
思い当たりませんか?
- MAを導入したのに、結局メール配信にしか使っていない
- 施策のたびにタグを作る作業が発生し、工数ばかりかかる
- 営業やインサイドセールスがMAの履歴データを見なくなった
- 担当者が変わったら、誰もタグの意味がわからなくなった
- 「MAって全然オートメーションじゃないよね」と言われたことがある
一つでも思い当たれば、この記事はそのための記事です。
「MAを導入したが、全然楽にならない」という声はよく聞きます。コンテンツ制作の工数がかかるから、という理由は確かにあります。ただ、それとは別の理由で「楽にならない」「使われなくなる」ケースが、実は多くあります。
「こういうものだ」と思っていませんか
MA業界に15年以上関わってきて、繰り返し目にする光景があります。
手間のかかる作業を真面目にこなしながら、「MAとはこういうものだ」と受け入れている担当者の姿です。正しい知識がなければ、問題があることに気づけません。
あるお客様から、こんな一言をいただきました。
「あぁ、MAね。全然オートメーションじゃないやつだろ?」
衝撃的でした。MAが「オートメーションではないもの」として認識されている。これは、MAというカテゴリ全体の問題ではありません。特定のMAツールの仕組みに起因する問題です。
MAが屍化する本当の原因
MAを導入してもメール配信にしか使われなくなる、いわゆる「MA屍」の状態に陥る企業に共通している原因があります。
それが、「手動タグ管理型」という仕組みです。
MAツールには、実は2種類の「タグ」があります。この違いを知らないまま導入すると、運用が重くなり、やがてMAは使われなくなります。
MAの「タグ」、2種類の違い
1. すべてのMAが使うタグ(Webトラッキングタグ)
MAツールを導入すると、基本的には自社のWebサイトに専用の「Webトラッキングタグ」を設置します。このタグによってブラウザのCookie情報を取得し、「いつ、どのページを閲覧したか」を記録します。さらに、ユーザーがフォーム入力やメールクリックなどのアクションを起こしたタイミングで個人情報と紐づき、「誰が」動いたのかまで可視化できるようになります。これがWebトラッキングの仕組みです。
このタグの設置は、HubSpot、Marketo Engage(Adobe)、Account Engagement(旧Pardot)といった外資系ツールから、シャノンを含む国産ツールに至るまで、Webサイト行動を追うMAツールであれば共通して必要なプロセスです。ここに差はありません。
2. 一部のMAだけが必要とするタグ(アクションタグ)
もう一つのタグは、顧客の行動を個人情報に紐づけるために手動で付与するラベルです。
たとえば、あるリードがメールを開封したとします。その「開封した」という事実を個人情報ページに紐づけるためには、あらかじめ「このメールを開封したら、このタグをつける」という設定を、配信前に行っておく必要があります。
これが「手動タグ管理型」です。外資系MAおよびシャノンを除く国産MAツールの多くが、この方式を採用しています。
設定を忘れると、メール画面では開封者がわかっても、個人情報には履歴が残りません。事後に補完することもできません。
なぜMAがメール配信専用ツールになるのか
手動タグ管理型のMAで運用を続けると、必然的な流れがあります。
第1段階:命名カオス
施策が増えるたびにタグを新しく作り続けた結果、タグが乱立します。
- 20260610メール配信開封
- 0610販促メールクリック
- 浅野メール配信開封
- 全件メール配信クリック
日付のみ、種別あり、担当者名あり——ルールが統一されないまま積み重なり、タグは数百件に達します。新しい担当者が加わったとき、最初の仕事が「タグの命名ルールを把握すること」になります。
仮に命名ルールを覚えたとしても、「このリードが何に関心を持っているのか」はタグからは見えてきません。「0610販促メール開封」という記録がわかることは、ある日あるメールを開封したという事実だけです。その人が何に興味を持っているのか、購買検討のどのフェーズにいるのかは、タグを眺めても判断できません。
第2段階:営業・インサイドセールスが履歴を見なくなる
MAを導入した目的の一つは「顧客の関心情報を営業・インサイドセールスに渡すこと」のはずです。
