池田金属工業株式会社

浪速の老舗ねじ商社が挑む”ゆるまない”DX推進


経営管理部 情報チーム 課長 青草秀行氏(写真:右)
マーケティング部 販促チーム 水鳥佐保氏(写真:左)
代表取締役 COO 武井宏樹氏(写真:中央)

創業より大阪に拠点を置く今年で72期目を迎える老舗企業、池田金属工業。

ねじの卸売業として流通だけでなく、ねじに関する高い技術力に定評のある同社はコロナ禍に苦しむ2020年に「SHANON MARKETING PLATFORM」(以下SMP)を導入。

70年の歴史でも未曽有の事態の中、DX推進の皮切りにSMPを選んだ背景、また多くの中小企業が抱える「小さく始めて全社的な取り組み化」を実現する秘訣を聞いた。

Point

  • 未曽有の事態の中、SFAよりMAを導入した背景とは
  • シャノン選定の理由は〇〇
  • DX成功のカギは「現場主体」と寄り添う姿勢

コロナ禍で状況が一変。難局を乗り越えるため改革への挑戦が始まる。

「ねじで世界をよりよく変える。」を使命に、ねじにまつわる顧客の課題解決を行っている同社に、武井氏が代表取締役社長に就任したのは昨年2月。

老舗ながら様々な改革を行っているが、ビジネスの本懐は変わらない。

「ねじのトラブルは頻繁に起きているものの、トラブル自体に気づいていなかったり、解決方法を知らない場合も多い。そもそも我々のような専門家がいる事すら知らない企業もいる。私たちはねじに付帯する様々な潜在している課題や改善点を顕在化し、いかにお客様の役に立てるかを考えて活動している」と武井氏は語る。

圧倒的な技術力が強みの同社は、コロナ禍以前は展示会への出展やセミナーを開催する事で新しいお客様と接点を持ち、メール配信を行うことで十分なマーケティング活動ができていると考えていた。

「兼務が故に実施タイミングが定まらず、属人化する。十分なリソースが足りない中小企業には避けられない課題だ。」と青草氏は振り返る。

「以前使っていたツールの場合、メール配信のリスト作成だけでもデータ抽出に時間がかかっており、日常業務の繁忙期と重なると後回しになる、まさに属人化に拍車がかかる状態だった。」(青草氏)

状況が一変したのはコロナ禍による展示会の中止、対面セミナー自粛・縮小が続いた事だ。

顧客との接点が取れない状況下で、老舗企業は大きく変革を余儀なくされた。DXを推進する事で、この難局を乗り越えようと全社を挙げて知恵を出し合った。

うまく活用できていなかった過去の展示会やセミナーで取得したリード情報を活かし、顧客との接点を統合管理する事でより良い提案を行うための基盤構築としてマーケティングオートメーション(以下MA)の導入を決定した。

DX推進の一環で始まった営業改革。商談管理(SFA)よりもMAツールの先行導入を決断。

当初はDX推進の一環で、商談管理(SFA)の導入も検討に上がったものの、先にMA導入に踏み切った背景はどこにあったのか。

「コロナ禍で展示会がなくなる事で、新しいお客様との接点が持つ事ができなかった。商談機会損失だけではなくお客様が抱えている課題感や関心を得られないことが一番辛かった。」と青草氏。

売り上げが厳しい状況になると、営業を締め付けがちではあるが同社の考えは違った。SFAを先行導入し、営業担当者の活動(商談)状況を管理しても、抜本的な改善にならないと感じたという。

「お客様の課題やニーズがつかめない中で営業活動を強化することは、営業が疲弊し非効率なだけ。何よりお客様に迷惑がかかる。それよりもMAを活用し、お客様に有益な情報を届け、潜在的な課題であるねじの重要性と、ねじの専門家としてのイケキンを理解してもらい、課題点や改善点を共有できる事が、お客様と我々にとって大事なことだ。」と青草氏は続ける。

その結果、コロナ禍でも多くの顧客の信頼を獲得し、同社への相談は止む事がない。「全てはお客様のために」を掲げる池田金属工業の言行一致の姿勢がうかがえる判断である。

慎重に検討を重ねた結果、シャノンを選択した理由とは。

MA元年である2014年から情報収集は欠かさず実施していた同社だが、慎重に検討を重ねた結果、数多あるMAツールの中から最終的にシャノンを選んだ。

「率直なところ、自社の身の丈にあったツールを選ぶという観点と、将来の拡張性の観点の2軸で考えたところ、シャノンさんしかなかった」(青草氏)

