企業の成長に不可欠なマーケティングとセールス(営業)。これらの言葉はよく耳にしますが、それぞれの役割の違いや関係性を明確に説明するのは難しいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に近年、BtoBの領域を中心に、マーケティング部門に加え、インサイドセールスやフィールドセールスといった専門チームが連携して顧客獲得を目指す体制が一般的になりつつあります。

本記事では、マーケティングとセールス(インサイドセールス、フィールドセールスを含む)の基本的な違いから、各部門がどのように関わり合い、効果的に連携していくための具体的な方法まで、分かりやすく解説します。

マーケティングとセールスの違い

マーケティングとセールスは、どちらも企業の売上向上という共通の目標を持ちながらも、その役割とアプローチには明確な違いがあります。

項目

マーケティング

営業

インサイドセールス

フィールドセールス

主な役割 売れる仕組みを作ること、見込み客を創出し初期育成すること 見込み客のさらなる育成、評価、案件化、アポイント獲得 見込み客や既存顧客と直接対面し、商談、契約・受注を獲得すること
主な対象 市場全体、不特定多数の潜在顧客 マーケティングが創出した見込み客、比較的検討初期の顧客 インサイドセールスが創出した案件、既存顧客
主な目的 潜在顧客のニーズ発掘、認知拡大、ブランディング、効率的なリード獲得・育成プロセスの設計、データ分析に基づく顧客理解と施策改善 見込み客の課題や関心度・購買意欲の見極め、商談機会の創出、フィールドセールスへの質の高い情報連携 案件の成約(受注獲得)、顧客満足度の向上、アップセル・クロスセル
主なアプローチ Web広告、コンテンツ配信、SEO、イベント開催など、広範囲・間接的なアプローチ 電話、メール、Web会議、SNSなど、非対面での個別・直接的なアプローチ 訪問、対面での商談、デモンストレーションなど、直接的・対面でのアプローチ
実施タイミング 顧客の認知・興味関心段階~情報収集段階 顧客の情報収集段階~比較検討段階、案件化初期 顧客の比較検討段階~評価・選定段階~購買決定段階

簡単にまとめると、以下のようになります。

  • マーケティング: 「売れる仕組み」を構築し、見込み客を集めて興味・関心を育成する活動。
  • インサイドセールス: マーケティングが創出した見込み客に対し、非対面でさらに育成し、質の高い商談機会を創出する活動。
  • フィールドセールス: インサイドセールスが創出した商談機会や既存顧客に対し、主に対面で最終的なアプローチを行い、成約に結びつける活動。

特にマーケティングにおける「リードナーチャリング(見込み客育成)」は重要です。獲得した見込み客に対して、メールマガジン、セミナー、お役立ち資料の提供などを通じて継続的に情報提供を行い、徐々に購買意欲を高めていくプロセスを指します。このプロセスを経ることで、セールス担当者はより質の高い、つまり「ホットな」見込み客に対して効率的にアプローチできるようになり、成約率の向上が期待できます。

マーケティングとセールスの関係性

マーケティングとセールス(インサイドセールス、フィールドセールスを含む)は、それぞれ異なる役割を担いながらも、企業の売上目標を達成するためには密接に連携する必要がある、まさに「二人三脚」のような関係です。

マーケティング部門が市場のニーズを的確に捉え、魅力的な商品やサービスを開発し、効果的なプロモーションで見込み客を集めます。そして、その見込み客情報をセールス部門(多くの場合、まずインサイドセールス)に引き継ぎ、インサイドセールスが案件化し、フィールドセールスが個別の顧客に対して最適な提案を行い、契約へと導きます。この一連の営業プロセス全体を俯瞰し、各部門がスムーズに連携できるよう最適化していく視点が極めて重要です。

この流れがスムーズに連携することで、以下のような相乗効果が生まれます。

  • 機会損失の削減:
    マーケティングが集客し育成した見込み客を、インサイドセールスが的確にフォローし案件化し、セールスがその機会を確実に捉えることで、貴重な販売機会の逸失を防ぎます。
  • 営業効率の向上:
    マーケティングによって育成された見込み客(MQL:Marketing Qualified Lead、マーケティング活動によって創出された質の高いリード)は、商品やサービスへの関心度が高まっています。これをインサイドセールスがさらに精査・育成し、有望な商談(SAL:Sales Accepted Lead や SQL:Sales Qualified Lead)へと転換させることで、フィールドセールスはより効率的に質の高い商談を進めることができます。
  • 顧客満足度の向上:
    マーケティングからセールスまで一貫したメッセージを発信し、顧客のニーズや状況に寄り添った丁寧な対応をすることで、顧客満足度が高まります。
  • LTV(顧客生涯価値)の最大化:
    良好な顧客関係を構築することで、長期的な取引へと繋がり、LTVの向上が期待できます。失注した顧客に対しても、マーケティング部門やインサイドセールスが再度ナーチャリングを行うことで、将来的な再アプローチの機会を創出できます。

このように、マーケティングとセールスは互いに補完し合い、連携することで企業の売上向上を支える重要な役割を担っています。

 