ところが、設定漏れのある配信の履歴は個人情報に紐づかないため、個人情報ページとメール画面の両方を確認しなければ全体像が見えなくなります。命名がカオス化したタグの一覧は、営業が実際に架電の材料として使えるものではありません。
結果として、営業・インサイドセールスはMAの履歴データを参照しなくなります。
第3段階:MAがメール配信専用ツールになる
履歴データが活用されなくなると、MAの存在意義はメール配信だけになります。施策の企画・分析に使うべき時間は、タグの整備作業に消えていきます。MAを導入した意味が、形骸化していきます。
「MA屍」と呼ばれる状態の多くは、このメカニズムで生まれます。
MAを使ったことがない方は「写真アルバムアプリ」で考える
「手動タグ管理型」と「自動履歴付与型」の違いは、MAの知識がなくても身近なもので説明できます。スマートフォンの写真アルバムアプリです。
Amazon Photos、iPhoneのフォト、Googleフォト——これらを使っている方はイメージしやすいと思います。撮りためた写真が、顔認識によって自動的に「この人の写真」「あの旅行の写真」と分類されていきます。撮るだけで整理される。
自動履歴付与型のMAは、これと同じです。顧客が行動を起こすたびに、自動で「この人の履歴」として記録・分類されていきます。事前に何かを設定しておく必要はありません。
一方、手動タグ管理型のMAは、写真を一枚撮るたびに「誰の写真か」「どのアルバムに入れるか」を自分で設定し続けなければならない状態です。撮る量が増えるほど作業量も増え、ラベルの貼り忘れや命名のばらつきが生まれる。
「超楽」か「超めんどくさい」か——MA導入を検討していなくても、この差は直感的に理解できるのではないでしょうか。
自動履歴付与型との違い
外資系MAおよびシャノンMAは「自動履歴付与型」です。
顧客がメールを開封すれば、その履歴は自動的に個人情報に紐づきます。Webページを訪問すれば、そのアクセス履歴が時系列で蓄積されます。事前のタグ設定は不要であり、設定漏れという概念もありません。
履歴は「メール」「キャンペーン」「Web来訪」「ウェビナー」といったカテゴリごとに整理されて蓄積されるため、データが増えても視認性が落ちません。営業・インサイドセールスは、顧客ページを開けば行動ストーリーが時系列で確認できます。
| 比較項目 | 手動タグ管理型 | 自動履歴付与型 |
|---|---|---|
| 履歴付与の方法 | アクションごとに事前設定が必要 | 自動で時系列に蓄積 |
| 設定漏れのリスク | 高い(後から補完不可) | 発生しない |
| 履歴の視認性 | タグが増えるほど低下 | カテゴリ整理で維持される |
| 営業・インサイドへの情報連携 | 断片的(タグの有無のみ) | 顧客の行動ストーリーとして参照可能 |
| 担当者交代時の引き継ぎ | タグの命名ルール・定義の把握が必要 | 履歴データをそのまま引き継げる |
「自動でそんなことができるのか」と驚かれることがありますが、自動履歴付与型のMAであれば当然の仕様です。驚かれること自体が、手動タグ管理型の環境がいかに「こういうものだ」と受け入れられているかを示しています。
自社のMAを確認するセルフチェック
現在使っているMAについて確認してみてください。
- メール配信前に、開封・クリックを記録するための設定が別途必要だと言われた
- 個人情報ページに、メール開封の履歴が自動では表示されない
- 施策ごとにタグを新しく作成している
- 担当者が変わったとき、タグのルールを最初から説明しなければならなかった
- 「この人の最近の動き」を把握するために、複数の画面を確認している
1つでも当てはまれば、手動タグ管理型のMAを使っている可能性があります。
よくある質問
まとめ
MAがメール配信にしか使われなくなる「MA屍」の状態は、担当者のスキルや意欲の問題ではなく、手動タグ管理というアーキテクチャの問題である場合がほとんどです。
命名がカオスになり、営業が履歴を使わなくなり、MAの存在意義がメール配信だけになっていく——このメカニズムを知ることが、同じ失敗を繰り返さないための第一歩です。
自動履歴付与型のMAに切り替えることで、タグの設計・付与・管理という作業から解放されます。その時間を施策の企画と改善に充てられる状態が、MAを本来の目的で使いこなすための土台になります。