「身の丈にあう」とはどういう事なのか。

「高額なツールは、価格に見合う価値が不透明な上、サポートは有料のチケット制で総額が見えづらい。他方、安いツールの多くは、カスタマーサクセスと言いながらも導入1か月で自走を強いられる。これは自社には合わないと感じた。」(青草氏)

シャノンは関西に支援拠点があり、自社の成長に合わせた伴走提案があったという。

また、単純なMAではなく名刺管理機能も有しており、MA取り組み時の一連の流れがシャノンで完結できる点も複雑さがなく導入できる点が自社に適していた。

アフターコロナはデジタルにアナログ施策を組み合わせたハイブリッド施策を展開。

水鳥氏は「コロナ禍でしたのでリアルイベントは控えていましたが、落ち着いたらやはり対面型、実物を見ながらの講習会やセミナーは必要です。シャノンさんのセミナー管理機能を使って効率的にかつ効果的に実施したいですね。」と期待を寄せる。

SMP導入前は、Excelで作成したリストをもとにセミナー受講者の管理を行っていたという。 Excel管理だと、セミナー開催の都度、新たな受講者リストを作成しなければならず、工数がかかる。

その点、SMPのセミナー管理機能を活用すれば、顧客情報を名寄せし、リスト作成が簡易的に行える。

さらに、セミナー受講者に対するフォロー履歴も併せて一元的な管理が可能な為、今後一層の業務効率化が進みそうだ。

継続的に顧客ニーズを汲み取り、潜在課題を顕在化するためには、顧客目線に立った改善が必要。

日々の運用面についても伺った。

「お客様も気づかれていない課題や改善点に対して、いかに私たちから先回りしてご提案できるかが重要。まずはお客様の興味や関心がどう変化しているかのヒントを継続してつかみたいと考えていた。そのためにはMAツールの活用が必須だった。」と青草氏は語る。

池田金属工業が支援するお客様にとって、ねじに対する意識はまさに千差万別。 日頃のトラブルが、実はねじに起因すると気づいていない場合も多い。

お客様にねじの正しい使い方・知識を伝えるために、メルマガ配信、セミナーや動画配信、自社ブログなどで精力的に情報発信を行う。

こうした情報発信とお客様からのフィードバックが結実し、新サービスの「ねじの技術診断」の新しいサービスを12月にリリースし、好調だそうだ。

水鳥氏が中心となりメルマガ配信、WEBセミナー開催、その後のフォロー分析を行っているが、現場の反応はどうか。

SMPのメール管理画面では、メールの開封率だけでなく、記載したURLのクリック者も簡単に確認が可能。 配信するだけではなく、結果のフィードバックを詳細に得ることができるため、活動内容の改善を行うための指標としても活用ができる。

「元々は営業だったので、システムをほとんど使用したことがありませんでした。SMPは操作もわかりやすく日常業務も行いやすいです。メルマガ内に記載したURLの開封率を把握できるため、興味・関心度を把握しつつ、お客様別に反応履歴が一目でわかる。次に配信する内容をコンテンツ目線、お客様目線で考える事ができる。タグ付け等の手作業が発生するわけではなく、自動化されているので本来業務に集中できます。」と水鳥氏は話す。

これからDX推進にチャレンジする中小企業に向けて伝えたいこと。新たな挑戦と実現を行う組織作りの秘訣とは。

最後に、DX推進に悩む中小企業に向けて青草氏からアドバイスを頂いた。

「経営陣は現場に寄り添いながらも、現場主体で考えて実践していくことが肝要。弊社の場合、新社長である武井号令のもと、現場主体で多くのチャレンジを重ねている。」

では、ミドルマネジメント層はどう動くべきなのか。

既存のやり方に捉われず、若手社員が主体となり顧客のためになることを積極的に取り入れる風土にしていきたいと考える企業は多いだろう。

実現する上で重要な事は、「現場に任せるといっても、若手層に丸投げではいけない。ミドル層が培ってきた知見からヒントを出しつつ、実践は若手層に託す。最近の若手は優秀な人が多く、きっかけさえ与えれば自発的に動ける。取り組める環境を提供できるかが大事なのではないか」と青草氏は主張する。

まさに今回のMA導入は、お客様の反応をつぶさに可視化し、現場のメンバー主体で解析できることがポイントだったようだ。

経営、ミドル層、若手層がしっかり嚙み合ったゆるみない浪速の老舗企業から学ぶ事は大きい。