セールスとマーケティングの連携がむずかしい理由

マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスは、それぞれ専門性を持ちながら企業の成長に貢献する重要な部門です。しかし、その専門性の高さや役割の違いから、連携がスムーズに進まず、かえって非効率を生んでしまうケースも少なくありません。なぜ連携は難しいのでしょうか。その主な理由として、以下の点が挙げられます。

目的(KGI・KPI)と評価指標の違いによる認識のズレ

マーケティング部門は、中長期的な視点でリード(見込み客)の獲得数や質、ウェブサイトへのトラフィック、ブランド認知度向上などを主なKPIとすることが一般的です。
一方、インサイドセールス部門は、マーケティングから引き継いだリードに対して、より短期~中期的な視点でアポイント獲得数、有効商談化数(SAL/SQL数)、あるいは小型案件の受注数などを追求します。
そして、フィールドセールス部門は、短期的な売上目標達成や成約率といった、目の前の商談成果を最重要KPIとします。

 このように、各部門が追う目標や評価される指標が異なるため、「マーケティングは数を追うばかりでリードの質が低い」「インサイドセールスのアポイントの質にばらつきがある」「フィールドセールスは獲得したリードを十分にフォローしてくれない」といった部門間の不満や責任の押し付け合いが生じやすくなります。

 

対象とする顧客フェーズと時間軸の違いによる優先順序の衝突

マーケティングは、顧客の認知・興味関心といった初期段階から関わり、時間をかけて育成する視点を持っています。
インサイドセールスは、ある程度興味を示した顧客に対して、適切なタイミングでアプローチし、関係を構築していきます。
対してフィールドセールスは、「今すぐ客」や具体的な検討段階にある顧客への対応を優先しがちです。
この時間軸や対象顧客フェーズの違いから、マーケティング施策の成果が短期的にセールスに結びつかないことへの不満や、逆にセールス現場で感じる短期的な顧客ニーズの変化がマーケティング戦略に反映されにくい、といった問題が起こり得ます。

 

役割とプロセスの違いによる相互理解の不足

各部門はそれぞれ異なる専門知識、スキル、業務プロセスを有しています。
マーケティングの分析手法やコンテンツ作成の意図、インサイドセールスのヒアリング技術や非対面コミュニケーションの難しさ、フィールドセールスの対面交渉術やクロージングのプレッシャーなど、互いの業務の詳細や困難さを十分に理解していないと、連携の必要性を感じつつも具体的な協力体制を築きにくい状況に陥ります。

情報共有の壁とサイロ化

上記の目的、時間軸、役割の違いなどが複合的に絡み合い、各部門が持つ重要な顧客情報や市場に関する知見、活動データなどが部門内で留まってしまう「サイロ化」が起こりがちです。
MA(マーケティングオートメーション)、SFA(営業支援システム)、CRM(顧客関係管理)といったツールを導入していても、入力ルールが徹底されていなかったり、部門間の連携を前提とした設計・運用がなされていなかったりすると、情報は分断されたままになります。これにより、顧客に対して一貫性のないアプローチをしてしまったり、同じような情報を何度もヒアリングしてしまったりするリスクが生じます。

これらの「違い」が、部門間の壁となり、効果的な連携を阻害する要因となっているのです。

セールスとマーケティングが連携するには

連携の難しさを乗り越え、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスが一体となって成果を最大化するためには、意識的な取り組みと仕組みづくりが不可欠です。具体的には、以下の点が重要になります。

共通の目標(KGI)を設定し、連携KPIで成果を可視化する

部門ごとのKPIだけでなく、企業全体の最終目標である売上や収益(KGI)を全部門で共有します。その上で、KGI達成に向けた各部門の貢献を測る「連携KPI」を設定することが有効です。
例えば、
「マーケティング由来のリードからの最終受注率」、
「リード獲得から受注までの平均期間」、
「インサイドセールスが創出した商談からの受注額」
などを共通の指標として追うことで、部門間の協力体制を促し、同じ方向を向いて活動できるようになります。

ターゲット顧客像(ペルソナ)とカスタマージャーニーを共同で設計・共有する

どのような顧客をターゲットとするのか(ペルソナ)、その顧客が製品やサービスを認知し、興味を持ち、比較検討を経て購買し、最終的に優良顧客となるまでの道のり(カスタマージャーニーマップ)を、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスが共同で作成し、常に最新の状態にアップデートして共有します。これにより、各部門がどの段階の顧客に、どのような情報やアプローチを提供すべきかの認識が一致し、一貫性のある質の高い顧客体験を提供できます。

部門間合意をし、役割と責任を明確化する

各部門間で、リードの定義(MQL、SAL、SQLなど)、リードの引き渡し基準(例:スコアリングの閾値、BANT条件の充足度)、引き渡し後の対応期限、フィードバックのルールなどを具体的に定めた部門間合意を締結します。これにより、「マーケティングはいつまでにどのような質のリードをインサイドセールスに渡すのか」
「インサイドセールスは受け取ったリードに何時間以内にアクションし、どのような情報を付加してフィールドセールスに繋ぐのか」
といった役割と責任が明確になり、スムーズな連携が期待できます。

