)」です。
現場の人間しか持っていない一次情報を発信し、顧客と繋がる。だからこそ、現場の非マーケターが主役になる「MA2.0」でなければ、これからの時代は勝ち残れないんです。
4. MA3.0(AIエージェント時代)が来ても、人が主導権を握る理由
浅野: そこが最大の勘違いです。どれだけAIエージェントが進化しても、最終的な「意思決定」と「承認」を行うのはどこまでいっても人間です。
AIが出してきた提案に対して、「このメッセージは本当に自社の顧客に響くか?」「今、このタイミングで送るべきか?」を判断するのは現場の人間です。特に事例取材や顧客との交渉・調整といった泥臭いタスクをAIが自動でやってくれるわけではありません。ここでAIによる自動生成コンテンツに頼ってばかりいては、現行すでに起きているAIに取って代わられるコンテンツでしか運用をまわせなくなると成果は逓減してしまうでしょう。
浅野: もう1つ注目すべきは、AIエージェントは大きな可能性があると同時に、コストも注視していかなければいけません。よく言われる「業務効率」や「業務改善」は現在人の手をかけて実施しているものを削減するわけですが、特に中小企業において「人手が足りないから実施できていない」マーケティング業務を、AIエージェント活用だけでまわそうとした場合、コストは「純増」になることを考えると「割高」になることも十分考えられます。
浅野: その通りです。判断する人間側に「どう伝えれば顧客が動くのか」という知見やノウハウがなければ、AIが出した提案が良いのか悪いのかすら評価できません。
だからこそ今、MA2.0が必要です。非マーケターが自らMA2.0を運用し、社内に顧客接点の知見を溜めておく。この土台があって初めて、将来MA3.0が来た時にAIを真の相棒として使いこなすことができます。
MA2.0は単なる通過点ではなく、「AI時代に人が主導権を握り続けるための、判断力を養うトレーニング期間」なんです。
5. まとめ:マーケティングを、一部のプロからすべての現場へ
浅野: シャノン自身、プロダクトを「MA2.0」の世界観へ大きく進化させています。
シャノンMAは外部評価からもおかげさまで高い評価を得ています。(ITreview参照)従前の強みは「デジタル施策」と「アナログ施策」両方ができる唯一無二の製品として、主に中堅から大手企業でご利用頂く機会が多いのが特徴でした。今もデジタルマーケティングの効果が相対的に落ちつつあり、リアル接点の重要性が高まっていますので、デジアナマーケティングするならシャノンMAをご指定頂く事が多いのですが、加えて中小企業を中心とした「マーケーター不在」でも使いこなせるまさにMA2.0として選んで頂く事が増えてきました。
2026年1月に大幅リニューアルにより、直感的なUIで操作が苦にならず、不明点があってもAIによるナビゲーションで即座に解決ができる。まさに、現場の誰でも迷わず操作できる環境を整えています。また、kintoneと連携して、営業や総務の方が追客・フォローを完結できる「シャキーン」のようなソリューション展開もその一環です。
ツールに人を合わせるのではなく、現場の業務にツールを合わせる。そして「マーケターがいないから使えない」を「マーケターがいない会社でも、現場主導で商談が生まれる」に変えていくのが私たちの使命だと考えています。
浅野: 「マーケターがいないを言い訳にしない」これは私自身、2016年から支社立ち上げ時に直面した課題でもあり、当時の多くの地方企業が直面していた課題です。
「MAは難しい」や「うちに専任マーケターはいない」という課題はツールが解決します。一部のプロのものになっていたマーケティングを、すべての現場の手へ取り戻す。私たちが掲げる「MA2.0」によって多くの企業がより成果を上げられる事を期待しています。
(取材・文:シャノンブログ編集部)
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