  1. 定期的な情報共有ミーティングと双方向のフィードバック体制を構築する:


    MAやSFA/CRMといったツールを活用したリアルタイムな情報共有はもちろんのこと、定期的なミーティング(週次、月次、四半期ごとなど)を開催し、各部門の活動状況、KPI進捗、成功事例、失敗事例、顧客からの重要なフィードバック、市場の動向などをオープンに共有し議論する場を設けます。
    特に、インサイドセールスやフィールドセールスが顧客との最前線で得た「生の声」は、マーケティング戦略やコンテンツ改善の貴重なヒントとなります。
    逆に、マーケティングが発信するメッセージの意図や背景をセールス部門が深く理解することも重要です。

  2. 相互理解とリスペクトの文化を醸成する:

    各部門のメンバーがお互いの業務内容、目標、抱える課題を理解し、尊重し合う文化を育むことが連携の基盤となります。
    ジョブシャドウイング(他部門の業務体験)、合同研修、部門横断プロジェクトの推進、社内SNSやチャットツールでの気軽なコミュニケーションなども、相互理解を深める上で有効です。

     

  3. 経営層の強いリーダーシップとコミットメント:

    部門間の連携強化は、時に組織構造や評価制度の見直しを伴うこともあります。経営層が部門最適ではなく全体最適の視点から連携の重要性を強く訴え、必要な投資や環境整備を主導し、部門間の壁を取り除くためのトップダウンの働きかけを行うことが、連携を成功に導く上で不可欠です。

     

  4. データの一元管理と共有を促進するシステム基盤の整備:

    部門間のデータサイロ化は、効果的な連携を阻害する大きな要因です。各部門が、顧客のあらゆる情報をリアルタイムで網羅的に共有するためには、データの一元管理とスムーズなアクセスを実現する共通のシステム基盤が不可欠となります。

    MA(マーケティングオートメーション)、SFA(営業支援システム)、CRM(顧客関係管理)といったツールが連携、あるいは統合されたプラットフォームを活用することで、マーケティング施策の反応からインサイドセールスによるアプローチ状況、フィールドセールスの商談進捗に至るまで、一連の顧客情報を一元的に把握し、部門間で遅滞なく共有できます。
    これにより、顧客への対応漏れや重複アプローチを防ぎ、よりパーソナライズされたコミュニケーションが可能になるだけでなく、データに基づいた正確な効果測定や戦略改善、ひいてはLTV(顧客生涯価値)の最大化にも大きく貢献します。

これらの施策を通じて、各部門がそれぞれの専門性を最大限に発揮しつつ、共通の目標に向かって効果的に協働する体制を構築することが、企業の持続的な成長に繋がります。

そして、本記事で解説してきたようなマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの理想的なデータ連携と協働体制を、よりスムーズに、そして効果的に実現していくためには、それを支えるITツールの選定が大切なポイントの一つと言えるでしょう。

特に、部門間の垣根を越えたシームレスな情報共有や、円滑なプロセス連携を目指すのであれば、必要な機能が一つにまとまった統合プラットフォームをおすすめします。

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『シャノンマーケティングプラットフォーム』は、MA(マーケティングオートメーション)、SFA(営業支援システム)の主要機能を一つの環境に統合し、リード獲得から育成、案件化、商談管理、そして受注後の顧客管理に至るまで、あらゆる顧客接点における情報を一元的に管理。これをリアルタイムで部門間に共有することが可能です。

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まとめ

本記事では、マーケティングとセールスの違い、関係性、そして効果的な連携方法について、具体的なツールの活用やプロセスの整備にも触れながら解説しました。

  • 違い: マーケティングは「売れる仕組み作り」と「見込み客の育成」、セールスは育成された見込み客への「直接的なアプローチと成約」。
  • 関係性: 企業の売上目標達成に不可欠な「二人三脚」であり、相互に情報をフィードバックし合うことで進化する関係。
  • 連携方法: 「情報共有の徹底とMA・SFA/CRMなどのツールの活用」「共通の目標とKPI設定・効果測定」「部門間コミュニケーションの活性化と明確な連携プロセスの確立」が鍵。

現代の複雑化し、変化の速いビジネス環境において、マーケティングとセールス(インサイドセールス、フィールドセールスを含む各営業部門)が、収集されたデータを活用し、データドリブンな意思決定を行いながら高度に連携することの重要性は、ますます高まっています。

そしてこの連携を実りあるものにするためには、各部門がそれぞれの専門性を深く尊重し合い、互いに対等なパートナーとして、それぞれの知見や情報を積極的に共有することが不可欠です。
どちらかの部門が主導するというよりは、フラットな関係性のもとで共通の目標に向かって知恵を出し合い、協働体制を築くことが、これまで以上に求められています。

常に顧客中心の視点を持ち、各部門が一丸となって取り組むことで、企業は競争優位性を確立し、持続的な成長を実現できるでしょう。

 

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